ソフトウェアが大規模化・複雑化するに従い,その信頼性は低下し,開発工数は増大する.仕様に矛盾がないことやソフトウェアが仕様通りに実現されていることの的確な検証は,開発するソフトウェアに高い信頼性を与えるだけでなく,結果として開発工数の削減をもたらす.開発するソフトウェアが大規模で複雑であるほど,信頼性を確保するための検証が必要となる.本稿では,情報処理振興事業協会(IPA)で開発されている実行可能な形式仕様言語CafeOBJによる,Z仕様の検証支援系の実現について報告する.これにより,Zで仕様記述されたソフトウェアについての様々な検証に,計算機による支援が可能になる.
自然言語理解は,多様な制約領域,処理モジュール,処理手段(制約充足および制約緩和)を含んでいるような問題領域である.さらに,自然言語処理で取り扱わなければならないデータの量は増大しており,既存の自然言語処理リソースの再利用も考える必要がある.本論文においては,ICOTで開発された異種分散協調問題解決システムHELIOSの自然言語理解への応用について述べる.HELIOS上での自然言語理解は,各処理モジュールが互いに交渉し合うマルチエージェントとして実現される.最初に,HPSGやJPSGといった制約ベース文法の処理を考える.制約ベース文法の枠組では,自然言語理解は素性構造の単一化,時制論理,包摂関係といった多領域にまたがった制約の解消ととらえることができる.次に,ガーデンパス文認識や,意味と構文制約のインタラクション,曖昧性解消といった自然言語理解において生じる現象に対して,制約緩和の観点からHELIOS上の処理について述べる.
本稿では,確率的なアプローチによる心理言語学の原理に基づいた曖昧性解消法を提案する. 「三単語共起確率」と呼ばれる条件つき確率を定義し,解釈における三単語共起確率の幾何平均をその解釈の「語彙尤度」と定義する.「距離確率」と呼ばれる条件付き確率を定義し,解釈における距離確率の幾何平均をその解釈の「構文尤度」と定義する.解析ではまず語彙尤度それから構文尤度を使って解釈の優先順位を決める.この曖昧性解消法を用いて前置詞句と動詞並列表現による曖昧性を含む文を解析したところ89.2%の正解率が得られた.
インターネット上では数多くのフリーソフトウェアが流通している.その中には,グラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)の作成に役立つものや,研究内容のプレゼンテーションに役立つものも少なくない.GUIの作成は,開発したソフトウェアの使いやすさに大きく影響し,わかりやすいプレゼンテーションは研究内容を理解してもらう上で重要である.本稿では,こうした視点からいくつかのフリーソフトウェアを取り上げ,著者がどのように活用しているか説明する.