建設汚泥の凝集沈殿工程において使用されている高分子凝集剤は,毒性を持つ未反応モノマーを含有することが懸念されるため,要求される凝集能を維持しつつ,高分子凝集剤の添加量を低減する新たな中間処理工程が必要とされている。一方で,再生紙を製造する際に発生するペーパースラッジ灰(PS 灰)は,セメントの需要の減少や最終処分場の不足の懸念があるため,新たな分野での利用が求められている。そこで,高分子凝集剤添加量を低減する事を目的に,凝集沈殿工程において高分子凝集剤と無機凝集剤を併用し凝集補助材として PS 灰を使用した。その結果,PS 灰の添加により凝集能の向上と沈殿物由来のフッ素の溶出抑制が確認された。
筆者らの研究グループは,建設現場で発生する汚泥や浚渫土砂を対象として,古紙を原料とする微細粉体 (以下,古紙微細粉体,Fine Shredded Paper : FSP) による新しい処理方法を提案している。これまで FSP を添加することで高含水泥土の強度が増加し,運搬性が向上することが明らかになっている。しかし,対象泥土の含水比が著しく高い場合には,FSP による処理だけでは地盤材料として再利用することが難しい。そこで,本研究では,FSP とセメントを併用した処理泥土の地盤材料としての適用可能性を検討することを目的に一軸圧縮試験により力学特性を調べた。結果,両者を併用することで,セメント安定処理において懸念されている地盤との剛性差を抑え,周辺地盤となじみやすい処理土に改良できる可能性が示された。これは,FSP 繊維による吸水効果と補強効果が発揮されたためであると考えられる。
関東ローム処理土に関して,流動性と強度の両条件を満たす配合を検討した。固化材は 3 種類を用い,実験は最初に,水固化材比を一定とした条件において処理土の含水比とフロー値の関係を求め,次に水固化材比が 4 条件と含水比が 4 条件(フロー値が 4 条件)において一軸圧縮試験を実施した。処理土の配合検討においては,3 種類のセメント毎に,現場強度が 500 kN/m2 と 3000 kN/m2 の 2 条件とフロー値が 4 条件を満たす配合を検討し,処理土内の土粒子質量やセメント質量の比較から配合の特徴を考察した。
砂質土に対する SCP 改良地盤は,締固めによる密度増加以外にも複合的な特性が関与することで,改良地盤全体の液状化抵抗が杭間 N 値から求めた液状化抵抗以上の強度を有している可能性がある。著者らは SCP 改良地盤特有の効果のうち,繰返しせん断履歴による微視構造の変化に着目した改良地盤評価の定量化を目的とした研究を行っている。ここでは,SCP 工法による砂杭造成を模擬した X 線 CT 専用の模型実験装置を開発し,CT 撮影と画像解析により砂杭周辺地盤挙動についての検討を行った。この検討結果より,SCP 改良地盤の微視構造が土粒子同士の接触点数で評価できること,また貫入と造成過程で数多くの繰返しせん断履歴を受ける SCP 改良地盤が,中実杭を貫入のみで地中に残置させる施工方法より接触点数が多く,つまりはより有効な締固め改良効果が得られることがわかった。
近年,液状化対策として地下水位低下工法の採用事例が増えてきている。大阪・神戸地域は,表層より沖積砂層が緩く堆積し,地下水位も高いため地震時には液状化による被害が予想される。ただし,沖積砂層の下部には過去の地下水汲み上げによって大きな沈下が生じた沖積粘土層が厚く堆積している。関西圏地盤情報データベースおよび独自に実施した地盤調査結果を用いて構築した浅層地盤モデルを用いて,地下水位を低下させた場合の地盤沈下量を予測した。また,現況地下水位および許容沈下量内で地下水位を低下させた場合の液状化予測を行った。その結果,大阪・神戸地域においては地下水位を低下させることにより,液状化対策効果が得られることがわかった。
地盤凍結工法は,トンネル工事等における掘削防護のための地盤改良工法のひとつである。粘性土層では土留壁として必要な凍土厚みの造成が完了した後の余剰な凍土により凍結膨張が構造物へ与える影響が大きくなり,この影響を最小限にとどめることは凍結工法の重要な課題である。従来から凍上対策の一つにヒートフェンスで凍土面位置を熱制御する方法があり,経験的に凍上量抑制が行われている。本研究では,凍土厚制御のための,設計・施工管理で用いる凍結熱解析手法の適用方法を提案するとともに,その適用性を凍結工事の施工事例を用いて検証した。その結果,本提案手法が実用上有効であることが明らかになった上,本手法を用いることでヒートフェンス方式による凍土厚増加制御により凍上が抑制されていることを定量的に実証できた。
本研究では,不攪乱粘性土ならびに再構成粘土を対象として,三軸圧縮・伸張試験,中空ねじりせん断試験および単純せん断試験を実施することにより,載荷方向,載荷モード,載荷速度ならびに圧密応力履歴が粘性土の静的な力学特性に及ぼす影響について検討を行った。骨格構造が卓越した不攪乱粘土の代表的な力学挙動として挙げられる脆性的なひずみ軟化は,三軸圧縮試験によって,載荷速度に依存して観察されるものであり,小さな載荷速度や単純せん断モードでは軟化の程度が小さくなったり,観察できなくなったりするなど,その粘土が有する絶対的な力学特性ではないことが示された。
チェーンを補強材として用いた補強土壁工法として,鋼管を主体とした壁面及び円筒型金網の壁面の 2 種類の補強土壁を開発し,様々な現場で施工を行ってきた。風力発電現場に設置された補強土壁は,仮設の運搬道路においてブレードやタワーなどの重量物を運搬するために重車両が頻繁に往復すること,風車ヤードおいて大型クレーンで風車を組み立てることから,仮設ではあるが重要な位置付けの構造物である。 その施工時の大きな荷重により,補強土壁の変形が懸念されたため,運搬道路と風車ヤードに施工されたチェーン補強土壁を対象に動態観測を 9 ヵ月にわたり実施した。計測の結果,いずれのチェーン補強土壁も出来形管理基準の規格値を満たして施工されており,最大変位量は風車ヤードで最大 24 mm,運搬道路で最大 6 mm と微小と言える値で,顕著な変形は生じていなかった。
都市部で頻発している道路陥没の芽となる路面下空洞は,下水管の破損部等から土砂が流出することを主な要因とし,その生成・成長過程について知見が蓄積されている。一方,近年実施された路面下空洞現場の開削調査の結果,空洞下方にある下水管の接合部において破損とは言い難い軽微な隙間のみが存在する事例が確認されている。一般に,下水管内カメラにより漏水箇所は確認できるが,漏水による吸出しに伴う管背後の空洞生成の可能性については未だ整理されていない。本研究では,これまで路面下空洞の素因として位置付けられてこなかった下水管接合部の止水不良箇所に起因する空洞の生成・成長過程について,模型実験によりそのメカニズムと影響因子を検討し,止水不良箇所においても路面下空洞の生成・成長が生じること,そして比較的小さな止水不良箇所でもむしろ顕著な土砂流出が生じ得ることを確認した。
平成 30 年 7 月豪雨により,高知県長岡郡大豊町の立川川流域では,高知自動車道の立川橋を破壊した崩壊も含め,20 箇所以上で大規模崩壊が発生した。本報では,この地域の大規模崩壊発生斜面の地形的な特徴を,LiDAR による地形表現図と,現地踏査により検討した。すると大規模崩壊の発生部位の上部には地すべり地形が存在し,その辺縁部の遷急線から崩壊するものがほとんどであった。また崩壊部も,別の地すべり地形内に存在する場合が多かった。また現地踏査で確認した範囲では,今回の崩壊範囲の上部で比較的新しい亀裂や地盤の変動が見られた。これらの事実は,斜面上部に位置する地すべり地形の再滑動が発生し,その末端が崩壊したことを示唆する。
地下インフラの老朽化や自然災害の激甚化は,地中空洞を増やし,道路陥没リスクを高める。陥没予防策である空洞調査に加え,調査段階での陥没時期の予測が対策効果を高めるものであるが,これまで補修が前提であった空洞の記録は調査時点のものが主であり,検討に必要な空洞の拡大過程の実態記録は少ない。このため路面下に55の空洞がある現道10路線で2年間モニタリング調査を実施し,7空洞の拡大と28空洞の新たな発生の挙動実態が把握された。並行して行われた空洞補修のうち,砂質土内の12空洞で詳細に発生原因と空洞周辺地盤を調査し,埋設管に生じたわずかな隙間からの土砂流出で形成された空洞の実態が複数把握された。
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