地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
ISSN-L : 1880-6341
5 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
論文
  • 島津 多賀夫, 東田 淳, 西田 博文, 吉村 洋, 中村 臨
    2010 年 5 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    これまで挙動が不明なため, 現行設計基準の適用性も確認できていなかった斜掘り溝型方式で設置される埋設管の土圧と変形挙動を, 1/30縮小模型を用いた遠心模型実験で観測し, 実験条件として変化させた管剛性, 溝壁勾配, 土被り高, 地盤条件, 溝幅, 溝壁の粗度の影響水準を精度良く定量化した。そして, この設置方式を対象とする現行設計基準と実験結果を比べ, 現行設計基準が規定する設計土圧の分布形と大きさが, 輪荷重の載荷前, 載荷時とも, 測定土圧とは全く異なるため, 現行設計基準が大半のケースで管に生じる曲げモーメントとたわみ量を実験結果よりも過大に予測し, この傾向は管の埋設土被り高の増大につれて著しく強まることを確かめた。以上から, これまで斜掘り溝型方式で設置された埋設管で問題事例が少なかった理由を明確化し, 実態を反映していない現行設計基準に代わる設計法構築の必要性を確認した。
  • 乙志 和孝, 加藤 智雄, 原 隆史, 八嶋 厚, 大竹 雄
    2010 年 5 巻 1 号 p. 19-33
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    水路構造物は,都市部および隣接地域へ生活・工業用水を供給する重要なライフライン施設であり,耐震対策が急務であるが,延長が長く全線に渡り液状化を防止する対策を講じることは極めて不経済で非現実的である。そのため,水路構造物の要求性能を満足する範囲内で損傷を許容する合理的な対策が望まれる。著者らは,水路構造物の合理的対策として排水機能付き鋼矢板の適用性を検討した。本論では,フルーム開水路を対象に,排水機能付き鋼矢板の対策効果を検証するため重力場における振動台模型実験を行い,浮き上がりや沈下,傾斜等,構造物の変形が大幅に抑制されることが確認できたので報告する。
  • 亀井 健史, 小川 靖弘, 志比 利秀
    2010 年 5 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    著者らは半水石膏を添加したセメント安定処理土の一軸圧縮強さが半水石膏添加率と密接な関係にあることをすでに明らかにし,その原因として石膏添加に伴うエトリンガイトの生成量の増加を指摘している。しかしながら、エトリンガイト生成の化学反応式によれば,既往の配合ではAl2O3の欠如が明らかとなった。そこで本研究では,上記配合例におけるAl2O3の不足を補うため,新たにリサイクル材料でかつAl2O3が比較的豊富な石炭灰の混入を試みた。その結果,石炭灰を混入した場合には,半水石膏添加率の増加に伴って強度変形特性がさらに改善されることが明らかとなった。また,走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて供試体内部の観察を行い,半水石膏および石炭灰の添加率の増加に伴ってエトリンガイトの構造が発達していく過程を視覚的な観点から明らかにしている。以上のことから,半水石膏添加率と石炭灰添加率の増加に伴うこのような内部構造の変化がセメント安定処理土の強度に大きく関与していることを再確認した。
  • 河井 正, 石丸 真, 野田 利弘, 浅岡 顕
    2010 年 5 巻 1 号 p. 45-59
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    2007年新潟県中越沖地震の際,東京電力柏崎刈羽原子力発電所では,底面が岩着された原子炉建屋近傍で局所的に大きな埋戻し土の沈下が生じたことが報告されている。本研究では,剛な構造物近傍において,地震時にこのような大きな沈下が確認された例が少ないことを踏まえ,地盤の拘束圧を実物に近づけることが可能な遠心力模型実験によって現象を再現し,近傍地盤では,構造物から離れた地盤と同様の土の圧縮による沈下に加えて,壁面から地盤が離れる際に主働すべりによる沈下が生じていることを把握した。さらに,遠心力模型実験を対象にGEOASIAによるFE解析を実施し,沈下現象の再現を試みた。その結果,解析結果において,地盤のダイレイタンシーに伴う土の圧縮による地盤の沈下が再現されており,構造物の近傍における上述の主働すべりによる大きな沈下も概ね再現可能であった。
  • 小山 倫史, 高橋 健二, 西川 啓一, 大西 有三
    2010 年 5 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    近年多発しているゲリラ豪雨では,極めて短時間に降雨量が変化するため,斜面表層部の湿潤履歴によっては,数秒単位で多量の雨水浸透が発生し,斜面安定性を著しく低下させ,斜面崩壊を誘発する.したがって,数秒単位の鋭敏な雨水浸透現象を評価する必要性があり,そのためには,まず,降雨量を数秒単位で精度よく計測する必要がある.本研究では,超音波レベル計を用いてリアルタイム雨量計の開発を行った.本雨量計は,超音波により円筒形の雨受けに溜まった水位(降雨量)を1秒ごとに計測することで,従来の転倒枡型雨量計を用いた場合に生じるタイムラグを生じることなく,リアルタイムで精度よい計測が可能である.また,雨量計測の結果を1次元の飽和–不飽和浸透流解析に用い,従来の降雨強度として用いられる時間降雨量(あるいは10分毎降雨量)を入力値とした場合と比較し,降雨境界条件の入力方法の相違が降雨の浸透特性に与える影響について調べた.
  • 椋木 俊文, 吉永 智昭, 川崎 了
    2010 年 5 巻 1 号 p. 69-80
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    バイオカバーソイルとは,バイオグラウト工法を応用して最終処分場内で供給可能なカルシウム源と土壌中の微生物代謝で発生する二酸化炭素によって覆土内において炭酸カルシウムを析出させ,既存の覆土よりも透水性の低下と強度増加を見込んだ新しい覆土材料である。本研究では,最終処分場におけるバイオカバーソイルの生成を想定して,pH環境と有機栄養源をパラメーターとしたバイオグラウトの生成実験を実施し,各条件における炭酸カルシウムの析出状況を考察した。その結果,バイオカバーソイルの生成には溶媒あるいは母材にpHの緩衝能力が不可欠であること,有機栄養源は分子構造が単純なものであれば24時間以内で分解され,炭酸カルシウムの析出反応が終了することが明らかとなった。また,バイオカバーソイルの一軸圧縮強度は供試体の乾燥が促進すると生成直後の強度に対し最大20倍の強度が得られ,透水係数は少なくとも10分の1に低下することが明らかとなった。
  • 田代 むつみ, 稲垣 太浩, 中野 正樹, 野田 利弘, 浅岡 顕
    2010 年 5 巻 1 号 p. 81-87
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    自然堆積粘土の力学特性を把握するためには骨格構造概念が重要であり,骨格構造の働きを定量的・定性的に記述するためには,土台となる練返し試料による試験が必要不可欠である.本論文では,練返し試料の圧縮曲線に着目し,練返し時の含水比が及ぼす影響について検討した結果,以下の結論を得た.(1)液性限界よりも低い含水比で練り返した試料は,試料が固く練返しに大きな力を必要とするため過圧密土的な挙動を示す.(2)液性限界よりも高い含水比で練り返した試料は,構造が残存し嵩張った挙動を示す.(3)骨格構造を完全に喪失した練返し試料の作製に最も適した含水比は,液性限界である.
  • 松下 克也, 藤井 衛, 森 友宏, 風間 基樹, 林 宏一
    2010 年 5 巻 1 号 p. 89-101
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    大規模造成宅地において切盛分布や盛土厚さを把握する手法として,新旧地形図の比較による方法がある。しかし,新旧地形図から作成された切盛図の精度の検証はあまり行われていない。本論文は,既存の谷埋め型大規模盛土造成地(開発総面積110,000m2)をモデルとして,縮尺の異なる新旧地形図から作成した切盛図の精度比較を行うとともに,平面的に高密度に実施したスウェーデン式サウンディング(SWS)試験と表面波探査を用いて,切盛分布や盛土厚,盛土の硬さを相互に比較することによって,それぞれの地形把握手法の問題点を明確にし,造成地盤の地歴状況把握の精度の検討を試みた結果,造成宅地地盤における旧地形の把握においては,それぞれの手法の適用性から,求めたいメニューによって,地形図,SWS試験,表面波探査を適宜組み合わせて評価する必要があることが分かった事例を紹介する。
  • 小山 倫史, 高橋 健二, 大西 有三
    2010 年 5 巻 1 号 p. 103-118
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    斜面崩壊は,斜面表層の飽和度に伴う密度増加による表層崩壊,斜面内の地下水位上昇に伴う有効応力の低下による地すべりに分類されるが,いずれの場合も斜面内の地下水挙動を把握することが必要不可欠である.さらに,この地下水挙動は,降雨浸透量や蒸発散量に加え,側方流入・流出量などの斜面全体における水収支変化に起因し,この水収支をどう扱うかが,斜面内の地下水挙動の評価を含めて,斜面安定解析の課題のひとつである.本研究ではこうした課題を背景として,従来の浸透流解析の問題点を検討した上で,新しい側方境界条件として,タンクモデル解析を導入し,その利点を考察する.まず,比較的小規模の簡易斜面モデルにおいてタンクモデルを援用した統合型浸透流解析について考察し,その上で斜面安定解析の計算結果を示す.次に同解析法を実際の地すべり地域に適用したケーススタディを示し,本研究で提案した統合型地下水解析手法の優位性を示した.
  • 吉村 洋, 東田 淳, 島津 多賀夫, 西田 博文, 中村 臨
    2010 年 5 巻 1 号 p. 119-136
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    3分,5分勾配の斜掘り溝型に加えて直掘り溝型と盛土型を含む設置方式で埋設される管を対象として, これまで不明であった管に作用する土圧と管の変形挙動を静的・動的遠心実験によって調べ, その実態を把握し, 強地震動時よりもT-25輪荷重載荷時の方が管の安全にとって危険であることを確かめた。次いで, 静的遠心実験に対する弾性FE解析を行い, 測定結果との良好な近似によって解析モデルの妥当性を確かめた。そして, 入力定数の感度分析の結果に基づいて解析モデルを簡単化した設計計算モデルを構築し, この設計計算モデルを用いて埋戻し土自重が作用する場合とT-25輪荷重が作用する場合の2通りの設計図表を作成し, 問題のある現行設計基準に代わる合理的設計法として提案した。最後に, 静的遠心実験の条件を与えた場合の設計計算例と実験結果の比較から, 現行設計基準に対する提案設計法の優位性を確認した。
ノート
  • 池尻 勝俊, 蔡 鍾吉, 澁谷 啓
    2010 年 5 巻 1 号 p. 137-145
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    本報告では,大阪府堺市の造成地で発生した第四紀大阪層群の地すべりにおいて,一連の現地調査,現場・室内一面せん断試験,珪藻化石分析等を実施し,地質的環境と地すべり発生機構について考察している。地すべりの発生素因である層状破砕帯の分布と形成機構および力学的特性を明らかにする上で,大阪層群における海成粘土と淡水成粘土の物理特性が大きく異なること,淡水成粘土よりも海成粘土の方がせん断強度は小さいこと,海成粘土層において層状破砕帯が形成されやすいこと,層状破砕帯から採取した試料を用いた繰り返し一面せん断強度は現場のすべり面の逆算強度に近いこと,等が確認された。
  • 渡辺 俊一, 江種 伸之, 平田 健正, 横山 尚秀, 山里 洋介, 森田 昌敏
    2010 年 5 巻 1 号 p. 147-157
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    本稿では,2003年3月に茨城県神栖市で発生した有機ヒ素化合物による地下水汚染の実態について報告する。汚染物質となった有機ヒ素化合物はジフェニルアルシン酸である。汚染地域で実施した野外調査では,ジフェニルアルシン酸は主に帯水層深部から検出された。しかし,汚染の発端となった飲用井戸の南東90m付近の人工的に埋め戻された浅層地盤からは,ジフェニルアルシン酸を高濃度に含むコンクリート様の塊が発見され,これが汚染源と推察された。また,地下水の汚染は汚染源から約3km離れた下流地区まで拡がっていることが確認された。
  • 上出 定幸, 土肥 泰之, 小泉 圭吾, 細木 康夫, 殿垣内 正人, 中辻 啓二
    2010 年 5 巻 1 号 p. 159-168
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    道路斜面災害発生件数は年々減少傾向にあるが,平成8年,平成13年,平成18年に実施した道路防災総点検で「対策不要」あるいは「点検対象外」と判断された箇所での災害発生件数は少なくない。斜面崩壊の危険性を検討するためには,素因である地盤特性に加え,降雨・地震等の誘因を考慮した検討が必要となる.本研究は高速道路沿線の斜面で発生する崩壊に対し,その発生メカニズムを基に素因を選定し,さらに評価項目に誘因である降雨を加えて危険度評価を行うことを目的とした。対象斜面である切土・背後斜面から各素因を抽出し,誘因として2004年の降雨時のデータを基に2.5kmメッシュ毎の土壌雨量指数を算出した.これらに数量化理論II類を用いることで点数化し,各斜面の危険度を評価した。その結果,背後斜面において,素因のみの判別結果よりも素因と土壌雨量指数を用いた判別結果の方が高い判別精度を示すことがわかった。
  • 高木 優任, 三村 大輔, 阪谷 廣司, 佐藤 哲
    2010 年 5 巻 1 号 p. 169-180
    発行日: 2010/03/26
    公開日: 2010/03/26
    ジャーナル フリー
    戸建て住宅などの小規模建築物向け地盤補強杭用の小口径鋼管に適用する機械式継手を提案し,必要とされる耐力(圧縮,ねじり)が確保できるかを確認するために,載荷試験,ならびにFEM解析を行った。検討の結果,提案する機械式継手は,鋼管と同等以上の圧縮耐力を有し,施工時に作用するねじりモーメントに対しても,鋼管のねじり耐力を基準とした許容トルクまで載荷できることを確認した。これらの結果から,提案する継手は施工,ならびに供用時の強度に問題はなく,設計上の要求性能を満足することを確認した。
feedback
Top