日本森林学会誌
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96 巻, 4 号
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論文
  • 今 博計, 来田 和人
    2014 年 96 巻 4 号 p. 187-192
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    カラマツとクリーンラーチ(グイマツ×カラマツ雑種F1)の充実種子とシイナ種子を分けるため,エタノールで比重選を行うとともに,エタノール処理が発芽に及ぼす影響について調べた。濃度99.5%のエタノールによって充実種子とシイナ種子を明確に選別できた。濃度99.5%のエタノールでは充実種子の94.0~97.3%が沈み,沈んだ種子の93.1~98.7%が充実種子であった。エタノール浸漬による発芽への影響はカラマツとクリーンラーチで異なった。真正発芽率は,カラマツではエタノール選で36.4~50.9%,無処理で66.7~81.0%であったのに対して,クリーンラーチではエタノール選で94.2%,無処理で88.3%であった。これらのことから,エタノール選によりカラマツとクリーンラーチでは充実種子とシイナ種子を高い精度で選別できること,しかしながら,カラマツではエタノール選により発芽率が低下する可能性があることを明らかにした。
  • 玉木 一郎, 野村 勝重, 野村 礼子, 楯 千江子, 小木曽 未佳, 宮上 佳弘
    2014 年 96 巻 4 号 p. 193-199
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    シデコブシは東海地方に固有の低木種で絶滅が危惧されている。本研究では皆伐後の同樹種の萌芽・実生更新の過程を明らかにするために,岐阜県多治見市の自生地に30 m × 10 m の調査区を設置し,2012年1月に皆伐した。4~11月にかけてシデコブシの萌芽・実生更新の様子を調査した。萌芽の合計数ではソヨゴとシデコブシ,ノリウツギ,タカノツメが優占していた。シデコブシの近傍に位置する自身よりも萌芽高の大きい個体の大半はノリウツギであったため,同種が萌芽更新の当座の競争相手になると考えられた。シデコブシの伐根と個体の死亡割合は19% と12% であった。個々の伐根は齢やサイズと無関係に死亡していた。その結果,個体を構成する伐根が少ない個体は死亡しやすい傾向を示した。萌芽数は伐根直径が12~20 cm のあたりでピークを示した。したがって,これらのサイズがシデコブシの萌芽更新に最適であると考えられる。皆伐後,シデコブシの当年生実生が175個体発生し,これらは埋土種子から発生したと考えられた。
  • 谷 早央理, 玉木 一郎, 鈴木 節子, 戸丸 信弘
    2014 年 96 巻 4 号 p. 200-205
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    電子付録
    シデコブシとタムシバの雌雄を入れ替えた種間交配(正逆種間交配)を行い,種間交配の方向によって果実と種子の形成程度および形成された種子の発芽率に差異が生じるかを調べた。授粉から約60~90日後において,タムシバを母樹とする種間交配よりシデコブシを母樹とする種間交配で果実の脱落が多かった。また,結果率(成熟果実数/初期生残果実数)と結実率(成熟果実の種子数/成熟果実の胚珠数),雌性繁殖成功度(結果率×結実率)は,いずれもシデコブシを母樹とする種間交配の方が低い値を示した。種子の発芽率は,タムシバを母樹とする種間交配よりシデコブシを母樹とする種間交配で低かったが,統計的な差は認められなかった。したがって,自然条件下においてタムシバが母樹,シデコブシが父樹となる一方向性の種間交雑が生じるのは,主に,シデコブシを母樹とする種間交配において果実の成熟と種子の形成に障害が生じるためであると考えられる。
  • 鳥田 宏行, 佐藤 創, 真坂 一彦, 阿部 友幸, 野口 宏典, 坂本 知己, 木村 公樹
    2014 年 96 巻 4 号 p. 206-211
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    東北地方太平洋沖地震津波の発生後,海岸林現地調査により,海岸林の被害状況が詳しく報告されてきた。本研究では,これらの現地調査の結果を力学的な見地から検証するため,青森県三沢市織笠のクロマツ海岸林を対象に簡易モデルを用いて現地の被害状況を解析すると共にモデルの有用性を検証した。その結果,立木に根返りや幹折れが発生するときの津波の限界流速が求められ,この値が小さい立木において実際に被害が発生したことが示された。特に,枝下高約6m 以下の立木は,被害を受けやすく相対的に限界流速が小さかった。立木の被害形態に関して予測された結果は,ほとんどが根返りを示し,現地調査の結果と定性的に一致した。形状比が限界流速に及ぼす影響については,明確な関係性がみられなかった。今回用いた簡易モデルは,各地の被害調査結果を相互に関連性をもって解析する際の一つの手段であり,これにより各地の被害状況を比較検討することが可能となると考えられる。
  • 小野 裕
    2014 年 96 巻 4 号 p. 212-220
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    乾燥と湿潤が繰り返される水分条件の中で,森林土壌の団粒がどのように変化するのかを明らかにする目的で,ヒノキ林と広葉樹林のA 層から採取した3,4,5 mm 団粒試料を用い,水分条件を変えて培養実験を行った。培養は団粒試料が乾燥状態を保つもの,乾燥と湿潤を繰り返すもの,湿潤状態を保つものの3条件とし,14日間行った。その結果,3 mm 団粒試料と4 mm 団粒試料では,ヒノキ林試料,広葉樹林試料ともに乾燥と湿潤を繰り返す水分条件下で団粒破壊が進行し,これはスレーキングによるものと考えられた。5 mm 団粒についてはヒノキ林試料,広葉樹林試料ともに団粒破壊の進行が3 mm 団粒や4 mm 団粒試料と比べ緩やかであった。このことからスレーキングによる団粒破壊には団粒の大きさが影響し,団粒径が大きいと団粒破壊の進行が緩やかになる可能性が示された。一方,樹種による違いについては,今回の実験結果からは認められなかった。また,湿潤状態を保つような培養条件下では団粒破壊は進行しないことも明らかとなった。
  • ―岩手県葛巻町の事例―
    八巻 一成, 茅野 恒秀, 藤崎 浩幸, 林 雅秀, 比屋根 哲, 金澤 悠介, 齋藤 朱未, 柴崎 茂光, 高橋 正也, 辻 竜平
    2014 年 96 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    過疎地域の活性化を図る上で,地域の自然資源を活用した地域づくりを進める取り組みは重要である。本研究は,その先進地域として知られる岩手県葛巻町を対象として,地域づくりにおける人的ネットワークが果たす役割を社会ネットワーク分析によって明らかにした。現町長および前町長が任期中のネットワークをみたところ,二時期ともに町長はネットワークの最も中心に位置しており,リーダーシップを発揮しているアクターであると考えられた。ネットワークの中心部分を把握したところ,町長に加えて,副町長,第三セクターおよび森林組合に所属するアクターによって構成されており,町長のリーダーシップはこれらの地域のリーダーたちの壁を越えて横断する凝集性の高いネットワークによって支えられていた。また,この密なネットワークは現町長,前町長の二時期に渡って維持されており,結束型ソーシャル・キャピタルを醸成していると考えられた。一方,ネットワークの中心部分は,町内にとどまらず町外関係者とも多くのネットワークを形成しており,外部から様々な資源を入手するための橋渡し型ソーシャル・キャピタルとして機能していると考えられた。
短報
  • 瀧 誠志郎, 南 佳織, 野堀 嘉裕
    2014 年 96 巻 4 号 p. 229-233
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    日本におけるバイオマス拡大係数は,樹種と林齢により区分けされた一定値であるため,これによるバイオマスの推定には個体サイズなどの林分特性が反映されない。そこで本研究では,クロマツ海岸林において樹幹解析と先行研究からバイオマス拡大係数 (BEF) の推定を行い,個体サイズや個体成長とバイオマス拡大係数との関係性について考察した。さらに,毎木調査を行い,林分内における胸高直径別のBEF の分布について考察した。この結果,同一個体の成長にともなってBEF は減少し,その後一定となる傾向がみられた。また,林分内におけるBEF の分布は,小径木ほど大きく,ある直径以上ではBEF が一定となる傾向がみられた。以上のことから,個体の成長にともなうBEF の減少の割合やその傾向,および林分構成によってBEF の値は異なる可能性があると考えられる。したがって,BEF は地域や林分あるいは個体レベルで算出する必要がある。
  • 國崎 貴嗣, 白旗 学
    2014 年 96 巻 4 号 p. 234-237
    発行日: 2014/08/01
    公開日: 2015/04/01
    ジャーナル フリー
    過密なスギ壮齢人工林12林分を対象に平均樹冠長を調べた。過密壮齢林と無間伐若齢林のデータを合わせると,上層木平均樹高が高いほど平均樹冠長は長かった。ただし,過密壮齢林の平均樹冠長の平均値は5.9 m と,無間伐若齢林の5.4 m に比べて顕著に長くなかった。間伐を実施しなければ,過密壮齢林における平均樹冠長の着実な増加は期待できない。
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