構成要素が並列に動作するシステムを記述・モデル化するための枠組を与える.この枠組は,ソフトウェアシステムを新たに設計・実現する場合にも有効である.この枠組とともに与えられるプログラミング言語はプロトタイピングに用いることもできる.
Orient84/Kは,知識システムを含むアプリケーションを記述するための並行オブジェクト指向知識表現言語である.本言語は,知識システムをモデル化する方法として提案したDKOM (Distributed Knowledge Object Modeling)を基に設計されている.Orient 84/Kのオブジェクトは,i)オブジェクト内の局所的知識を宣言的に保持するKB部(Knowledge Base part),ii)KB部を用いた推論の結果による行動(action)や,推論の戦略を決定する機能のような手続き的知識を保持する行動部(Behavior part),iii)他のオブジェクトとのメッセージ授受制御とKB部および行動部のデーモンを司るモニタ部(Monitor part),の3部分から構成される.
本論文は,Orient 84/Kの言語機能について例を用いて詳細に述べることを目的としている.DKOMおよびOrient 84/Kの有効性を示すために,小児科エキスパート・システムのモデル化およびプログラム例を示している.
自然言語処理システムや問題解決システムを構築する際には,いわゆる「常識」とよばれる経験的知識をどう表現するかが大きな問題になる.本論文では,このような知識のうちで,特に,経験的な世界とシステムの持つ宣言的な知識を結合するための手続き的知識に着目し,このような知識を表現するのに適した知識表現言語として開発された,階層構造を持つプロダクション・システムを埋め込むことのできるオブジェクト指向型言語OPHELIAについて述べる.さらに,OPHELIAによる常識的知識の表現の応用として,日本語処理とニュートン力学の問題解決における手続き的知識としての「常識」を,OPHELIAの上に表現したシステムについて述べる.日本語処理システム(HELPERとよばれる)は,現在,会話文のような文法的でない文の解析システムとして用いられている.また,ニュートン力学問題解決システム(PQRSとよばれる)は,現在,摩擦力を含む問題を,定性的推論と定量的推論を組み合わせて解くことができるようになっている.上の意味での常識的な知識は,HELPERでは,文法・意味解析のための階層構造化されたプロダクション・システムとして,またPQRSでは,問題構造の表現変換(representational shift)に基づいて問題解決を行うための階層的プロダクション・システムとして,OPHELIA上にインプリメントされている.
オブジェクト指向におけるソフトウェアの部品化再利用の問題について述べる.部品の単位としてはクラスを採用する.部品として用意されているクラスおよびそこで定義されているメソッドについての知識を持たないユーザに対して再利用の支援を行うことを目的としている.そのために「知人/構成変数モデル」というモデルを考案した.このモデルではオブジェクトに型を導入し,またオブジェクトの状態に注目してオブジェクト間の関係とメソッドの性質についてのいくつかの定義を行っている.これらの関係,性質をキーにしてクラス部品をライブラリから検索する.言語としては,上記のモデルを実現するように我々が設計したものを利用する.
VEGAMSはグラフィック画面上でのハードウェアのモデル化を支援するオブジェクト指向言語である.デジタルシステム設計時に必要とされる様々なレベルのモデル化を,オブジェクト指向方式により統一的に扱うことを目標としている.このため「配線によるローカルなデータの流れ」が記述できるよう,オブジェクトはポートを持つとともにポート間の接続を介したメッセージ転送機能があり,これに応答するメソッドをポートごとに定義できる.また「時刻を陽に指定したタイミングと並行性」を自然にモデル化できるよう,メッセージの転送時刻を指定する遅延メッセージ機能を持つ.本論文では,構造レベルハードウェアのモデル化について回路例により考察し,上記機能によるモデル化手法について述べる.
属性文法では,意味記述と構文規則とを一体として一つの文法で表わし,プログラミング言語の意味記述を形式的に行なうことができる.本論文では,自然言語処理を目的とした属性文法評価システムについて述べる.まず我々は,属性文法における各文法規則に適用条件が記述できるように拡張した.属性文法の評価法の一つにLR構文解析中に属性評価を行なう方法がある.この方法ではスタック上の合成属性値を使って,構文解析と同時に属性評価が可能である.我々の評価器では,この方法により,評価可能な適用条件を可能な限り評価し導出木を最小限生成し,その木の上で全ての属性評価を行なうものである.この属性文法評価器の応用として英語文の構文解析システムを作成したが,あいまい性の多い自然言語に対しても我々の方法が十分有効であることを確認した.