廃棄物資源循環学会誌
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34 巻, 5 号
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巻頭言
特集:プラスチックやごみ排出をとりまく最新動向
  • 矢野 克典, 杉本 和也
    2023 年 34 巻 5 号 p. 311-316
    発行日: 2023/09/29
    公開日: 2024/02/08
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    プラスチックの製品の設計から廃棄物の処理に至るまでのライフサイクル全般を対象に,あらゆる主体による 3R+Renewable の取組を促進するプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律 (プラスチック資源循環法) が施行された。同法では市町村の分別収集・リサイクルや,事業者の環境配慮設計の取組促進,特定プラスチック使用製品の使用の合理化,自主回収や再資源化等に関する措置が定められ,さまざまな主体による資源循環の動きが広がっている。プラスチック資源循環戦略で定められたマイルストーンの実現に向けて,政府としては,先進的モデル形成支援事業や特別交付税措置による自治体支援,再生可能資源への転換・社会実装化に向けた実証事業やリサイクル技術・設備の高度化に向けた民間事業者の設備導入への支援等により,国内における処理体制の強化を図るとともに,地方環境事務所等による各地域の事情に応じた取組支援を推進し,プラスチック資源循環の取組を加速していく。

  • 澁谷 玲, 片柳 豪太, 宮本 健一
    2023 年 34 巻 5 号 p. 317-325
    発行日: 2023/09/29
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,現在開発中のパウチの水平メカニカルリサイクルについて解説した。日本ではパウチは主につめかえ用として多く使われており,ボトルに比べ使用するプラスチック量が少ないという利点があるものの,数種類のプラスチックの積層で構成されているためリサイクル性に劣る欠点があった。そこでわれわれは,パウチのメインプラスチックである線形低密度ポリエチレン (LLDPE) の水平リサイクルを目指し,異物を除去する技術 (金属検出機によるアルミ箔の除去,レーザーフィルター (LF) によるポリアミド (Ny (ナイロン)),ポリエチレンテレフタレート (PET) の除去) と,残った異物を無効化する技術 (Ny,PETの相溶化,フィルム成形条件の最適化,容器層構成の最適化) の開発を行なった。その結果,つめかえ用パウチとしての必要十分条件を達成することができ,2023年5月に本再生材を用いたつめかえ用の衣料用洗剤を上市することができた。

  • 井出 陽一郎
    2023 年 34 巻 5 号 p. 326-333
    発行日: 2023/09/29
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル 認証あり

    筆者らは,ブロックチェーン技術を活用し,リサイクルプラスチックのトレーサビリティ (追跡可能性) が担保できるデジタルプラットフォーム構築を目指し,プロトタイプを開発して実証実験を行なっている。消費者のリサイクルに対する意識・行動に対してアプリケーションが与える影響について検証したところ,商品のリサイクル率や来歴情報は,事業者のみならず消費者にとっても関心事であり,消費者が商品を安心して購入する際の基準の一つになりうることを明らかにした。また,アプリケーションによる資源ごみ回収活動の記録・可視化は,消費者のリサイクルに対する意識や行動を促すきっかけになりうることも確認した。2023年度にはコンビニエンスストアや飲料メーカー等と連携して,ペットボトルの回収ボックスを実店舗に設置した実証実験を行う計画である。

  • 中野 裕
    2023 年 34 巻 5 号 p. 334-341
    発行日: 2023/09/29
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル 認証あり

    わが国では少子高齢化や生産年齢人口の減少が進展する中,人手不足の解消,働き方改革への貢献,生産性の向上等の社会課題を解決に向けて,製造業の生産現場,医療・介護現場,農業・建設・インフラの作業現場等の幅広い分野で,ロボット技術の導入が進んでいる。こうした中,ごみ処理分野においても安定的な事業継続や効率化が求められており,AI技術やロボット技術は有効な解決策の一つとして活用されつつある。

     当社は,資源化施設の手選別作業に着目し,作業員の負荷軽減や,より人の関与が必要な業務へのリソースシフトを目的として,協働ロボットを適用したAI搭載型資源ごみ選別作業支援システムを開発し,導入提案を進めている。本稿ではその取り組みについて紹介する。

  • 鈴木 隆博
    2023 年 34 巻 5 号 p. 342-346
    発行日: 2023/09/29
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル 認証あり

    イオングループ (イオン) が地域に根差した小売業としてお客さまとともに長年取り組んできた,「買物袋持参運動」や店頭での資源回収は,身近な環境保全活動として広く定着している。地域のお客さまとともに新しいライフスタイルを構築することは,お客さまとのタッチポイントをもつ小売業の強みであり使命でもあると認識している。

     2021年5月より,使い捨てプラスチックのさらなる削減を目指し,繰り返し使えるリユース容器を利用した新たな循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」に参画している。Loop は,全体を管理・運営している Loop Japan (同),耐久性のある容器を開発し商品の充填・再充填を行うメーカー,販売や容器回収の受け付けを行う小売が連携して行う取り組みであり,2023年3月現在,イオンでの取扱商品は,メーカー11社18品目となり,12都府県・100店舗で展開している。2021年5月~2023年6月の期間で集計したところ,削減したプラスチックの量は 2,247 kg であった。

     現時点では,プラスチック削減への寄与度は限定的である一方,新しい買い物スタイルへのチャレンジということで,社会的な関心は非常に高い。

     事業規模の拡大による回収・洗浄拠点増による効率化,容器回収率の向上等,本取り組みで明らかになった課題をクリアし,「捨てない」ライフスタイルを支える仕組みとして,社会実装を目指していく。

  • ―― ひょうごプラスチック資源循環コンソーシアム ――
    𠮷田 光方子, 大角 宗久, 隈部 康晴, 髙原 伸兒
    2023 年 34 巻 5 号 p. 347-354
    発行日: 2023/09/29
    公開日: 2024/02/08
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    兵庫県では,2022年度からプラスチックの使用削減・資源循環を推進するため,「ひょうごプラスチック資源循環コンソーシアム」として,県民・NPO・事業者・リサイクラー等,異業種の分野と連携し,4つのテーマ:①使用削減等,②水平リサイクル,③市町での効率的なプラスチック資源循環,④行動変容の取り組みを展開している。

     プラスチックは,便利で耐久性のある特性から我々の生活で広く使用されているため,テーマ①~③を進めるには,県民・事業者等の理解と協力が不可欠である。これらに共通するテーマ④の行動変容が極めて重要であり,いかにごみ問題を自分事として捉え行動へとつなげていくかという観点から,本県では一手法として SNS ピリカを用いた散乱ごみ回収状況の見える化の取り組みを進めている。

     本稿では,ひょうごプラスチック資源循環コンソーシアムの概要を示し,本県における SNS を活用した散乱ごみ回収状況の見える化の取り組みを紹介する。

  • 石村 雄一
    2023 年 34 巻 5 号 p. 355-363
    発行日: 2023/09/29
    公開日: 2024/02/08
    ジャーナル フリー

    廃棄物処理分野においても,経済学の視点や計量経済学の手法を用いて,住民によるごみ減量化やリサイクル行動のメカニズムを解明するための研究が広まっている。住民にとって減量化や分別促進のための取り組みは強制力のあるものではなく,その多くが人々の自発的行動に依存している。それにもかかわらず,これまでの日本では一般廃棄物の減量化と分別が進展し,現在の排出量は過去50年間で最も低い値となっている。住民によるごみ減量化やリサイクル行動の動機について,これまでの経済学分野における研究では,ごみ袋有料化やデポジット制度等による「経済的動機」,分別やリサイクル行動に関する「機会費用」,住民の環境保護や社会貢献に対する「規範的意識」等の要因が着目されてきた。そこで本稿では,それらの要因が住民の減量化やリサイクル行動にもたらす影響について整理し,この分野における今後の展望を示す。

環境省・廃棄物資源循環学会共催シンポジウム報告
(一社)持続可能社会推進コンサルタント協会・廃棄物資源循環学会共催セミナー報告
廃棄物循環学会若手の会セミナー報告
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