小規模建築物の地盤調査ではスクリューウエイト貫入(SWS)試験が広く普及している。地盤調査にはそれぞれ特徴や留意点があるが,筆者らは軟弱な造成宅地でのSWS 試験による自沈層の良否判断,地盤補強の支持層の確認,液状化の検討の 3 つの課題に焦点を当て,追加の情報を得て補完することを目的に,ハンマードリルサウンディング(HDS)試験を提案した。本試験で得られる値は標準貫入試験のN 値やSWS試験の値と良好な相関性があるとともに,自沈がほぼ無い。また,硬質な層でもSWS 試験より高い貫入力が得られるため,軟弱な層から硬質な層まで,同じインデックスで評価できる。さらに,連続した打撃により液状化層の参考となる情報も確認できる。本稿では 33 箇所の試験場での検証実験の結果を報告する。
土粒子構造を規則充填構造でモデル化し,間隙スケールの保水メカニズムに基づいて水分特性曲線(以下SWCC)を推定する理論的モデルを構築した。規則充填構造の単位構造には構造や密度が変化可能な菱面体構造を採用し,単位構造の構造を決定するパラメータに存在割合分布を仮定することで,規則充填構造を仮定した SWCC モデルに密度分布を導入した。具体的な密度分布には等球径ランダム充填における密度分布を採用し,その適用性を検討した。本モデルと従来の均一構造を仮定したモデルを比較したところ,密度分布を考慮することにより間隙への空気の通り道である throat の径の分散が大きくなり,緩やかに排水することで比水分容量が小さくなる現象を再現可能であることがわかった。throat 径の分散は粒度分布と密度分布の両者に影響されるため密度分布の影響は粒径幅が狭い供試体ほど顕著であることを明らかにした。
本研究は,自然由来の砒素溶出量基準超過土壌の浄化技術の 1 つである鉄粉浄化技術の浄化メカニズムを解明することを目的とした。鉄粉添加時の土壌スラリーの砒素溶出量は大幅に低下し土壌溶出量基準(以下,溶出量基準)を満足したが,鉄粉を除去すると砒素溶出量は再び増加し溶出量基準を超過した。実験結果と既往の知見からは,(a) 鉄粉から溶出した鉄イオンから生成された非晶質の水酸化鉄によって溶存態の砒素が吸着されること,(b) 鉄粉を除去すると鉄粉表面の水酸化鉄も除去されるため砒素溶出量が再び上昇すること,(c) 浄化土中に残存する水酸化鉄が砒素溶出量を抑制することが考えられた。従来の鉄粉浄化実験で酸を添加する理由として,(a) スラリーpH を低下させて砒素溶出量そのものを低減すること,(b) 酸添加によって鉄粉からの鉄イオンの溶出を促進させて水酸化鉄を大量に生成することの 2 点が示唆された。
土石流などの土砂移動が起源となって生じる地盤振動を捉え,早期に危険情報を発信することは,土砂災害リスクの軽減に繋がるものと考えられる。特に,人的被害が大きくなる傾向にある谷の出口や扇状地に造られた住宅地の上流部で生じる土石流,あるいは既に街中を流下している土石流に対して地盤振動を検知することにより,ハザードの状況把握や警報発信の契機として活かせるものと考えられる。そこで,本研究では,土砂流動実験による地盤振動計測を行い,土砂流動時の地盤振動の特性について検討した。分析から得られた知見に基づき,高周波パルスに着目した土砂流動の検知に関する検討を行い,その有効性を示した。更に,地盤振動の周波数特性の差異を利用して,地震波に対する誤検知の回避方法を提案し,検知手法の実用性を高めた。
電気式コーン貫入試験(CPTU)結果のみからなる,新たな粘性土の設計用非排水せん断強さ(本論文ではsu(mob)と称す)の評価手法を提案する。この手法は,CPTU から得られるコーン貫入時の過剰間隙水圧から粘性土の正規圧密状態における強度増加率を推定し,得られた値と実効コーン貫入抵抗の一次的関係から算定されるコーン係数を介して su(mob)を評価するものであり,国内外 25 地域 31 地点で得られたデータに基づいている。本手法で求めた su(mob)は,別途室内試験および原位置試験から求めた su(mob)と比較され,その信頼性と適用性を実証している。提案する手法によれば,人的誤差を伴う,ボーリング~乱れの少ない試料採取~室内せん断試験という過程なしに,当地の粘性土の su(mob)を評価できる。
東京国際空港 D 滑走路新設事業における東京湾海底の粘土地盤の地盤調査データを用いて,定体積一面せん断試験で求められる強度の設計への適用性を検討した。不攪乱試料を原位置の有効土被り圧で圧密後0.25mm/min でせん断した強度 su(DST0)に補正係数 0.85 を乗じた値が設計せん断強度として妥当であることを確認した。正規圧密まで圧密したときのせん断強度について,定体積一面せん断試験と圧密非排水(CU)三軸圧縮試験による強度の比較を行った。その結果,圧密後の強度増加の推定には圧密非排水三軸圧縮試験による強度の 70%を用いるのが妥当であることがわかった。
草本植生を用いた播種工の管理において定量的な指標となる植被率は,目視により計測されることが一般的であるため,主観的で曖昧な評価にとどまっている。そこで筆者らは,可視光画像解析技術を援用した植被率の計測手法に着目した。本研究では,植被率の計測結果のばらつきを抑えるための機器設定と,自然光源の変化が計測結果に与える影響について検討した。プログラムAEが採用されている機器の場合,ホワイトバランスをプリセットモードに固定し,ISO感度を最小にする設定が最適であるという結果が得られた。また,本研究における撮影条件下では,自然光源の変化によって植被率の計測結果は,撮影時刻や天気の違いにより±2.5~7.3%程度(95%予測区間)の影響を受けること,天気が変わらない同日中の撮影では標準偏差±1.8%程度で植被率の計測が可能であることを明らかにした。
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