地盤工学ジャーナル
Online ISSN : 1880-6341
ISSN-L : 1880-6341
15 巻, 4 号
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論文
  • 片山 潤一, 乾 徹, 勝見 武, 高井 敦史
    2020 年 15 巻 4 号 p. 675-682
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    自然由来の重金属等を含む堆積物を盛土材や埋立材として利用する場合,基準値以上の重金属等の溶出が懸念されることから,長期的な溶出挙動の把握が重要となるが,溶出挙動の長期的なモニタリング結果や広く用いられる溶出試験結果との比較結果は限られている。本研究では,自然由来の砒素を含む砂質海成堆積物を対象として,表層付近における降雨浸透による溶出挙動を再現する散水型カラム浸透試験を長期に渡って実施するとともに,一般的な上向流カラム通水試験の結果との比較を行った。浸透深さや供試体寸法,pHや酸化還元電位といった物理的・化学的要因が砒素溶出濃度に及ぼす影響を検討した結果,砒素の溶出はpHやアルミニウムの沈殿などによる影響で深度方向に比例的に上昇しないこと,一般的なカラム浸透溶出試験による評価結果と特に初期段階においては整合することなどが明らかになった。

  • 國生 剛治
    2020 年 15 巻 4 号 p. 683-695
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    筆者らは応力よりも直接的に液状化を支配する物理量として累積損失エネルギーに着目し,それと直結する累積ひずみエネルギーを地震上昇エネルギーと比較することにより簡便に液状化判定できるエネルギー法の手順を既に提示し,広範な地震動を対象とした適用例によりその有効性を示した。ここでは上昇エネルギーが定量化できる本方法の特徴をさらに生かし,既提案法で液状化すると判定された各層にエネルギーが均等に配分されると考えることで,複雑な有効応力動的応答解析に依らずとも,発生するせん断ひずみだけでなくそれに直結した体積ひずみや地表沈下量が計算できる評価手順を開発した。これを上記エネルギー法で既に検討した仮想均質地盤や既往液状化地盤に再度適用したところ,弱い層へのひずみの集中化が評価されると共に実測値とほぼ整合する沈下量が簡便に計算できることが分かった。

  • 仙頭 紀明
    2020 年 15 巻 4 号 p. 697-704
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    福島県いわき市平地区では,都市開発に伴い軟弱粘性土地盤の沈下が発生している。加えて2011年東北地方太平洋沖地震による地盤沈下も報告されている。本研究では測量調査により地盤沈下の推移を求め,地震後2年間で約8cmの沈下が生じ,その後も年間1cm弱の沈下が継続していることを明らかにした。次に,この地点の地盤調査と室内試験結果から,地盤沈下は正規圧密状態に近いシルト層で発生したことを明らかにした。さらに,調整粘土供試体に非排水繰返しせん断を与えた後,再圧密して沈下量を求めた。その結果,過剰間隙水圧比,せん断ひずみ振幅が大きいほど,沈下量が大きくなり,正規圧密状態では体積ひずみにして最大約3%の沈下が発生した。また過圧密比が大きいほど沈下量は小さくなることもわかった。

  • 姫野 季之, 日野 剛徳, 三浦 哲彦, 碓井 博文, 喜連川 聰容
    2020 年 15 巻 4 号 p. 705-714
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    促進養生法は,地盤改良時の室内配合試験および品質・出来形管理における改良土の強度発現の当否をわずか1日で見極めようとするものである。本報では,標準土としての市販のカオリンおよびベントナイトを対象に同養生法に関する基礎的な検討を行い,クリーク底泥を対象に改良時の強度発現特性ついて促進養生法および通常養生法のもとで実験的検討を行った。標準土による基礎的な検討結果から,促進養生法による一軸圧縮強さqu1は28日養生による一軸圧縮強さqu28との間で直線関係が成り立つことがわかった。クリーク底泥に促進養生法を適用した結果,qu1はqu28より低かった。他方,強度比qu28/qu1について,セメント系固化材の種類および水セメント比による差は生じるものの,配合量の変化によらず概ね一定の値を示した。これらの結果から,促進養生法は有用であるとの見通しを得た。

  • 岡本 道孝, 小原 隆志, 中島 悠介, 田中 恵佑, 中本 詩瑶, 吉田 輝
    2020 年 15 巻 4 号 p. 715-726
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    格子状補強シート工法とは,格子状に配置した筒状織物にモルタルを注入・固化して形成する格子枠とジオテキスタイルを複合した表層安定処理工法である。本工法では格子枠が有する曲げ剛性と覆土のせん断変形抑制効果を考慮できるため,表層安定処理でジオテキスタイル単体を用いる場合と比べて高い安定性を期待できる。本論文では軟弱地盤上での橋脚補強工事において本工法をクローラクレーンの安定対策に適用した事例を紹介する。まず3次元変形解析によって本工法の補強効果を予測し,本事例での適用を決定した。実作業ではクレーンの安定性を確保できたが,揚重作業中の現場計測結果は予測結果と異なる傾向を示したことから,本工法の補強効果検証を目的とした再現解析を行った。計測結果と再現解析結果が概ね一致したことから再現解析の手法は妥当と判断し,これと同じ手法によって本工法がクローラクレーンの安定対策として有効な条件について整理した。

報告
  • 並川 賢治, 松本 正士, 古関 潤一
    2020 年 15 巻 4 号 p. 727-739
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    深度45mの堆積軟岩に高さ約5mの馬蹄形トンネルを無支保で掘削し,施工前に地中に設置した計測機器により掘削に伴う地盤変形を計測した。計測された地盤変形を考察するために,掘削中の計測断面と同一箇所でサンプリングした試料の室内土質試験を行い,それらの結果と地盤調査から同定した地盤パラメータを用いて施工過程を再現した三次元FEM解析を行った。計測された沈下分布と解析結果を比較した結果,堆積軟岩を無支保でトンネルを掘削して生じたトンネル天端の沈下挙動は,地盤の強度パラメータによる影響は小さく弾性域の変形係数に影響されており,地盤の不均一性,拘束圧依存およびクリープを要因とすると考えられる現象が認められた。

  • 福島 伸二, 北島 明, 堀田 崇由
    2020 年 15 巻 4 号 p. 741-747
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    筆者らは固化改良土によるフィルダム堤体改修技術である砕・転圧盛土工法における強度管理に針貫入試験を適用してきたが,対象となる固化改良土の強度レベルが一軸圧縮強さqu≦300~1000kN/m2と一般の地盤改良工法でのものより低く,試験針に直径d=0.84mmの2号木綿針を用いる通常型針貫入試験は貫入抵抗力Pが小さく,強度推定での信頼性に問題があった。そこで,Pが大きくなるようにdを木綿針より大きくd=4mm,先端角θ=30°のコーン型試験針などを用いた改良型針貫入試験の適用性を室内試験の実施により調べ,以下の結論が得られた。針貫入試験から得られる針貫入のPと貫入量δの関係は,通常型試験の基本原理と同様に針貫入の表面積に比例するので,強度推定がP~δ関係の二次曲線的変化を考慮した貫入勾配NPCを導入して得られる両対数図上の一軸圧縮強さquとの間の直線関係により行うことができる。

  • 日置 和昭, 中澤 博志, 沼倉 桂一, 若杉 護, 藤原 照幸, 渡邉 健治, 中川 直
    2020 年 15 巻 4 号 p. 749-760
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    地盤工学会は,地盤材料試験に関する技能試験を平成23年度から継続的に実施し,その精度確認と技能評価を行っている。本稿では,平成24~29年度の技能試験結果と,それと並行して実施したアンケート調査結果をもとに,地盤材料試験の精度・ばらつきや実施状況の実態について整理し取りまとめた。その結果,1)技能試験への参加試験所数は50~70試験所の間で推移し,官民の研究・試験所からの参加数が増加傾向にあること,2)試験器具の購入時検査,使用前点検,校正・定期点検の実施率は改善傾向にあるものの,一部の試験器具に関しては,校正・定期点検の実施率が著しく低いこと,3)試験規格の順守率は概ね改善傾向にあるものの,一部の試験規格に関しては,順守率が30%未満の規格もあること,などを確認できた。

  • 保坂 吉則
    2020 年 15 巻 4 号 p. 761-774
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2020/12/31
    ジャーナル フリー

    地理情報システムを用いて「新潟地震地盤災害図1)」に記録された建物被害,地盤変状,噴砂などの被害情報をトレースし,それぞれの面積や長さを50mのメッシュ区画毎に抽出した被害量から,微地形区分毎に被害発生率と各メッシュの被害規模を比較した。その結果,砂丘地形は基本的に被害発生率が低いが,海岸砂丘辺縁部の低地では大きな地盤被害が見られた。盛土や埋土の地形区分は,旧河道域のほぼ全体で被害が発生して被害規模も大きい傾向を示したが,南部の古い砂丘間の盛土地は被害が少ない。後背低地や自然堤防に地形分類された区域では,江戸時代前期の旧河道域で埋土・盛土地と同等の被害規模であったが,陸域だったところは無被害地が多い傾向を示した。

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