The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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53 巻, 2 号
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【巻頭言】
特集『がんのリハビリテーション エビデンス&プラクティス』
  • 辻 哲也
    2016 年 53 巻 2 号 p. 110-114
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
     がんは“不治の病”から“がんと共存”する時代になりつつある.しかしこれまで,がんにより生じた身体的なダメージには積極的な対応がなされてこなかった.その一因は包括的なガイドライン(以下,GL)が存在しないことにあった.そこで,厚生労働科学研究費補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)「がんのリハビリテーションガイドライン作成のためのシステム構築に関する研究」では,日本リハビリテーション医学会と協働して,2013年に「がんのリハビリテーションガイドライン」を刊行した.総論・評価および原発巣・治療目的・病期別に8領域に分けられ,エビデンスの高い臨床研究が多数存在することが実証された.
     今後,がんリハビリテーション(以下,リハビリ)をさらに発展させていくためには,新しいエビデンスを付加するだけでなく,がん医療におけるリハビリニーズを取り入れたGLの改訂作業を実施する必要がある.
  • 田沼 明
    2016 年 53 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
     胸腹部のがんに対して開胸・開腹術が施行される場合,術後に無気肺や閉塞性肺炎といった呼吸器合併症が発生するリスクがある.これを予防するために呼吸リハビリテーションを行うことが有効である.周術期呼吸リハビリテーションは術前に開始される.術前は禁煙指導,インセンティブ・スパイロメトリーを含む深吸気の指導,排痰方法の指導,肩甲帯や頸部のストレッチの指導などを施行する.これらの訓練に術前から慣れておくことで術後に円滑に訓練できるようにする.術後は術前に訓練しておいた手技を実践するとともに,早期から離床を進めていく.これらを施行することで術後の呼吸器合併症の予防を図ることが勧められている.
  • 村岡 香織
    2016 年 53 巻 2 号 p. 119-123
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
     乳がんのリハビリテーション(以下,リハ)は,術後の肩関節可動域制限・上肢筋力低下・疼痛といった上肢機能障害に対するリハ,術後のリンパ浮腫予防のためのリハ,術前後から慢性期にわたる運動療法,という3つの柱があり,それぞれ有効性について多くのエビデンスが得られている.婦人科がんのリハは報告が少ないが,子宮体がん患者で運動療法の有効性が報告されている.
  • 鶴川 俊洋, 生駒 一憲
    2016 年 53 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
     脳腫瘍のリハビリテーション(以下,リハ)のガイドライン(以下,GL)作成におけるクリニカルクエスチョン(以下,CQ)は,①評価,②運動障害,③高次脳機能障害であった.脳腫瘍では進行性である場合が多いこと,全身状態が不良となる危険性が高いこと(特に転移性脳腫瘍)に注意する.頭頸部がんのリハのGLの作成におけるCQは10項目で,術後摂食嚥下障害,術後音声発話障害・代用音声獲得,放射線療法中・後の摂食嚥下障害・倦怠感,頸部リンパ節郭清術後の副神経麻痺に大別された.頭頸部がんのリハは手術の内容(切除範囲,再建内容)・術後創部の経過・放射線治療に影響される部分があるが,基本的には治療前からのリハ介入が望ましい.
  • 佐浦 隆一, 井上 順一朗, 牧浦 大祐, 冨岡 正雄, 西口 只之, 酒井 良忠
    2016 年 53 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
     造血幹細胞移植ではさまざまな要因により身体活動量が低下する.また,化学療法や放射線療法中・後にも身体機能が低下しやすい.これらは二次的な体力・活動,精神機能低下につながり,がん患者の生活の質(quality of life,以下QOL)は著しく低下する.そのため,早期からのリハビリテーション(以下,リハ)介入が重要である.がんのリハガイドラインでは,がん患者の運動機能面や精神心理面での問題,QOLを改善させるために早期からの適切な介入を推奨している.また,治療に伴う有害事象軽減にも運動療法や物理療法が有用である.そこで本項では造血幹細胞移植,放射線・化学療法中・後のがん患者に対するリハについて,具体的な内容を概説する.
  • 水落 和也
    2016 年 53 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
     エンドオブライフケアは,がんに限らず難治性疾患,加齢に伴う人生の最終段階での臨死患者に対するケアの総称である.エンドオブライフの時期においても患者の機能障害を改善あるいは代償し,生活機能を可能な限り高く維持し,社会参加を保つために運動機能低下の予防,運動機能の維持・改善が必要であり,生活機能を保つことで,個人の自律性と人間の尊厳を保つことができる.そのためにリハビリテーションの果たす役割は大きい.
     がんのリハビリテーションガイドラインでは,在宅進行がん,末期がん患者に対するサーキットトレーニングを中心とした運動療法,呼吸法指導,患者教育プログラム,多専門職治療セッションなどが推奨されている.
  • 宮越 浩一
    2016 年 53 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
     がん治療の進歩や,リハビリテーションの必要ながん患者の増加により,急性期病院におけるがん患者の治療は変化しつつある.治療成績を最良のものとするためには,生命予後の改善のみでなく,ADLやQOLの向上が必要である.これには多職種の連携が重要であり,効果的かつ効率的な連携のためには知識や技術といった「テクニカルスキル」のみでなく,「ノンテクニカルスキル」であるチームワーク能力が必須となる.今後の学校教育や,各医療機関や関連学協会での卒後教育の充実が必要といえる.
  • 松本 裕美子
    2016 年 53 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
     がん終末期患者に対し,退院支援・退院調整が浸透してきている.退院支援・退院調整は看護の力を発揮できる場面の一つであり,院内多職種との連携,地域の医療・介護スタッフとの丁寧な連携が必要不可欠である.リハビリテーションもまた重要な因子であり,がん終末期患者においてよりいっそう拡充していくことが望まれる.
教育講座
連載
高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの技術
ISPRM招致活動記録
原著
  • 藤谷 順子, 飯島 正平
    2016 年 53 巻 2 号 p. 164-171
    発行日: 2016/02/18
    公開日: 2016/03/11
    ジャーナル フリー
    目的:臨床的に妥当なとろみ液の粘度測定条件の検討.方法:医療従事者をパネリストとして,5段階の濃度の水飴を粘度が高いと感じた順に並べさせた後,1.4%および0.95%キサンタンガム系増粘剤(XAN)溶液,1.4%グアガム系増粘剤(GUA)溶液について,粘度が近いと感じる水飴を回答させた.試験は水飴の濃度を変え2回行い,計126名の回答を得た.結果:5段階の水飴濃度の識別の正答率は77%であった.5段階の水飴および2段階のXAN溶液を識別できたパネリストでは,ずり速度11 sec-1未満相当の回答はほぼなく,最頻値は1.4%XAN溶液で61~140 sec-1,0.95%XAN溶液で80~240 sec-1,1.4%GUA溶液で210~620 sec-1相当の回答だった.結論:粘度測定条件として,本邦で頻用されてきた3 sec-1ではなく,少なくとも50 sec-1以上が臨床的に意義をもつと考えられた.
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