一昨年の大震災・原発事故を受け,地域資源を活用した再生可能エネルギーの強化が重要な課題となっている。バイオマスは,資源が薄く広く存在するなどの理由から,経済性のある一貫システムを成り立たせることが難しいという課題がある。このため,7 府省が共同で有識者からなる 「バイオマス事業化戦略検討チーム」 を設置し,9 回の会合を経て,バイオマス事業化戦略を決定した。バイオマス事業化戦略は,技術の選択と集中によって地域のバイオマスを活用した事業化を推進し,地域の活性化や雇用創出,地域循環型の再生可能エネルギーの強化を目指すものである。約 25 種のバイオマス変換技術の到達レベル,課題等を評価した 「技術ロードマップ」 に基づき,4 つの技術 (メタン発酵・堆肥化,直接燃焼,固体燃料化,液体燃料化) と,4 つのバイオマス (木質,食品廃棄物,下水汚泥,家畜排せつ物) をターゲットに事業として成り立つ案件を積み上げていく方針である。同時に,セルロース系や微細藻類等の次世代技術の開発を加速化していく方針である。
わが国では,毎年約 1,800 万 tonの食品廃棄物が発生し,その約 8 割が埋立・焼却処分され,500 ~ 800 万 tonはまだ食べられるのに棄てられる 「食品ロス」 といわれているものである。2020 年までに食品廃棄物の再生利用率を約 2 割から約 4 割に引き上げることが政府の目標である。
本稿では,バイオマス事業化戦略の内容と,国民に身近な食品廃棄物の現状と課題を紹介する。
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