PostScript言語は,もともとはレーザプリンタでマルチメディア情報を出力するための一種のページ記述言語として,1984年にAdobe社により発表されたプログラム言語である.この言語は,プリンタ側からみればFORTHなどによく似たスタック・ベースの制御用言語だが,ワープロやレイアウト用ソフトウェアにとっては,出力の形式を記述するひとつのデータ形式になっている.つまり,データ=プログラムの形となっているところにPostScriptの大きな特徴がある. このPostScriptのもうひとつの意義は,応用ソフトウェアの出力形式およびプリンタの制御方式を統一させるところから,卓上出版用のソフトウェアおよびハードウェアの標準化や互換性の向上をうながす面をもつことである.この言語形式はApple社のレーザライタおよびAldus社のPageMakerプヮグラムでその有効性が実証されて以来,業界標準のひとつになってきた. 現在PostScriptについては,日本語機能およびマルチウィンドウ機能のサポートという二つの側面で拡張が行われつつある.このほか,図形出力やネットワークにおけるマルチメディア情報の伝送をPostScriptで行うことも試みられている.今後期待されるのは,マルチメディア情報の画面表示やプリンタ出力がこのPostScriptの採用で標準化されることである.
米澤らのABCL/1を,手続きおよび関数をオブジェクトと統一するルーチンオブジェクトを導入することにより拡張しプロセスの世界を作り出すことを可能にしたC言語版並行オブジェクト指向言語ABCL/c+を設計し,オペレーティングシステム核を記述することを試みた.オペレーティングシステム核の素材としては,ベル研究所のD. Comer等によって開発されたオペレーティングシステムXINUを用い,これをABCL/c+で全面的に書き換えることを行った.その結果,並行オブジェクト指向言語を用いると,きわめて見通しのよいオペレーティングシステム核が作れることがわかった. 本論文では,まず,ABCL/c+について述べ,次に,具体例を用いてABCL/c+によるオペレーティングシステム核の実現方法を示し,それらの結果について検討する.
多くの知識を必要とする問題や,独立した複数の個体がそれぞれ知識を持つような問題は,知識自体のモジュール化や分散化を必要としている.こうした理由から,複数のルールベースをそれぞれオブジェクトとして扱うことのできるオブジェクト指向ルールベース・プログラミングを提案する.このプログラミング・スタイルは,ルールベース・プログラミングの一つの問題点として指摘されてきた複数のプロダクション・ルールのモジュール化をオブジェクト指向の枠組で実現するだけでなく,分散型知識処理に適したより柔軟なルールベース・プログラミングを可能にする.本論文ではプロダクション・ルールの継承機能を利用した例と,ルールベースを分散させた例について紹介し,オブジェクト指向ルールベース・プログラミングの機能,効果,特徴などについて述べる.
項書き換え系は,書き換え規則の集合である.それの書き換えを実行するインタプリタ(変数を含まない項を入力として,その正規形を出力とすることから,以下0型インタプリ夕と呼ぶ)は,採用するリダクション戦略によって一意的に決まる.しかし,リダクション戦略が正規化戦略でなければ,項の正規形が存在してもインタプリタはその正規形を求められない,本論文では正規化戦略を有するインタプリタの実現法の一つとして,正規化戦略を採用したO型インタプリタの働きを模倣するメタインタプリタ(E-TRS)を提案する.E-TRSは定義が項書き換え系で与えられているが,どのような戦略をもつインクプリ夕でE-TRSを実行しても,インタプリ夕で正規形が求まる場合には,その正規形を求めることができる. また,E-TRSは書き換え規則を変化させながらリダクションさせることができるため,項書き換え系を用いた種々の応用プログラムが書きやすくなる.我々は,このメタインタプリタをLispを用いて実現した.