地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
ISSN-L : 1880-6341
17 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
論文
  • 村田 拓海, 沼田 淳紀, 佐々木 修平, 川崎 淳志
    2022 年 17 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    粘土質および砂質の軟弱地盤における 1 本物の丸太の鉛直支持力について,6 地域29 地点において,末口直径 0.110~0.190m,丸太長さ 2.0~12.0m の丸太を静的に圧入し,鉛直支持力を計測するとともに,スクリューウエイト貫入試験結果,標準貫入試験より求められる N 値,一軸圧縮強さ,電気式コーン貫入試験結果より鉛直支持力を求める推定式の検討を行った。丸太は,腐朽や蟻害などの生物劣化を避けるために地下水位以深に設置することが基本になるので,丸太頭部は GL-0.50~-1.50m に設置した。この結果,丸太の鉛直支持力の増加分の平均値が,地盤調査法ごとに,小規模建築物基礎設計指針における杭状地盤補強の鉛直支持力推定式を用いて求めた値の 1.47~2.83 倍となることを明らかにし,さらに,設計のための推定式をばらつきの下限より提案した。

  • 日高 功裕, 関口 陽, 石丸 真, 岡田 哲実, 澤田 喬彰, 中村 良太, 横田 克哉, 松居 伸明, 松田 泰治
    2022 年 17 巻 1 号 p. 19-32
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    岩盤の強度特性を調べる場合,通常,大型の試験体を用いた原位置岩盤せん断試験が用いられるが,初期応力や境界条件が不明であるため,試験結果の解釈は必ずしも容易ではないなどの課題がある。一方,近年,設計用地震動の増大に伴い,原子力発電所の基礎岩盤や周辺斜面の耐震性評価において,岩盤の破壊を考慮できる動的非線形解析手法の開発が進められているが,実物に対する実績が少なく,検証用のデータも不足している。本研究では,原位置岩盤せん断試験の課題の解決とともに,動的非線形解析の検証用データも取得できる大型の岩盤試料を用いた室内の繰返し一面せん断試験法を開発し,軟岩を対象として室内要素試験の結果と比較することにより,開発した試験法の適用性を検証した。

  • 中村 公一, 北山 大典, 海老沼 孝郎, 角和 善隆, 松本 良
    2022 年 17 巻 1 号 p. 33-45
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    表層型メタンハイドレートが賦存する山陰沖の 3 海域において,海底面から長さ 8m のコアを採取した。コアの観察により,炭酸塩ノジュールを含む泥,葉理が発達した泥,これら 2 つの影響が少ない塊状の泥の 3 つにわけた。これらの岩相に対し,物理特性に関する試験,コーン貫入試験,ベーンせん断試験,非排水三軸圧縮試験を行った。間隙比は,塊状の泥は深度増加に対応して減少するが,他 2 つの岩相は深度増加と対応しなかった。炭酸塩ノジュールを含む泥のみ粗粒分を含むこと,活性度は全ての岩相で大きいことがわかった。コーン貫入抵抗とベーンせん断強度は,塊状の泥は深度増加とともに増加傾向を示すが,他 2 つの岩相は深度増加と対応しなかった。圧密非排水三軸圧縮試験結果より,岩相による粘着力の差異は小さく,c’は3.1kN/m2 以下,ccu 5.0kN/m2 以下となった。

  • 石丸 太一, 鈴木 素之, 高野 翔太
    2022 年 17 巻 1 号 p. 47-60
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    河川堤防やため池堤体等の盛土内部で発生する細粒分流出は,構造物全体の健全性を低下させている可能性があり,経年劣化の一要因となりうる。しかし,間隙中の土粒子の移動メカニズムは不明なことが多く,細粒分流出がどのように進行するのかは十分に明らかにされていない。本研究では,細粒分流出が進行する過程における移動土粒子の粒径に着目し,その時間変化や侵食量との関係を調べることを目的として,細粒分の流出を可能にしたカラム装置を用いた一次元下向き通水実験を実施した。その結果,排水の濃度と濁度の関係から僅少な排出土の粒度組成を推測することができ,細粒分流出の進行とともに排出土の粒度組成が逐次変化していることや,通水時の飽和度が高く土粒子の流出量が多くなる条件ほど粒径が大きい土粒子が多く排出していることを明らかにした。

  • 白河部 匠, 王 海龍, 諸留 章二, 小峯 秀雄
    2022 年 17 巻 1 号 p. 61-71
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,ベントナイトの陽イオン交換容量(CEC)および各種浸出陽イオン量(LC)の測定方法について,ベントナイトの種類に着目して各手法を比較,検討した.試験方法は,酢酸アンモニウム,塩化バリウムおよび塩化ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(BTM)を用いる三種である.本研究にて改良した塩化バリウムを用いる方法と酢酸アンモニウムを用いる方法から得られた CEC は,6 種のベントナイトにおいて CEC の差異が最大 8.8 cmol(+)/kg であり,おおむね一致することが分かった.また,BTMを交換溶媒とする測定方法では随伴鉱物の溶解が抑えることが可能であり,各種LCの合計からCECを,各種LCから交換性陽イオンの組成を推定可能であることを示した.

  • 永田 政司, Sharmily BHOWMIK, 菊本 統, 藤原 優, 佐藤 尚弘
    2022 年 17 巻 1 号 p. 73-89
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    泥岩をはじめとする堆積軟岩は,切土掘削により地表に露出すると時間経過とともに風化が進行し,長期間が経過した切土法面はしばしば表層崩壊を引き起こしている。そのため,堆積軟岩で構成された切土法面の風化の進展と安定性の変化を把握し,適切に対策することは重要な課題になっている。しかし掘削後,数十年にわたって堆積軟岩の風化過程を観察した事例は過去にない。本研究では,著しい風化が確認された泥岩切土法面を対象として,掘削から約50年にわたって弾性波探査等の現地調査や土質試験,X線回折分析を行い,法面の風化機構と安定性への影響を検討した。その結果,法面表層では掘削直後の除荷に伴う応力解放や乾湿繰返しの影響による強度低下を生じる一方で,泥岩を構成する粘土鉱物の酸化や溶解等の化学変化は途中段階にあるため,化学的風化は50年経過後も経時的に進行することが示唆された。

  • 調 優吾, 原 弘行
    2022 年 17 巻 1 号 p. 91-99
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    セメント改良工法では,室内配合試験を実施して実際に使用する固化材やその添加量が決定される。本研究では,短時間で目標材齢のセメント処理土の強度を推定できる室内配合試験手法を開発するための足掛かりとして,様々な温度で養生したセメント処理土に対して一軸圧縮試験と熱重量分析を実施し,強度発現の促進効果を適切に評価する方法を検討した。その結果,セメント処理土の強度発現の促進効果は養生温度が高いときほど大きくなり,アレニウス則に基づく等価材齢によって強度発現の促進効果を精度よく評価できることが示された。また,養生温度によらず,等価材齢が等しければ水和反応の進行も同程度となることが確認された。しかし,70℃で養生すると,強度発現および水和反応の促進効果は55℃のときと同等かそれ以下となり,アレニウス則に従って促進効果が担保される温度には上限があることが示された。

  • 韓 雨松, 加藤 正司, 金 秉洙, Seong-Wan PARK
    2022 年 17 巻 1 号 p. 101-113
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,個別要素法を用いてメンブレン境界を有する三主応力試験を端面摩擦のない状態で再現し, Lode 角一定の三主応力制御試験の解析を行った。得られた応力-ひずみ関係は,別途行った壁要素境界の場合の解析結果と同様な傾向を示し,境界条件の違いがマクロな挙動に大きく影響を与えないことが判明した。一方,供試体内部について検討の結果,メンブレン境界は境界力分布や境界付近の間隙比分布の均一化,および供試体内部のひずみの均一化に寄与することが判明した。これらの結果は,今回の解析条件が,より理想的な三主応力制御試験を再現しているものと考えられる。さらに,3 種類の破壊規準の検討の結果,Matsuoka-Nakai 規準は本研究における中間的な大きさの平均主応力の下での限界状態の応力条件に最も適合することが判明した。

ノート
  • 土田 孝, 黒下 理樹, 橋本 涼太, 山下 恵梨華
    2022 年 17 巻 1 号 p. 115-123
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    海成粘土のセメント固化処理土における初期含水比と混合品質の関係について室内実験により検討を行った。初期含水比 w0 が粘土の液性限界 wL よりも小さい条件で混合し強度を求めると,w0=0.925wL のときに強度はピークを示し,w0=0.85wL で強度が低下,w0=0.775wL では条件によって w0=0.925wL の強度に対して増加あるいは減少するなど不安定となった。初期含水比 1.0wL,1.2wL の強度から求めた強度推定式を用いると,w0 が wLより小さくなるほど固化処理土の強度は推定強度よりも大きく減少した。粘土の初期含水比低下とセメント添加に伴う強度増加によって生じた流動性の低下が混合品質を低下させ,強度が十分発現しなかったと考えられる。また,混合直後に試料の一部とセメントスラリーが高濃度で混合し,ブレードに強く付着して均一な混合を妨げた可能性も考えられる。

  • 國生 剛治, 森 二郎, 水原 道法, 方 火浪
    2022 年 17 巻 1 号 p. 125-134
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2022/03/01
    ジャーナル フリー

    前回論文(國生,2019)では小規模斜面滑りをエネルギー的に簡易評価するために,Newmark 斜面モデルと 1 次元波動モデルを連成した力学モデルを開発し,滑り変位は滑りに要する地震エネルギーと一意的関係があり,地震マグニチュードなどから算出される地震波動エネルギーにより計算できることを示した。ただし変位が大きくなると数値誤差が拡大するため正確な変位評価が課題として残された。本ノートでは上記連成モデルに改良を加えて数値積分の誤差を減らし,大変位までの安定した評価結果を導いた。さらに,滑り面摩擦角,入力振動数など種々の関連パラメータの実務的変化幅に対する評価結果を基準化して統一的に表わし,変位量の簡便な算定を可能とした。これに基づき前回より適用性の高い設計用チャートを再構築し提示すると共に,結果を前回論文と比較することで両者の違いは限定的であることを確認した。

feedback
Top