本稿では,二言語間の翻訳という領域における,発見的学習,すなわち,与えられた実例(対訳)と反例(誤訳)の集合から翻訳を実行する規則集合を完全自動生成する方法について述べる.まず,二言語間の双方向翻訳を行う規則集合と対訳を生成/受理する文法の二面性をもつ翻訳文法という知識表現を開発し,次に,それが文法推論の枠組で学習できることを示した.翻訳文法の学習では,与えられた実例と反側の集合からそれを満足する翻訳文法を生成する一括学習方式と,新たに与えられた実例や反例に対して,それを満足するように翻訳文法を修正する順次学習方式を開発した.日英翻訳文法を生成する実験において,学習機構は,二言語間の単語の対応関係や名詞,形容詞などのグループ,名詞句のグループや構造を発見し,体系化した.この2つの学習方式により,実例や反例による規則集合の完全自動生成/修正の道が開けた.
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