本稿では使用済み紙おむつの組成を整理するとともに,それらがごみ焼却処理に与える影響を評価した。まず,使用済み紙おむつの組成は,概してパルプ,プラスチック,高吸水性樹脂 (SAP) の混合物に 2~4 倍の尿由来の水分と Cl が加わったものとみてよく,この結果は,三成分や元素組成,発熱量,バイオマス度の分析結果からも裏づけられた。
次に,2050 年までの,プラスチック類や厨芥類を中心としたごみ削減が進む一方で,大人用使用済み紙おむつが増加していく場合の焼却施設への影響を推定したところ,割合が増加しても,ごみ質低下や Cl 源としての影響は限定的であり,感染性廃棄物となるリスクの観点からも焼却が堅持されるべきと考えられた。ただし,高齢化率の高い地域では,使用済み紙おむつに起因する Na や化石由来 CO
2 のごみ全体への寄与率が,各々最大で 50 %,23 % まで上昇することが予想され,リサイクルも選択肢の一つとなりうることが示唆された。
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