本論文は,液状化判定のさらなる精度向上に資することを目的として,地中で水平方向に振動するコーンプローブを用いた原位置繰返し載荷試験法に関する検討を行ったものである。まず,本研究で製作した機器の概要を紹介するとともに,地中で振動するプローブの動的挙動を単純なモデルによって解釈することを試みた。また,振動式コーンによる振動操作と圧入装置による押込み・引抜き操作を組合せた様々な試験方法が考えられる中で,振動貫入試験法,振動引抜き試験法および定点振動試験法の3つを列挙し,液状化特性を把握するための試験法としての適用性を現場実験および模型実験によって確認するとともに,各々の得失を整理した。一連の検討の結果に基づき,試験原理の明確さや作業効率等の観点から,今後の発展が最も期待されるのは定点振動試験法であると結論付けた。
トンネル発生土の有効利用を図るためジオテキスタイルを用いた補強盛土内に地盤改良杭を構築し,これによりコンクリート路盤を直接支持することで省力化軌道を支持する盛土には不適とされる材料も適用可能となる盛土構造であるパイルスラブ式盛土を提案している。筆者らは,これまでパイルスラブ式盛土の有効性について,主に耐震性に着目し振動台実験等により確認している。本稿では,パイルスラブ式盛土の動的挙動の確認を目的とした2次元動的FEM解析及び試設計により,高盛土,軟弱地盤上盛土に対してもパイルスラブ式盛土が適用可能であることを確認した。加えて,パイルスラブ式盛土は補強盛土を構築する場合と比べて経済的となることを確認した。
薬液注入工法は,止水や強度増加を目的とした地盤改良工法の一つであり,軟弱地盤対策には欠かせないものである。これまで多くの施工実績を有する薬液注入工法であるが,工法の性質上,改良範囲や改良強度が不均一になることが危惧されている。本研究では,薬液の浸透挙動に影響を与える原因を3つ挙げ,それぞれの項目に対し影響評価を行った。1つ目は,薬液の種類によって異なる粘性と地盤の透水性が薬液の浸透挙動に与える影響を,浸透流解析によって評価した。2つ目は,地盤の浸透不確実性が薬液の浸透挙動に与える影響を,浸透流解析とモンテカルロ・シミュレーションによって評価した。3つ目は,薬液のレオロジー特性が浸透挙動に与える影響を,MPS-DEM連成解析によって評価した。これら3つの項目の評価の流れを示すことで,薬液注入工法における新たな性能評価手法の提案を目的としている。
地盤内での物質移動特性を表現するモデルとして,吸脱着平衡と固相内拡散を接続した“DF—Kdモデル”が提案されている。本研究では,DF—Kdモデルの適用性の実験的検討を目的とし,試料として珪砂およびまさ土,対象物質としてヒ素を用いて,モデル内のパラメーター取得手法の開発と,単一バッチ試験における試験値と計算値との比較検討を行った。固液接触時間を変えた複数のバッチ収着試験から,瞬時平衡とみなした分配係数を0.25—0.60L/kgの範囲で取得した。また,溶液を繰り返し交換するシリアルバッチ収着試験から,10-15—10-14m2/sオーダーの固相内拡散係数を取得した。得られたパラメーターをDF—Kdモデルに入力し,吸着層厚を複数に変えて単一バッチ試験を模擬計算した結果,最も適合した試料では,相対誤差77%以下で液相濃度の経時変化を再現した。
粗粒土を対象とした一面せん断試験の強度特性を把握するため,供試体作製時の堆積面およびせん断面がなす堆積角𝛼と,締固め方法の違いが一面せん断強度に与える影響を検討している。得られた結果において,自由落下法で作製した供試体は密度に拘らず,堆積角が大きくなるとせん断抵抗角は大きくなり,その上昇割合は粒子が扁平になるほど大きくなる傾向を示した。また,突固め法による供試体は自由落下法と比べ,せん断面と粒子長軸方向がなす角度である粒子傾斜角𝛽が大きくなる傾向を示した。この粒子配列のランダム化は回転抵抗を発揮する粒子の増加をもたらし,強度上昇要因となる一方,土の構造の劣化を招き,強度低下要因にもなると考えられる。
土石流災害軽減のためには早期の検知に基づく警報発信及び避難が重要である。著者らは土砂移動が起源となって生じる地盤振動を計測することが検知に有効と考えて実験的検討を行ってきている。本研究では人工的な降雨条件下で土石流を模した実験を行い,降雨及び土砂移動のそれぞれが地盤振動に及ぼす影響について検討した。その結果,降雨強度が大きい場合は土砂流動の振動が降雨に起因する振動に埋没する可能性があり,検知が難しくなることが分かった。この場合,両者の周波数特性が異なることを利用し,周波数領域の検知が有効となることを示した。更に,土石流検知のための計測器の設置場所確保と電源供給が大きな問題となる。そこで,両者を一度に解決する方法として,電柱を計測器の設置場所として利用する方法について検討し,電柱上部における振動計測の有効性を確認した。
粘土に砂を混合した固化処理土を作製し,その流動性と強度特性を調査した。実験は砂分含有量が3種類の原料土を準備し,水セメント比が一定の条件において,固化処理土の含水比とフロー値,およびqu28の関係を求めた。この結果,原料土が同一の場合,qu28は水セメント比と固化処理土の単位体積当たりの土粒子質量(以下,土粒子質量)に依存することが明らかとなった。固化処理土の配合検討においてはフロー値が90,120,150,210mmの4条件で,現場強度が500kN/m2の配合を算定した。粘土100%と砂50%混合処理土の配合を比較すると,後者はセメント質量が33~42kg/m3減少する(割合は22~20%)など,原料土の違いによる配合への影響を明確に示すことができた。
明治・大正期に建設された東京湾海堡の建設材料としての盛土砂の締固め特性と,コンクリート,煉瓦,岩石の強度・変形特性を検討した。第一海堡の埋立てに用いた砂の巻き出し厚の平均値は18cmであり,当時の規準に従う仕様規定が行なわれていたが,液状化対象砂であった。石・煉瓦・コンクリートの割線変形係数,ポアソン比,脆弱度等の強度・変形特性が乾燥密度や一軸圧縮強さと関係付けられ,土木史跡の健全性や今後の維持・管理に有用な回帰式を得た。
本研究では,できるだけコストのかからない「地球環境負荷低減型対応の緩速かつ経済的な炭酸化処理技術」の開発のための基礎的なデータを得る目的で異なる3つの方法により製鉄所から排出された未エージング製鋼スラグと大気とを積極的に接触させ,室内エージング日数の経過にともなう製鋼スラグの基本的特性の推移を実験的に検討することにした。得られた結果より,室内エージング日数の経過にともなってpH(H2O),電気伝導率,カルシウムイオン濃度は減少,炭酸カルシウム含有率は増加し,その推移には加水操作や大気との接触操作が影響を及ぼすことが明らかとなった。
高速道路では,防災・減災を目的とした盛土の大規模修繕が実施されている一方,膨大な数の対象盛土における水位を簡易に把握,評価するには課題がある。そこで,季節に応じて変動する盛土内水位について,河川の流量評価に用いられる流況を基にした「水位位況」という新たな水位評価の考え方を示し,全国の高速道路盛土で観測された水位データの整理分析を行った。その結果,盛土内水位が高くなりやすい盛土材料や基礎地盤における条件の傾向をいくつか読み取った。さらに,水位位況によって盛土内水位を整理することにより,大規模修繕を計画的に進めていくための評価区分を提案した。
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