廃棄物資源循環学会誌
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33 巻, 4 号
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巻頭言
特集:使い捨ておむつ
  • 松本 亨, 藤山 淳史
    2022 年 33 巻 4 号 p. 257-264
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー
    高齢化の進展とともに,使用済み紙おむつの排出量は年々増加傾向にある。使用済み紙おむつを再資源化する取り組みは端緒についたばかりで,ほとんど焼却処理されているのが現状である。本稿では,まず使用済み紙おむつの現状について,量的な側面と質的な側面から課題を整理し,国内外における使用済み紙おむつリサイクルの動向について概説した。次に,LCA を中心とした環境負荷の定量評価に関する研究事例を紹介した。さらに,近年,回収システム等に対して,利便性・効率性の向上とともに環境負荷低減という観点から情報通信技術の導入が実証された事例について紹介した。
  • 大下 和徹, 河井 紘輔
    2022 年 33 巻 4 号 p. 265-276
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー
    本稿では使用済み紙おむつの組成を整理するとともに,それらがごみ焼却処理に与える影響を評価した。まず,使用済み紙おむつの組成は,概してパルプ,プラスチック,高吸水性樹脂 (SAP) の混合物に 2~4 倍の尿由来の水分と Cl が加わったものとみてよく,この結果は,三成分や元素組成,発熱量,バイオマス度の分析結果からも裏づけられた。
     次に,2050 年までの,プラスチック類や厨芥類を中心としたごみ削減が進む一方で,大人用使用済み紙おむつが増加していく場合の焼却施設への影響を推定したところ,割合が増加しても,ごみ質低下や Cl 源としての影響は限定的であり,感染性廃棄物となるリスクの観点からも焼却が堅持されるべきと考えられた。ただし,高齢化率の高い地域では,使用済み紙おむつに起因する Na や化石由来 CO2 のごみ全体への寄与率が,各々最大で 50 %,23 % まで上昇することが予想され,リサイクルも選択肢の一つとなりうることが示唆された。
  • 石井 颯杜
    2022 年 33 巻 4 号 p. 277-285
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー
    高齢化に伴い,わが国における紙おむつの消費量は年々増加している。使用済み紙おむつの多くは焼却処分されているが,一部地域では殺菌等の衛生的処理をした上でパルプ等の再生利用や熱回収の取り組みが行われている。環境省では再生利用等の導入を検討する自治体への情報提供を目的として 2020 (令和 2) 年3月に使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドラインを公表した。ガイドライン公表後,自治体・民間事業者による実証事業や導入に向けた検討が行われており,紙おむつは再生利用等が可能であるという理解が広まるとともに関心が高まっているといえる。使用済み紙おむつの再生利用等が一般化した取り組みとなるためには,先進的な取り組みを行なっている自治体に次ぐ好事例が創出されるかが重要であり,紙おむつの再生利用等が当たり前の選択肢となる社会を目指し,再生利用等に向けた検討を後押しするための施策を引きつづき検討していく。
  • 吉村 利夫, 藤岡 留美子
    2022 年 33 巻 4 号 p. 286-291
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー
    紙おむつは 「育児と介護の必需品」 とされている一方で,使用後は多量の水分を含んでいるにもかかわらず,ほとんどの自治体で焼却処理がなされており,二酸化炭素排出量からも環境負荷の大きい処理方法となっている可能性がある。これに代わる処理方法として,使用後の紙おむつから吸水部分 (吸水紙,綿状パルプ,高吸水性樹脂からなる) のみを分離して水洗トイレに流し,残りの水分を含まない紙おむつ本体を焼却する方法が考えられる。これを実現するためには高吸水性樹脂に生分解性を付与する必要がある。このような背景から,本稿では生分解性を有する高吸水性樹脂の研究開発状況を概説する。これまでにポリアミノ酸系や多糖類系で多くの研究例があり,それぞれの具体例を紹介する。
  • 留中 政文, 和田 充弘
    2022 年 33 巻 4 号 p. 292-296
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー
    志布志市は,地域内に焼却施設がないため,隣接する大崎町とともに,一般廃棄物最終処分場において埋立処分を行なっている。最終処分場の埋立ごみを減らすため,「混ぜればごみ,分ければ資源」 を基本に,27 品目の分別収集を実施し,リサイクルしている。埋立処分量は減少しているものの,埋立ごみの約 2 割を使用済み紙おむつが占めていることから,使用済み紙おむつの再資源化が課題となっている。そこで,2016 (平成 28) 年から官民連携して,使用済み紙おむつのリサイクル実証試験を開始し,地域で得られた資源を地産地消する実証試験に取り組んできた。この取り組みにより,地域の課題を解決し,最終処分場の延命化と二酸化炭素排出量の削減に貢献する。
  • ――おむつ持ち帰りからみる現状と課題――
    三浦 真希子, 澤村 暢
    2022 年 33 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー
    保育所における使用済み紙おむつの処理方法については,国や自治体で明確な規定はない。本研究では,保育所における使用済み紙おむつの処理の現状について明らかにすることを目的とした。
     質問紙調査の結果から,使用済み紙おむつの持ち帰りをしている保育所は 26.5 % (22/83) であった。持ち帰りをやめた場合,保護者や保育士の負担が軽減されるなどの利点がある一方で,保護者がおむつの使用枚数や便から子どもの体調管理ができない,費用面の問題,保管スペースや臭いの問題等が生じることがわかった。おむつ交換時の汚染状況調査からは,持ち帰りをしているかどうかにかかわらず,周囲への汚染が生じており,マニュアルを作成するなど施設で交換手順を標準化させる必要性が示唆された。
     本研究から,保育所での使用済み紙おむつ処理の現状と課題が明らかとなった。今後は,廃棄物処理および,感染防止の双方の視点から対応することが求められる。
  • 内田 陽子, 西本 祐也
    2022 年 33 巻 4 号 p. 303-310
    発行日: 2022/08/10
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー
    超高齢社会のわが国では要介護高齢者や下部尿路症状をもつ高齢者も増加し,紙おむつの需要は高い。おむつを装着すると不快感があり,かつ,自尊心を傷つけられる可能性がきわめて高く,毎日の生活の質を損なうものである。排尿日誌や排便日誌を用いた適切な下部尿路症状や便秘・下痢のアセスメントが不必要なおむつの発生を抑制できると考えられる。また,おむつ外しの取り組みは報告されているが,完全に普及はされてない。筆者らの研究では,入院中の高齢患者に対して,おむつ外しが可能か,まずはアセスメントし,次にトイレ誘導や紙おむつに代わるパンツやライナーの選択,リハビリ,排便コントロール等の包括的な排泄ケアを実施した。その結果,対象とした高齢者全員が紙おむつからの脱却が可能となった。入院中におむつ外しを判断し,排泄ケアを多職種協働で実施することが,退院後のおむつ装着予防につながり,おむつ使用量の抑制につながる。
令和4年度廃棄物資源循環学会・春の研究討論会
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