日本におけるバイオマス拡大係数は,樹種と林齢により区分けされた一定値であるため,これによるバイオマスの推定には個体サイズなどの林分特性が反映されない。そこで本研究では,クロマツ海岸林において樹幹解析と先行研究からバイオマス拡大係数 (
BEF) の推定を行い,個体サイズや個体成長とバイオマス拡大係数との関係性について考察した。さらに,毎木調査を行い,林分内における胸高直径別の
BEF の分布について考察した。この結果,同一個体の成長にともなって
BEF は減少し,その後一定となる傾向がみられた。また,林分内における
BEF の分布は,小径木ほど大きく,ある直径以上では
BEF が一定となる傾向がみられた。以上のことから,個体の成長にともなう
BEF の減少の割合やその傾向,および林分構成によって
BEF の値は異なる可能性があると考えられる。したがって,
BEF は地域や林分あるいは個体レベルで算出する必要がある。
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