日本森林学会誌
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95 巻, 4 号
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論文
  • 守口 海
    2013 年 95 巻 4 号 p. 199-205
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/14
    ジャーナル フリー
    最適伐採戦略の探索は伐採計画の立案の基礎となる重要な技術である。特にその信頼性には, 大域的最適解に収束することが最も重要である。そこで, 動的計画法, ランダム探索法, 全探索法の三つの探索法について, 探索された最適解を比較し, 有効性について検討した。対象林分は長野県カラマツ, 林分成長モデルは林分密度管理図とした。収益モデルは収穫量を材積歩留まりで算出するが, 立木価格はDBHにより変化するものとした。探索の評価基準は収穫原木の現在価値 (NPV) とした。動的計画法およびランダム探索法の伐採本数は5本/haごと, 全探索法は伐採率を5%ごとに設定した。伐採林齢は計画期間に応じて5年ごととした。以上のモデルについて探索した結果, 最適解のNPVは全探索法が最も大きく, ランダム探索法, 動的計画法と続いた。立木価格がDBHに対し増減する場合, 動的計画法の最適解によるNPVの年次変化は, 他の二つと異なった。一林分状態の評価回数は動的計画法が最も少なく, 次いでランダム探索法であり, 全探索法は非常に多かった。以上より, 解の信頼性と計算回数を考えると, 今回の収益モデルではランダム探索法が良好な結果を示した。
  • 瀧 誠志郎, 野堀 嘉裕, Lopez Caceres Maximo Larry, 武田 一夫
    2013 年 95 巻 4 号 p. 206-213
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/14
    ジャーナル フリー
    これまでの森林の密度管理手法は, 幹材積の収量を把握・管理するものであった。森林を炭素吸収源として捉える際には, 幹材積よりも重量値を基準に把握・管理するべきだと考えた。これは, 木材生産を目的としていない森林を炭素吸収源として評価するには特に重要な意味を持つ。また, これまでの密度管理手法に共通して使用される最多密度線は, 本来重量値によって定義づけられるものである。そこで, 本研究では重量値による収量-密度図を作成することを目的とした。調査対象は庄内地方の海岸クロマツ林である。作成された収量-密度図の最多密度線の傾きは−0.507となった。本研究では, 林齢とBポイントの関係から林齢別Y-N曲線を新たに導入した。これにより, 収量-密度図上に時間軸を組み込むことで, 調査対象とする林分の重量値を相対的に把握・評価することが可能となった。収量-密度図であれば, 直径階別に立木本数とその重量値が把握できることから, 炭素蓄積を目的とした密度管理にも応用できる。本研究は, これまでほとんど改変されてこなかった収量-密度図を, 重量値を使用することによって時代のニーズに応える次世代型の密度管理方法として改良した。
  • 山川 博美, 重永 英年, 久保 幸治, 中村 松三
    2013 年 95 巻 4 号 p. 214-219
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/14
    ジャーナル フリー
    コンテナ苗の通年植栽の可能性および裸苗との成長比較を行うため, コンテナ苗を時期別 (12月・2月・5月・8月・10月) に植栽するとともに, 通常の植栽時期である2月には裸苗も植栽し, 活着率および植栽1年目の成長量を比較した。コンテナ苗の活着率は, すべての植栽時期において94%以上であり, 2月に植栽した裸苗と同等かそれ以上であった。コンテナ苗と裸苗の成長量は, 同程度であった。また, 生育期間の途中で植栽した苗木は, 5月植栽の個体で直径成長が小さい傾向がみられたが, 植栽当年から植栽後の生育期間の長さに応じて成長していた。コンテナ苗は1年を通して高い活着率を示し, 生育期間の途中に植栽したとしても植栽当年から成長していた。したがって, 翌春からの成長が通常の植栽スケジュールで植栽した場合と同等以上であれば, 時期を選ばず伐採後すぐに植栽することができ, 伐採から植栽までの一貫作業システムの実現において, コンテナ苗の利用は有効であると考えられた。
  • 松井 由佳里, 家入 龍二, 森口 喜成, 松本 麻子, 高橋 誠, 津村 義彦
    2013 年 95 巻 4 号 p. 220-226
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/14
    ジャーナル フリー
    電子付録
    近年, DNA分析により, 九州地方のスギ在来品種は一つの品種が複数のクローンで構成されていることが明らかとなったが, 在来品種間や在来品種内-遺伝子型間の遺伝的な類似性に関する研究は未だ行われていない。そこで, 九州の主要な挿し木品種を対象に, マイクロサテライト (SSR) マーカーを用いたクローン識別および遺伝的類似性の評価を行った。9遺伝子座の核SSRマーカーを使用したクローン識別の結果, 19品種 (279個体) のスギは26の遺伝子型に分類された。メアサ, アヤスギ, ヤブクグリ, オビアカは複数の遺伝子型で構成されており, それぞれ主なクローンが存在した。また, 固有の遺伝子型を持たず他の品種と同じ遺伝子型を持っていたものがあった。遺伝的類似性については, 19の遺伝子型で, 33遺伝子座のSSRマーカー (9個の核SSR, 24個のEST-SSR) を用いて評価した。その結果, 九州の挿し木品種は比較的幅広い遺伝的変異を持っており, 挿し木品種内-遺伝子型間には, 比較的類似した遺伝変異を保有している傾向が明らかとなった。
  • 正木 隆, 櫃間 岳, 八木橋 勉, 野口 麻穂子, 柴田 銃江, 高田 克彦
    2013 年 95 巻 4 号 p. 227-233
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/14
    ジャーナル フリー
    1908年に植栽された秋田県のスギ人工林で, 45∼73年生の期間に強度間伐 (収量比数0.6相当) から無間伐 (収量比数0.9相当) まで4段階の密度管理が3回の間伐によって行われ, 現在104年生に達している林分を対象に, 無間伐区と比べて間伐区の個体の樹高成長が低かったかどうかを検証した。間伐前の45年生の時点で間伐区と無間伐区のそれぞれから胸高直径および樹高が同等の立木を1個体ずつ選んでペアとし, それらの中から, 間伐処理以降も2個体が同等の直径成長を示したペアを対象に, 個体間の樹高および形状比を比較した。その結果, 強度間伐区の個体は60年生以降に無間伐区の個体よりも樹高成長速度が低い傾向を示した。中庸度・弱度の間伐区では, 少し遅れて70年生以降に同様の傾向がみられた。104年生時には, 間伐区の個体の樹高は無間伐区で同等の直径成長を示した個体と比べて平均で1∼2 m低く, 形状比は平均で2∼4ポイント低下していた。104年生時に, 強度・中庸度間伐区の形状比は無間伐区よりも低かったが, それは間伐による直径成長の促進だけではなく, 樹高成長が相対的に低かったことの影響もあると考えられた。
短報
  • 南光 一樹
    2013 年 95 巻 4 号 p. 234-239
    発行日: 2013/08/01
    公開日: 2013/09/14
    ジャーナル フリー
    日本のヒノキ人工林において林内雨滴を直接測定した七つの研究例をまとめ, 複数降雨イベントから得られた平均的な林内雨の運動エネルギーを雨量1 mm当りに正規化した運動エネルギー (KEN; J m−2 mm−1) と生枝下高・樹冠長との間に, それぞれ正の相関・負の相関を見出した。生枝下高の上昇に伴う滴下雨滴速度の上昇がKENを増加させ, 樹冠長の増大に伴い, 樹冠上層で形成された大きな滴下雨滴が樹冠下層に衝突し小粒径化する機会が増加することがKENを減少させることが考えられた。それぞれの影響を分離評価し, 生枝下高と樹冠長を用いてKENを推定する経験モデルを構築した。このモデルは, 異なる樹高・生枝下高・樹冠長を持つヒノキ人工林の平均的な林内雨の運動エネルギー推定を可能にし, 裸地化林床を有するヒノキ人工林における浸透能・表面流量・土壌侵食量の推定に役立つ式となる。
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