従来,ネットワークを実装する場合には,ネットワーク参照モデルに基づく,プロトコルレイヤを単位としたモジュール化を行ってきた.しかし,この実装モデルでは,新たなプロトコルをサポートしたり,既存プロトコルを変更する場合,モジュールを直接書き換えなければならない.このため,バグの混入などの大きな影響を,既存のモジュールに与えてしまう. 本論文では,バーチャルコネクションをモジュール単位とする,コネクション指向型実装モデルを提案する.コネクション指向型実装モデルは,上記の問題点を解決し,プロトコルの拡張および変更に対して柔軟なネットワークシステムの構築を可能とする.また,この実装モデルには,オブジェクト指向の枠組みを用いて容易に実現できるという利点もある. これらの,コネクション指向型実装モデルの有効性を検証するために,AIワークステーションELIS上で,核言語TAOのオブジェクト指向機能を用いてTCP/IPネットワークを実現した.本ネットワークシステムの特徴は,プロトコルの特徴である階層性を考慮し,各プロトコルレイヤに対して一つのクラスを対応させ,下位プロトコルレイヤをスーパークラスとしたオブジェクトとしてネットワークストリームを実現したこと,および,一つのオブジェクト上で,複数のプロセスが走行して処理が行われることである.
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