廃棄物資源循環学会誌
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34 巻, 1 号
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年頭所感
特集:北極域における環境の現状― 廃棄物処理,プラスチックを中心に―
  • ―北極域への示唆―
    古畑 真美
    2023 年 34 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

    2022年3月,国連環境計画(UNEP) の意思決定機関である国連環境総会(以下,UNEA)において,決議「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際文書に向けて」が採択され,海洋環境におけるプラスチック汚染に対処するための条約の作成に向けた国際社会の具体的な行動が開始された。プラスチック汚染を終わらせるための新条約とは一体どのようなものなのか。これまでに作成された環境関連条約におけるプラスチック汚染への対処の現状,最近のバーゼル条約プラスチック改正の意義,そして,より一般的な国際環境法の諸原則の適用可能性等を検討することにより,プラスチック新条約策定に向けて必要となる要素や残された課題が明らかになる。こうしたプラチック問題に対するグローバルな国際法政策的対応の北極域への示唆について考える。

  • ――自然科学的観点から――
    豊島 淳子
    2023 年 34 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

    北極を含む海洋環境におけるプラスチック汚染問題に対する社会的な関心の高まりを受け,北極域におけるプラスチック汚染の研究が近年急速に進んでいる。その結果,北極におけるプラスチック汚染が広範囲に広がっていることが確認され,その汚染経路や生物に対する影響も徐々に明らかになっている。本稿では,北極のプラスチック汚染について,最新の知見をレビューし,さらに今後の展望について述べる。

  • 近藤 祉秋
    2023 年 34 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

    北極先住民コミュニティでの廃棄物処理は,人間社会と自然環境,両面での変化を受けており,彼らのウェルビーイングに対する脅威となりうる。本稿では,筆者が2019年8月に訪問したカクトヴィック村で見聞した内容と各種報道で得られた情報をあわせて報告する。同村では,解体されたホッキョククジラの骨や肉片を目当てにホッキョクグマが沿岸の集落に誘引され,それが観光資源化している一方で,村内でのごみ漁りや住宅への侵入というリスクを生みだしている。本稿で論じた事例は,機械類やプラスチック製品のみならず,有機物(生ごみ) の廃棄に関しても注意を払う必要があることを示している。また,関連して,本稿で示した民族誌データは,ごみ捨て場(集積場) でごみがどのように扱われているかという点だけではなく,野外での廃棄や大型ごみ容器での一時保管に関しても検討の対象とするべきであることを示唆している。

  • 石井 花織
    2023 年 34 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

    米国アラスカ州には,先住民が暮らす小規模な村が多数遠隔地に存在する。アラスカ遠隔地における生活廃棄物処理は,輸送コストや気候変動の影響等の地理的側面の課題に加えて,既存の法制度の枠組みで対処することが困難であるという社会的側面の課題も存在する。そのため,制度上の責任主体である村の統治組織に加え,国際機関や先住民組織,NPO等の外部主体が重要な役割を果たしている。このような状況下では,支援側だけでなく当事者側の問題認識について確認することが必要だと考えられる。住民を対象とした質問紙調査の結果,支援側が指摘してきた事項との大きなズレはみられなかった一方,(1) 問題の種類の地域ごとの多様性や,(2) 動物の遺骸の取り扱いにおける州の規制と先住民の規範の違い,(3) 生業活動の変化と処分場の関連があることが示唆された。ローカルな問題とされてきた村の廃棄物処理を北極域の問題として再定義することは,国際社会の関心を高めるうえで意義があると同時に,今後は地域ごとの違いや当事者の問題認識が議論の重要な対象となる。

  • 東條 安匡, 林 直孝, Simon Koots
    2023 年 34 巻 1 号 p. 32-41
    発行日: 2023/01/31
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

    北極域には,人口が数百人の小規模集落が多数散在している。他の地域と通じる道路はなく,主要な移動や輸送の手段は船舶や航空機である。元々は先住民が自然と共生する伝統的な生活を営んでいたが,今日ではさまざまな物品が流入し,欧米風の生活が一般的になっている。結果的にわれわれの社会と類似の廃棄物が発生するが,輸送手段が限られていること,他地域とは離隔していることなどの点から,すべての廃棄物が無造作に投棄もしくは野焼きされてきた。グリーンランドも例に違わず,廃棄物の処理,処分に多くの課題を抱えてきた。本稿では,グリーンランド国内での小規模集落における廃棄物処分の具体的な事例をいくつか紹介した後に,グリーンランド自治政府がこれまで取ってきた廃棄物管理政策を概観する。さらに2020年に策定された廃棄物処理計画2020-2031において大きな転換が今後の10年間に見込まれていることを示す。

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