地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
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10 巻, 4 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
論文
  • 鈴木 康嗣, 安達 直人
    2015 年 10 巻 4 号 p. 427-444
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    最近の大地震では,大きな地表加速度が得られているにも関わらず周辺構造物の被害は軽微で,構造物への入力動が小さいという指摘がある。そこで,埋込みが有る構造物の底面滑りに与える地下水の影響を把握するため,飽和砂地盤に埋込まれた直接基礎構造物の遠心振動台実験を行い,以下の知見を得た。1)地下水位が構造物底面位置より深い場合,構造物底面で摩擦係数に応じた滑りが生じ,構造物への最大入力動は埋込み(根入れ)地盤による抵抗が加わり底面摩擦滑りよりやや大きくなる。2)地下水位が構造物底面位置より浅い場合,構造物直下地盤の過剰間隙水圧の増減に起因して見かけの摩擦係数が増減する。3)支持地盤の過剰間隙水圧が負圧になると,構造物が支持地盤に引き付けられて構造物への入力動が大きくなる場合があり,最大入力動は鉛直加速度変動を考慮すると底面摩擦係数で滑る場合の4倍にも達した。4)地下水位深さにより構造物への地震時入力動が大きく変動することから,構造物の地震時被害に地下水位深さが大きな影響を与える可能性が示唆される。
  • 新城 俊也
    2015 年 10 巻 4 号 p. 445-459
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    さんご礁堆積物にはさんご砂礫に加えて石灰質生物を起源とする細粒分が含まれている。この研究ではさんご礁堆積物の力学特性に及ぼす非塑性の細粒分の影響を調べるために,細粒分含有率の異なるさんご礁堆積物について,一次元圧密試験および三軸圧縮試験を実施した。圧密試験によると,圧縮指数Ccは0.07~0.13の範囲にあり,また圧密係数cvは,一次圧密が現れる細粒分含有率60%以上のさんご礁堆積物に対して103cm2/dのオーダーの値を示した。細粒分は石灰質のシルト径や粘土径の粒子で構成されているため,細粒分のせん断挙動は砂礫と同様のダイレイタンシー特性を示した。非排水せん断試験によるせん断抵抗角φ´は排水せん断試験によるせん断抵抗角φdに類似し,いずれのせん断抵抗角も細粒分含有率の増加に伴って減少した。非排水せん断強度cuは有効応力比(q/p´)が最大値に達した時点のせん断応力として求めた。それによる非排水強度増加率は細粒分のみの場合に対しcu/p=0.32の関係にある。
  • 秦 二朗, 佐々木 薫, 諸泉 利嗣
    2015 年 10 巻 4 号 p. 461-471
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    供用後30年以上経過した高速道路沿線の中山間地域において,雪氷対策に用いる凍結防止剤の散布が地下水の塩水化に及ぼす影響を明らかにするために,凍結防止剤の地下浸透・河川流出,路外飛散状況の定量的把握及び河川の経時的な水質変化を観測し,浸透流出経路と収支について検討した。その結果,路面に散布された凍結防止剤のうち65%が流末水路に流出,25%が路面のクラック等から地下に浸透,残り10%は路外等へ飛散していることがわかった。つぎに,雪氷期の河川への凍結防止剤流出量の割合は,散布量の39%が地表水に混じって流出し,17%が地下水に混じって流出していることを推計した。また,散布量と流出量の収支関係より44%が地下に貯留していることを明らかにした。
  • 堀越 一輝, 高橋 章浩
    2015 年 10 巻 4 号 p. 473-488
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    本論文では,盛土内の細粒土の移動現象の進展を把握するため,最初に,均質盛土を対象に実施された小型模型実験を簡単な内部侵食モデルによってシミュレートした。この模型実験と解析の結果を比較し,浸透力のみでは説明できない細粒土の鉛直方向の動きが再堆積を引き起こすことを指摘した。続いて,この細粒土の再堆積の要因を明らかにするため,盛土をいくつかの領域に分け,各領域で色の異なる細粒土を混合した土を配置した,基盤底部の細粒分含有率の異なる小型盛土を作製し,模型浸透実験を実施した。この実験後,盛土内の分割要素に残留した試料の粒度試験と,細粒土の色を分析することによって,盛土内の細粒土の移動傾向を推定した。この結果,底部に間隙が大きい層が存在する場合と,浸透力が比較的弱い上流側で,細粒土の下向きの動きが増長されることが観察された。その主因は重力の影響と推定した。
  • 高畑 修, 熊田 正次郎, 安藤 淳也, 宮口 新治, 石山 宏二, 保高 徹生, 小峯 秀雄
    2015 年 10 巻 4 号 p. 489-502
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所事故により福島県内では,路面清掃等の道路維持管理において発生する土砂に放射性物質が含有されており,放射性物質汚染対処特別措置法上での取扱いの問題も含めた処理に係る課題から2014年11月現在も,福島県内の一部地域で路面清掃作業が停滞している状況にある。そこで,本研究では,放射能汚染原因物質の主要核種である放射性セシウムが粘土分に多く含有される傾向にあることに着目し,道路維持管理で発生する放射性物質含有土を濃度の高低により資材と廃棄物に分離することを目的に,室内湿式分級試験および小規模プラントを用いた実証試験によって,粒度特性と放射性セシウム濃度の関係等から砂質土系の放射性物質含有土への土壌洗浄工法の適用性を確認した。
  • 森口 周二, 大竹 雄, 高瀬 慎介, 寺田 賢二郎, 小坂 祐司, 堀内  克, 沢田 和秀, 八嶋 厚
    2015 年 10 巻 4 号 p. 503-515
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    土木構造物の信頼性設計の中で数値解析を効率的に活用するための手法が提案されている。本論文では,個別要素法(DEM)による落石危険度評価にこの手法を応用することにより,落石の確率論的危険度評価を可能とする枠組みを提案する。この枠組みでは,各種不確実性を定量化するとともに,DEMによるシミュレーション結果から応答曲面を作成する。また,これらの情報に基づいてモンテカルロシミュレーションを実施することにより,対象事象の確率密度分布が得られる。実斜面への適用の結果,落石危険度を確率論的に評価できるだけでなく,DEMの実務利用上の問題点を解消する,また,対象事象に対する評価者の物理的・工学的理解を促進させるなどの付加的な効果があることが確認された。
  • 宮﨑 祐輔, 澤村 康生, 岸田 潔, 木村 亮
    2015 年 10 巻 4 号 p. 517-529
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    2ヒンジプレキャストアーチカルバートは,縦断方向に奥行1 ~ 2 m程度の部材を連続して設置する構造である。このため,縦断方向の部材の連結様式により,その挙動が大きく変化することが予想される。そこで本研究では,2ヒンジプレキャストアーチカルバートを対象に,カルバート間の連結様式に着目した遠心模型実験を実施した。その結果,カルバート間を連結した場合には,盛土の変形を軽減し,目地の開きを抑制することを確認した。一方,カルバート同士を分離した場合には,個々のカルバートが前傾・後傾を繰り返し,カルバート底版に大きな曲げが発生する可能性があることが確認された。
  • 米山 一幸, 杉山 博一, 奥野 哲夫, 登坂 博行
    2015 年 10 巻 4 号 p. 531-543
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    低透水性の地盤・岩盤を対象にした溶液型グラウト材料であるコロイダルシリカグラウト材について,模擬地盤を用いた浸透実験と数値解析により浸透挙動の評価を行った。小型試験体を用いた浸透実験よりグラウト材の粘度上昇では説明できない流量低下が生じることがわかり,グラウト材の流動特性の変化が影響していることが推測された。グラウト材のレオロジーの測定結果から,ゲル化の進行にともない非ニュートン流体的な挙動を示すことがわかり,これを擬塑性流体およびビンガム流体としてモデル化した浸透流解析手法を提案した。模擬地盤を用いた浸透実験の再現解析より,グラウト材を擬塑性流体としてモデル化すると解析結果が測定値と比較的良好に一致し,グラウト材の非ニュートン流体挙動が浸透挙動に影響していることが示された。
  • 米山 一幸, 登坂 博行, 奥野 哲夫, 西 琢郎
    2015 年 10 巻 4 号 p. 545-557
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    セメントグラウトによる岩盤亀裂の止水メカニズムについて,セメント粒子の目詰まりによる流路の閉塞効果に着目して,平板スリットを用いた室内グラウト注入試験と数値解析を実施した。注入試験結果に基づき,セメント粒子目詰まりによる透水性低下について深層ろ過理論と同様の定式化によりモデル化し,これを組み込んだ浸透流解析プログラムにより実験結果を再現できることを示した。また,統計的手法に基づき開口幅分布を設定した仮想岩盤亀裂モデルを作成して提案モデルによるケーススタディを実施し,実施工における注入データからグラウト浸透範囲の不均質性を評価しうることを示した。
  • 正垣 孝晴, 中川原 雄太, 藤井 幸泰
    2015 年 10 巻 4 号 p. 559-567
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    幕末から明治初頭に海外から導入された技術を用いて建造された構造物を対象に,構造物の変形を基礎構造との関係から検討するため,富岡製糸場の西置繭所の柱の傾斜,基礎や床の不陸(沈下)を測定した。建物北側の領域では,柱の傾斜も床の沈下も大きい.これは粘性土の圧密沈下に起因していると考えられる。一周230 mの西置繭所の礎石間の標高(E)の差は,最大で43mmであった。南壁と北壁に設置された礎石は東西方向に12.5 m離れているが,その間の4つの礎石のEの差は南側で最大12 mm,北側で同17 mmであった。礎石下の簡単な基礎形式で,143年の歳月をほぼそのままの形状で建物が維持されていることが明らかになった.これは明治初頭の地盤工学技術の水準の高さを示していると解釈される。
  • 松尾 勉, 森 邦夫, 平岡 伸隆, 孫 夢霞, 深川 良一
    2015 年 10 巻 4 号 p. 569-582
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    近年,激化が懸念される集中豪雨や直下型地震等厳しい自然環境条件の下で,トンネル坑口部についても長期的な安定を見据えた維持管理対策が求められている。本研究では,坑口部等の小土被りトンネルでの切羽崩壊現象について,SPH (Smoothed Particle Hydrodynamics)法解析の適用性を確認することを目的として,アルミ棒積層体を用いた室内模型実験を行い,SPH法によりその再現を試みた。実験では土被り比の違いによる崩壊形状やすべり線形状を確認した。つぎに,SPH法を用いて解析を行い,崩壊およびすべり線形状,ならびに崩壊中の挙動を比較した。その結果,解析と実験との間に良好な整合性が得られることを確認した。さらに,SPH法と有限差分法解析とを比較し,後者でも安定的な解が得られるような地盤条件において,応力やひずみ分布は両者で概ね一致することを確認するとともに,SPH法がひずみ集中領域に沿って分離型の変位分布を示すなど,崩壊挙動の特性をよりよく表現できることを確認した。
  • 古市 秀雄, 原 忠, 谷 美宏, 西 剛整, 乙志 和孝, 戸田 和秀
    2015 年 10 巻 4 号 p. 583-594
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    2011年の東北地方太平洋沖地震以降,発生確率の高い南海トラフ地震等の巨大地震への備えとして各種土木構造物の防災・減災技術に関する研究開発が進められている。海岸保全施設には強い揺れと津波の複合災害に対応可能な構造安定性が求められており,既設施設の補強を迅速に行うためには,限られた予算の範囲内で迅速に施工できる合理的な対策工法を確立する必要がある。著者らは,堤防補強の一手法である二重鋼矢板構造に着目し,数値解析から耐震・耐津波性能を検証した。一連の研究結果から,液状化により地盤中の過剰間隙水圧が残存する条件下での越流津波作用時の構造挙動を分析し,地震と津波が連続的に作用する場合に対する対策工としての有効性を示した。また,二重鋼矢板構造による堤防補強法の構造安定性を照査する項目を整理し,発災直後から復旧に至る過程での堤防天端の活用法の具体策を提示した。
ノート
  • 藤井 幸泰, 正垣 孝晴, 宮川 真国, 渡邉 邦夫
    2015 年 10 巻 4 号 p. 595-602
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    旧横須賀製鉄所の第1号ドライドックは,開渠後140余年を経過している。土丹層と呼ばれる更新世の泥岩で構成された白仙山を掘削して建設され,石材に安山岩を利用しているこの構造物は関東大震災にも耐えてきた。現在も使用されているドックであるが,一部の石材表面は風化によって侵食されている。石造文化財としての記録を目的とし,デジタル写真測量を用いたドック全域の記録活動を実施した。また同じく写真測量を侵食の進んでいる石材表面にも適用し,侵食量の測定を試みた。従来の侵食量測定は,野外において物差し等を用いて測定するのが一般である。写真測量等の三次元測定を実施することにより,物差しでは測定できない侵食量,すなわち体積も測定が可能である。侵食量の異なる石材表面を比較することにより,風化による石材表面の侵食過程を明らかにすることが出来た。
  • 佐野 博昭, 山田 幹雄, 小竹 望, 稲積 真哉, 桑嶋 啓治
    2015 年 10 巻 4 号 p. 603-610
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    本研究では,廃石膏ボード由来再生二水石膏,半水石膏,無水石膏の添加・混合にともなう含水比の低減効果を定量的に評価するために,石灰安定処理に関する既存の知見を基にして石膏安定処理土の含水比推定式を提案した。得られた結果より,石膏の形態変化を考慮に入れた石膏安定処理土の「真の含水比」推定式と含水比試験を行った場合の石膏安定処理土の「見掛けの含水比」推定式とは異なることが明らかとなった。また,得られた推定式を基にして計算を行ったところ,石膏安定処理土において「見掛けの含水比」は「真の含水比」よりも大きく,これより,「土の含水比試験方法(JIS A 1203: 2009)」を行うことによって石膏安定処理土の含水比低減効果を過小評価している可能性が高いことが明らかとなった。
  • 森尾 敏, 加登 文学, 藤井 照久
    2015 年 10 巻 4 号 p. 611-621
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    断層の解説にモールの応力円を併記したテキストは幾つかあるが,破壊規準とモールの応力円の極を用いて断層の種類と方向,及び,ずれの方向を分かりやすく解説したものはみられない.この理由は,モールの応力円を使うにあたり,せん断応力の符号(ずれの方向)を定義していないためである.本ノートでは,地震学・地質学で定義された断層の種類(横ずれ断層,正断層,逆断層)をモールの応力円と破壊規準,及び,応力円の極を用いて幾何学的に分かりやすく解説する.また,地震動の震源モデルとされるダブルカップル・震源モデルにおける放射特性(ラディエイションパターン)をモールの応力円を用いて説明し,代表的な平面及び断面において,P波のみ,S波のみ,あるいはP波とS波が共存する方向を幾何学的に分かりやすく解説した.
  • 岩田 直樹, 中井 真司, 片山 弘憲, 柳崎 剛, 笹原 克夫
    2015 年 10 巻 4 号 p. 623-634
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    広島市周辺では,平成26年8月に台風12,11号や8月20日の豪雨等により,気象庁の観測所で8月の総雨量としては観測史上4番目に多い降雨を観測した。筆者らは,広島県廿日市市の自然斜面で降雨量,土壌水分吸引水頭,体積含水率,地下水位,斜面内のせん断変形および側方流を観測しているが,本報告では,平成26年8月の降雨条件下で得られた観測結果を報告するとともに,降雨強度や土壌水分状態の違いによる降雨浸透や斜面変形の比較を行った。この結果,降雨に伴う体積含水率の増加量は,降雨前の土壌が乾燥状態のほうが大きく,側方流量も体積含水率の増加量が大きい乾燥状態のほうが多いことが分かった。また,せん断変形も,土壌水分吸引水頭や体積含水率の変化が大きく変化する際に生じ,降雨前に土壌が乾燥状態である場合のほうが湿潤状態に比べて大きくなる。ただし,小規模降雨によるせん断変形は,降雨終了後の乾燥過程で戻る挙動を示すことも分かった。
  • 龍原 毅, 直原 俊介, 巽 隆有, 五十嵐 敏文
    2015 年 10 巻 4 号 p. 635-640
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/12/31
    ジャーナル フリー
    近年,掘削ずりに含まれる自然由来の重金属等に対する対策として,吸着層工法の適用事例が増えている。当該工法は,周辺環境へのリスクの程度に応じた合理的な設計が可能な工法である。吸着層は,現地の地形条件等によって斜面に沿って敷設したり,2層に分けて敷設することができる。本研究では,カラム試験で吸着層の配置をかえた実験を行い,吸着性能をもっとも効果的に発揮するための配置について検討した。その結果,施工性も考慮したうえで,盛土の最下面に配置することがもっとも効果的であることが明らかになった。
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