地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
ISSN-L : 1880-6341
16 巻, 3 号
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論文
  • 土田 孝
    2021 年 16 巻 3 号 p. 159-178
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    港湾事業のために一軸圧縮強度と三軸試験による簡易 CU 強度を併用して海底地盤の強度評価を行った7 港 11 か所の地盤調査結果を収集した。サンプラーごとに 3 供試体の qu/2 の平均値と簡易 CU 試験によるせん断強度を比較し,乱れの少ない試料の品質評価を行う併用法を適用した。283 試料の評価結果を分類すると,領域Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳがそれぞれ 49.5%,25.1%,9.5%,15.9%であり,品質が「良好または非常に良好」と「適度」を合わせると 74.6%であった。 qu/2 の平均 Su(UCS)と簡易 CU 強度 Su(SCU)の比の平均は 0.773 であり,適度とされる 0.75 を少し上回った。多くの試料(50~80%)が領域Ⅰ,Ⅱと判定され一部(25%以下)が領域Ⅳと判定されるケースにおける,実用的な設計せん断強度評価方法を提案した。

  • 赤司 有三, 山越 陽介, 小門 武, 戸田 賀奈子, 勝見 武
    2021 年 16 巻 3 号 p. 179-190
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    港湾工事で発生する浚渫土砂の有効利用技術であるカルシア改質土について,固化成分である浚渫土砂から溶出するシリカ成分とカルシア改質材から溶出するカルシウム成分が強度発現に与える相互影響を考察した。溶出するシリカ成分が大きい浚渫土砂の方が強度発現は大きく,供給するカルシア改質材からのカルシウム溶出量が大きい方が強度発現は大きいことを示した。また,その相互影響には,固化反応に必要な溶出量のバランスが存在し,目標強度に応じた必要溶出量の過不足を評価する方法として,シリカ溶出量とカルシウム溶出量を軸とした 4 領域の整理で実施できることを提案した。この整理の結果,現場強度 100 kN/m2を確保するためには,カルシウム溶出量×(改質材量/含水量)= 5.0 mg/g,シリカ溶出量×(土分乾燥重量/含水量)= 60 mg/g が必要であることを示した。

  • 山田 孝弘, 佐名川 太亮, 中島 卓哉, 笠原 康平, 西岡 英俊
    2021 年 16 巻 3 号 p. 191-208
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    橋台と背面盛土の境界面では,地震時に段差を生じた被害が数多く報告されている。橋台と背面盛土の境界面での段差は,列車走行時に脱線につながるおそれがあるため,東海道新幹線の開業以来,既設の鉄道橋台に対する地震対策が喫緊の課題となり,各種の対策工が進められてきた。既往の耐震工法は,必ずしも現行の設計基準が規定するレベル 2 地震動までは想定していない。また,主たる工事が線路上からの夜間に限定されることが多いことや,橋台前面道路の通行規制が必要になるなど,施工環境および施工効率の両面で制約が大きい。そこで,筆者らは,レベル 2 地震動に対して,既設の鉄道橋台の耐震性能を底上げでき,かつ主たる工事が橋台の側面から昼間に施工できる耐震工法の開発・実用化を目指している。本研究では,地山補強材を用いた側壁との一体化による鉄道橋台の耐震工法を提案し,その抵抗メカニズムと耐震効果の検証を目標とした傾斜実験および模型振動実験を行った。その結果,側壁接合の補強橋台は,滑動モードが支配的となり,橋台の最大抵抗力の向上,橋台の残留水平変位および橋台近傍の背面盛土の沈下を抑制できることが確認できた。

  • 加藤 智大, 井本 由香利, 保高 徹生, 勝見 武
    2021 年 16 巻 3 号 p. 209-220
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    カラム試験の解釈と適用に関する知見が限られていることを踏まえ,海成堆積物を対象とした上向流カラム試験を実施し,濃度破過曲線を通水量/間隙体積比(Pore volumes of flow, PVF)で整理して溶出特性の評価を試みた。破過曲線が単調減少で PVF≒0 のとき最大濃度を示し,PVF≦1 で濃度が最大濃度の半分になる物質を,溶出が速やかに完了する「易溶性物質」と定義した。As や F の溶出濃度は一旦増加した後に減少したことから易溶性物質には分類されなかった。一方で Se は,SO4のような移行性の高い物質と同様に易溶性物質と判定された。易溶性物質は通水初期に最大濃度を示すため,カラム試験から最大濃度を取得して流入濃度条件を設定することで,より実際に近いリスク評価を行いうることが示唆された。そのため少なくとも 2 PVF まではカラム試験を実施し,易溶性物質を判別することが重要である。

  • 北岡 貴文, 増田 千胤, 長谷川 信介, ピパットポンサー・ティラポン , 大津 宏康
    2021 年 16 巻 3 号 p. 221-234
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    山岳トンネルの建設プロジェクトでは事前調査における地山評価と実際の地山の状態の乖離により,施工時に建設コストが大幅に増加する事態が生じている。このため,事前調査における地山評価の精度向上が求められている。筆者らは,地山評価の予測精度の向上を目的にニューラルネットワークを用いた地山評価に関する研究を行っている。本研究では,まずニューラルネットワークの解析モデルの最適化を行った。次に,ニューラルネットワークの有意性を検証する目的で,物理的特性に着目し,他の機械学習手法による地山評価と比較した。最後に,ニューラルネットワークに岩種情報を入力することにより,地山評価に与える影響について検討した。その結果,ニューラルネットワークは他のアルゴリズムよりも有用性があること,さらに,岩種を考慮する必要性を示した。

  • 榎本 忠夫, 久保 和幸
    2021 年 16 巻 3 号 p. 235-245
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    2007 年能登半島地震,2011 年東北地方太平洋沖地震による道路盛土の被害・無被害事例を対象に,原位置試験,室内土質試験,数値解析を実施し,①安全率と実被災程度の関係性等に基づく被災実態の調査,② 近年の地震被害を考慮した設計水平震度 kh の評価を行った.実事例数の不足を補うため,著者らによる遠心模型実験結果も対象に同様な数値解析を行った.その結果,①レベル 2 地震動に対する安全率が低下すると地震による天端の沈下量が大きくなる傾向にあり,震度法による安全率によって道路盛土の被災程度をある程度説明でき得る可能性があること,②I 種地盤においては,kh = 0.2・Amax / 620(Amax:最大地震加速度,単位:gal)にて評価した設計水平震度を考慮した安全率が 1.0 以上であれば,道路盛土の地震時被害は限定的(天端の沈下量が 40 cm 程度以下)になり得る可能性があることを明らかにした.

ノート
  • 稲積 真哉, 本谷 洋二, 関 昌則, 橋本 亮, 相澤 英輔, 水田 智幸, 吉本 敦哉
    2021 年 16 巻 3 号 p. 247-255
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    無機系廃棄物を原料とした地盤改良用固化材として,鉄鋼製造における副産物である高炉スラグ微粉末に対し,ガラスカレット製造時に発生する廃ガラス微粉末,またはフライアッシュ等のシリカを多量に含む無機系廃棄物とアルカリ助剤を混合した添加材(熱処理型ES 添加材)を加えることで,硬化が発現する固化材を開発している。本研究では,当固化材,特に熱処理型ES 添加材の製造過程において廃ガラス微粉末またはフライアッシュとアルカリ助剤の熱処理を加えた混合工程を見直し,熱処理の工程を省いて混合のみにすることで製造の簡便化を図った混合型 ES 添加材を製造し,添加材製造における熱処理工程の有無による固化材の性能の違いを硬化作用への影響面で検証を行った。具体的には,熱処理型ES 添加材および混合型 ES 添加材を加えた固化材を地盤改良工法の一つである高圧噴射撹拌工法へ適用することを想定し,時間経過による固化材の粘性や,普通ポルトランドセメントを別途添加することでの硬化速度の促進等を種々の試験によって明らかにしている。

報告
  • 春日井 麻里, 大島 昭彦
    2021 年 16 巻 3 号 p. 257-273
    発行日: 2021/09/01
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    都市域では,過去に地下水の過剰揚水により深刻な地盤沈下の被害が発生した。これにより現在は地下水の汲み上げ規制が行われ地下水位が高位化し,地震発生時の液状化被害の危険性が高まる等,様々な問題が生じている。広域的な地震動予測や液状化予測などをする際,地盤モデルがよく用いられている。これまでにも全国で浅層の地盤モデルが様々な手法で構築されている。本研究では,大阪・神戸地域におけるボーリングデータを用い,表層から工学的基盤面までの浅層地盤モデルを 250m メッシュ毎に作成した。また,砂層の粒度特性および粘土層の土質特性についてもモデル化を行った。これらの結果は地盤工学的課題の解決のための基礎データとなる。

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