廃棄物資源循環学会誌
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33 巻, 6 号
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巻頭言
特集:最終処分にむけた減容化・安定化体化技術と最終処分構造
  • 馬場 康弘
    2022 年 33 巻 6 号 p. 417-422
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    11 年前の東京電力福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が放出され,広域的に環境が汚染された。
     環境省では,土壌等の除染や汚染廃棄物の処理を行なっており,除去土壌や放射能濃度が 10 万 Bq/kg を超える廃棄物を中間貯蔵施設に輸送している。中間貯蔵施設に搬入されたものについては,中間貯蔵開始後 30 年以内に県外で最終処分することが法律に定められている。その実現に向けては,最終処分量の低減を図ることが重要であるため,減容技術の開発や除去土壌の再生利用に関する実証事業を実施している。実証事業の成果については,公開の場で議論を行なっている。今後,2024 年度を戦略目標として,基盤技術の開発を進めるとともに,最終処分場の必要面積や構造について実現可能ないくつかの選択肢を提示する。その上で,2025 年度以降に最終処分場に係る調査検討・調整などを進めていく。中間貯蔵施設に搬入された除去土壌等の県外最終処分を確実に実現する必要がある。
  • 有馬 謙一, 遠藤 和人, 大迫 政浩
    2022 年 33 巻 6 号 p. 423-434
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    福島第一原発事故に由来する放射性物質に汚染され中間貯蔵施設に搬入された除去土壌や廃棄物のうち,放射能濃度が高いものを含め再生利用が難しいものは県外最終処分の対象となる。そのため減容化処理に関するさまざまな研究が行われており,焼却残渣に対しては高温での溶融処理が採用され,実施設も稼働している。本記事では,溶融処理から発生した飛灰の減容化技術とマスバランス計算について概説し,異なる処理技術を組み合わせた複数の減容化プロセスを想定した計算を実施した。その結果,飛灰を洗浄して減容化すると安定化体は焼却残渣の 1/1,000 から 1/10,000 程度になり,放射能濃度は 1 千万から 1 億 Bq/kg 程度になると試算された。一方で,スラグ,洗浄残渣,洗浄廃液等の二次生成物も発生するので配慮が必要である。今後は現在国が進めている実証試験等を踏まえた検証を行うとともに,本計算手法による試算が国の技術戦略目標の策定に活用されることが期待される。
  • 芳賀 和子, 渋谷 和俊, 大杉 武史, 山田 一夫
    2022 年 33 巻 6 号 p. 435-447
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    セメントは硬化後の物理的および化学的性質が安定しているだけでなく,安価かつ取り扱い性に優れた固型化材料であり,処理設備も簡便で経済的であることから,セメントによる固化・固型化技術は廃棄物の安定化処理に広く適用されている。
     本報では,廃棄物のセメント固化・固型化処理技術の現状として,福島第一原子力発電所事故由来の廃棄物のセメント固型化に関する検討,低レベル放射性廃棄物のセメント固化処理の現状,焼却灰のセメント固化技術について紹介し,セメント固化体における重金属の固定化と溶出機構に関する既往の研究成果について概説する。
  • 佐藤 努, 大矢 裕介, Raudhatul Islam Chaerun, 黒田 知眞, 中林 亮, 工藤 勇, 加藤 和茂, 谷口 雅弘
    2022 年 33 巻 6 号 p. 448-455
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所の内外で放射性セシウムを含む廃棄物が発生している。これらの廃棄物を安全に保管・運搬・処分するために,どのように処理し安定化体化するのかが大きな課題となってくる。近年,セメントと同じ無機系材料であるジオポリマーが新しい固型化材として注目されるようになってきた。そこで本稿では,放射性セシウムを含む廃棄物の固型化マトリックスとしてのジオポリマーとその適用性について解説し,セシウムを含む廃棄物の固型化に関するわれわれのグループによる研究事例を紹介する。
  • 市川 恒樹, 山田 一夫
    2022 年 33 巻 6 号 p. 456-466
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    中間貯蔵施設に集積された膨大な量の放射性セシウム (Cs) 汚染廃棄物等を数千分の 1~数万分の 1 に圧縮して最終放射性廃棄物とする超減容化プロセスは,① 放射性 Cs 汚染廃棄物を熱処理して Cs を発生飛灰側に移すことにより廃棄物から Cs を除去し,② 生じた Cs 濃縮飛灰を水洗して Cs を水洗液側に移し,③ フェロシアン化遷移金属を Cs 吸着剤とするイオンクロマトグラフィーによって Cs を水洗液から吸着剤側に移し,④ 最後に使用済み Cs 濃縮吸着剤を固型化・安定化して最終廃棄体とする,という 4 つの単位プロセスから構成される。ここではイオンクロマトグラフィーによる Cs 除去に関して,① 飛灰水洗液の溶液組成から吸着剤の飽和 Cs 吸着量を算出する方法,② イオン交換体である Cs 吸着剤が Cs イオンを特異吸着するメカニズム,③ Cs 除去用イオンクロマトグラフィーの機能について,イオン交換反応の物理化学に基づいて解説した。また,使用済み Cs 吸着剤を固型化・安定化して最終処分する手法についても,処理・処分シナリオの多面的評価を含めて解説した。
  • 乾 徹
    2022 年 33 巻 6 号 p. 467-476
    発行日: 2022/11/30
    公開日: 2023/11/30
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所事故により発生した大量の除去土壌や焼却灰等を対象として,減容化処理やその結果生じる放射性セシウム (Cs) 濃度の低い土壌等を再生資材として利用する戦略,技術システムの検討が現在進められている。一方で,放射性 Cs 濃度の高い処理副生成物や土壌等を最終処分する施設構造の検討も併せて重要となる。本稿では最終処分施設構造の検討に資する基礎情報を提示する観点から,環境省等で検討されてきた除去土壌等の県外最終処分にむけた戦略,各シナリオにおいて想定される最終処分対象物の量や放射性 Cs 濃度をレビューする。続いて,既存の遮断型最終処分場や浅地中ピット処分における封じ込め・漏洩防止の考え方や安全性評価の概要を示し,最終処分施設構造の検討にむけた今後の技術的課題を示す。
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