廃棄物資源循環学会誌
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23 巻, 4 号
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巻頭言
特集 小型家電と金属資源リサイクル
  • 森下 哲
    2012 年 23 巻 4 号 p. 260-267
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー
    2012 (平成24) 年 1 月の中央環境審議会答申を踏まえ,“使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律” が,同年 3 月 9 日に閣議決定,同日付で国会に提出され,8 月 3 日に成立した。本法に盛り込まれた使用済小型電子機器リサイクル制度は,“誰かに義務をかけるのではなく,関係者が協力して自発的に回収方法やリサイクル実施方法を工夫しながら,それぞれの実情に合わせた形でリサイクルを実施する促進型の制度を目指すべきであり,できるところ (品目・鉱種・地域) からリサイクルの取り組みを開始し,回収率を増やしながら徐々に品目・鉱種・地域を拡大させることが望ましい。”との答申の基本的な考え方を踏まえて制度設計されている。本稿では,同制度の概要を紹介するとともに,その円滑な履行を確保し,循環型社会の形成を進めるために今後強化が必要とされる取り組みについて考察する。
  • 浅利 美鈴, 酒井 伸一
    2012 年 23 巻 4 号 p. 268-279
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー
    小形電池に着目し,その化学性状および使用・廃棄実態,小型家電製品からの取り外しの実態を把握し,回収・リサイクル検討に向けた基礎的知見を得ることを目的とした。そのために,小形電池の化学性状把握を試みると同時に,小型家電製品中の電池保有や廃棄時の電池取り外しに関する消費者アンケートを行い,これらの結果より,国内における小形電池に含まれる金属量を推定した。
     その結果,小形電池にはレアメタルを含むさまざまな物質が含まれることが確認された。また,消費者アンケート調査の結果,小型家電製品および小形電池の保有状況および個数が明らかになったと同時に,廃棄時,7 割以上は小形電池を取り外していないこと,小形二次電池の回収・リサイクルに関する法律やシステムの認知度は 3 ~ 4 割であることなどが明らかになった。また,家庭で保有されている小形電池に含まれる金属量を推定すると,たとえばLiは 516 ton,Co は 3,900 ton,Ni は 4,700 ton,Cd は 1,600 ton となり,Li, Co, Ni は年間国内需要量の1 ~ 4 割,Cd も同程度にあたり,回収・リサイクルの意義が確認された。
  • 寺園 淳, 吉田 綾
    2012 年 23 巻 4 号 p. 280-294
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー
    使用済家電の国内フローや中古品輸出量の現状と課題を明らかにするために,家電 4 品目に加えて携帯電話などの小型家電を取り上げて,国内フローの検討状況を考察し,中古品輸出の推定方法の検討と結果を議論した。家電 4 品目の国内フローは,買替促進策の影響を考慮した排出台数の推定が課題であり,消費者や小売業者からの引渡し先などについて,再検討を行うのが望ましい。また,中古品輸出量の推定のために,貿易統計やマスバランス (国内フロー) を利用した方法などをレビューした。中古品輸出量の把握のためには,貿易統計は品目によって限界があることを考慮し,できるだけ国内フローによる推定も行って補足するのが望ましい。2011 年の中古のブラウン管 (CRT) テレビの主たる仕向け先はベトナム,フィリピン,マカオであり,携帯電話の場合は香港,アフガニスタンであった。資源保全と不適正輸出防止の観点から,今後も輸出動向には注意する必要がある。
  • 東條 なお子
    2012 年 23 巻 4 号 p. 295-302
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー
    2003 年初頭に発効した EU 廃電機・電子機器指令 (WEEE 指令) に基づく EU 加盟各国の国内法にのっとって進められてきた,欧州の小型家電の回収・リサイクルは,ハイテク産業維持のために必要不可欠な諸資源の供給源としての可能性が認識されるにつれ,2000 年代後半以来,環境政策・産業政策双方の枠組みの中で重要視されるようになった。諸資源確保の重要性は,2012 年 6 月に可決された改正 WEEE 指令に先立つ検討過程においても認識され,現行 WEEE の実施の中でうまくいっていない回収率の向上をはかって新たに付け加えられた諸規定をはじめ,さまざまな改正点に反映されている。本稿では,欧州におけるリサイクルと資源確保をめぐる諸政策の動向を概観するとともに,リサイクル・資源回収に先立つ第一歩である回収を中心に,現行 WEEE 指令の実施状況,指令改正過程における諸論点および加盟各国独自の取り組みを紹介する。
  • 村上 進亮
    2012 年 23 巻 4 号 p. 303-310
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー
    本稿では,使用済小型家電製品のフローを概観し,現状の問題点を明らかにした上で,その解決法について回収・収集・運搬の側面から検討を行った。現状のフローを見たとき,大きな問題点は 3 つある。それは,退蔵へ向かう量,リサイクルされずに最終処分される量,そして海外向けの見えないフローの 3 つのフローが大きいことである。これに対応するべく,効率的なリサイクルシステムを構築しなければならないが,そのフローの初期段階を担う回収・収集・運搬の効率化は必要不可欠である。しかしながら,地域によって効率的な収集システムのあり方が異なることは,そのシミュレーションを通して明らかである。また対象となりうる製品の変化も非常に早い。よって,すべての関係者の協力の下,品目の指定から,こうした物流システムを含め,さまざまな変化に柔軟に対応可能な効率的なシステムの構築が望まれることが明らかになった。
  • 大木 達也
    2012 年 23 巻 4 号 p. 311-318
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー
    わが国のレアメタルリサイクルを促進するため,中間処理技術の役割と課題について展望した。レアメタルをリサイクルするには,物理選別による中間処理を製錬工程前に施し,銅や貴金属と分離しつつ,レアメタル元素を 1 次濃縮することが不可欠である。中間処理工程は,廃製品を解体,粉砕,選別するプロセスからなるが,レアメタルは製品中に局所的に使用されているため,現状ではわが国でも手作業が多用されている。その機械化,自動化を進め経済的なリサイクルを実現するため,粗粒段階での単体分離達成という基本概念をより厳格に実施することが必要となる。また,本報では,タンタルコンデンサ,ネオジム磁石,希土類蛍光体を例にとり,製品個別に克服すべき課題についても紹介した。これらわが国の資源循環に関する課題は,最終的には中間処理技術だけの問題ではなく,製品設計から,回収,再資源化に至る一連のシステムの中で最適化することが必要である。
  • 大塚 直
    2012 年 23 巻 4 号 p. 319-326
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー
    小型家電リサイクル法に基づく制度の意義は,第 1 に,環境制約・環境負荷の低減のみでなく,資源の有効利用・確保を目的とするものであり,従来の循環に関わる法体系の中で新たな目的を追加したことにある。第 2 に,本制度は自主性を尊重した促進法を目指していることである。第 2 点から,本法案に基づく制度が成功するかは市町村,認定事業者,小売業者がどう活動するかにかかってくる。そのため,①認定事業者が採算がとれなくなることや市町村に過度の負担となることができるだけないよう,②仮に市況の変化によって認定事業者の採算がとれなくなった場合にも一定期間は制度を継続できるようにする必要がある。また,第 2 点のように,促進型の制度であっても特定の者に費用負担義務を課する場合と同程度の効果が得られるのか,仮に効果が得られにくかったとした場合その程度の効果で十分といえるかは,5 年後の見直しの時期に判断されるべきであろう。
平成24年度廃棄物資源循環学会研究討論会報告
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