廃棄物資源循環学会誌
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29 巻, 5 号
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巻頭言
特集:熱処理残渣の資源化と課題
  • ――資源価値の最大化に向けて――
    肴倉 宏史
    2018 年29 巻5 号 p. 339-348
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー
    わが国では都市ごみ (一般廃棄物) の排出量は減少傾向にあるが,全体の 80 % 近くを焼却処理する実態は長く変わっておらず,最終処分される廃棄物の 4 分の 3 を焼却残渣が占める状況となっている。ストーカ式焼却施設では,落じん灰,焼却炉底灰,ボイラー灰等の煙道の灰 (煙道灰),集じん灰が排出され,それぞれ異なる特性をもつことから,分離排出を基本とし,それぞれに適した資源化や最終処分の方法を検討するべきである。現在の焼却残渣の主な資源化方法は溶融スラグ化とセメント原料化であり,3 割近くが資源化されている。一方,欧州では焼却主灰からの金属粒子回収が急速に普及しており,また,欧州や台湾では焼却残渣の建設資材化が進められている。わが国においても金属粒子回収を導入したり,エージング処理を適用することは,その後のセメント原料化,建設資材化,最終処分のいずれについても利点が大きい。煙道灰や集じん灰の資源化や最終処分のあり方が今後の課題として残される。
  • 藤吉 秀昭, 高岡 昌輝
    2018 年29 巻5 号 p. 349-356
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー
    近年,中国では生活ごみの焼却施設の建設が進み,焼却量が急増している。2016 年の焼却量は 7,378 万 ton であり,わが国の 2 倍以上の生活ごみを焼却している。焼却に伴い発生する焼却残渣について,焼却灰は有価で建設資材利用が行われている一方で,飛灰の処理処分が問題となっている。飛灰の発生量は現在 400 万 ton を超えていると推定されている。飛灰中の重金属濃度のレベルはほぼ日本と同等であり,現時点では不溶化・固化後に衛生埋立処分場に処分するのが主流であるが,セメント原料化,高温溶融,焼結処理が始まりつつある。建設資材利用における基準についてはセメント製品の基準はあるが,他のリサイクル物の基準はなく,基準の整備および持続可能な管理体制の強化,情報の共有化が求められている。
  • ――消費者アンケートによる検討――
    村上 進亮, 山本 悠久
    2018 年29 巻5 号 p. 357-365
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー
    昨今,廃棄物焼却処理からの焼却残渣内に含まれる未利用資源の回収可能性に関する議論が盛んである。他方で,そもそもどういった由来でこうした未利用資源が含有されているかについて,詳細を議論したケースはあまり多くない。本稿では,金を含有すると思われる使用済み製品の排出先に関する消費者アンケート調査の結果から,金の由来の検討を行った。一般廃棄物に排出される可能性がある使用済み製品でいえば,パソコン,ゲーム機,AV機器,プリンター等が金の潜在的なソースとしては大きいものの,これらに含まれる金が焼却残渣に移行するとは考えにくい。それぞれの量としては大きくないものの少なからず金を含むさまざまな使用済み製品が可燃ごみに混入,また不燃,粗大ごみの処理残渣が焼却されることで,焼却残渣に含まれていた金が移行することが示唆された。
  • 大和田 秀二, 杉澤 建
    2018 年29 巻5 号 p. 366-373
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー
    一般廃棄物の焼却主灰からの金属回収を念頭に置き,ガス化燃焼の前処理としてのキルン炉より排出される焼却主灰を対象に,ある典型的な物理選別フローで処理された各種産物の分析を行い,その処理の各工程における各種成分の挙動の相関性を検討して,各元素のフィード中での存在状態,各種産物の特徴を把握し,物理選別における破砕・粉砕を含めた各工程の意義を明らかにし,上記目的に沿った物理選別フロー構築に関する留意点を提示した。
     具体的には,燃焼中には金属 (特に鉄) 相の表面酸化が起こるため,それら酸化物相の剥離 (単体分離) を促進するための粉砕技術の適用が必要であること,選別段階では,エアテーブル選別が重金属類,特に金等の貴金属の濃縮に効果的であること,また,破砕・粉砕段階では金属酸化物相の選択粉砕が起こるので,それらを事前に除去することが重要であること,ただし,細粒には Au が濃縮しているので,これは別途回収の必要があること,などを指摘した。
  • 飯野 成憲, 石田 泰之
    2018 年29 巻5 号 p. 374-383
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー
    最終処分量に対する都市ごみ焼却残渣の割合は,2016 (平成 28) 年度時点で 77 % にまで上昇していることから,資源化を加速する必要がある。セメント原料化において,特に都市部では,焼却残渣を多量に活用する際には脱塩が必要な普通ポルトランドセメント原料だけでなく,焼却残渣の原料化率 50 % 以上のエコセメント原料化の広域処理も検討すべきである。一方で,地域特性により,既存セメント工場の利用,溶融スラグ化,抽出や物理選別による金属回収についても検討するとともに,2018 (平成 30) 年 4 月に閣議決定された第五次環境基本計画で示されたとおり,環境,経済,社会の統合的取組に資する最適な焼却残渣の資源化システムを提示していくことが求められている。
  • 永山 貴志, 小野 義広, 水田 耕市
    2018 年29 巻5 号 p. 384-391
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー
    一般廃棄物の溶融処理技術は 2000 年代に本格的に普及した。溶融処理は溶融スラグの有効利用が伴ってこそ意義のあるものであり,溶融スラグの利用普及のために 2006 年にコンクリート用骨材および道路用骨材としての溶融スラグ JIS が制定された。
     溶融スラグは現在,年間約 80 万 ton 生産されており,その大半が JIS に準拠した製品として,コンクリート二次製品の骨材,アスファルト用骨材,埋戻材等に有効利用されている。また他方では,安定した流通を確保するために溶融スラグの特徴を活かした利用用途の拡大に各社が取り組んでおり,地盤改良材や排水改善材等の土木資材としての用途拡大の他,肥料や藻場ブロック等の農業利用や漁業利用への展開も行われている。
  • 乾 徹, 勝見 武
    2018 年29 巻5 号 p. 392-399
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却残渣を土木資材として有効利用することを目的とした研究開発は長年にわたって取り組まれている。しかし,各種スラグ類や石炭灰といった他の再生資材と比較すると,土木分野における利用が普及している状況とはいえない。本稿では,他の再生資材を対象とした有効利用の指針等をレビューし,都市ごみ焼却残渣を原料とする再生資材を土木資材として利用する際に必要となる条件や品質管理の考え方を課題とともに整理した。さらには,都市ごみ焼却残渣の土木資材としての利用可能性を示す観点から,東日本大震災後の災害廃棄物焼却残渣の造粒固化物の利用事例や品質管理の考え方,さらには埋立処分場の跡地を土地資源として利用することも一種の土木用途での利用であるという認識に基づき,埋立地盤の強度・変形特性に関する既往の研究を包括的に紹介する。
調査報告
  • 松田 智, 伊藤 秀章, 戸谷 満, 市野 良一
    2018 年29 巻5 号 p. 400-409
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/10/05
    ジャーナル フリー
    2016 年 6 月に,廃棄物資源循環学会東海・北陸支部では,東日本大震災復興現場の視察を実施した。本報では,その内容の報告と,それに基づくいくつかの考察を述べる。この現地視察の主な目的は,① 東日本大震災で大規模な被害を被った岩手県大槌町・山田町・宮古市の復興現場を視察するとともに,現地で復興事業に携わっている行政・企業体の担当者から貴重な体験談と今後の課題について説明を受ける,② 大震災による被害が時間とともに忘れ去られていく中で,現在進行中の復興事業が直面しているインフラ整備 (巨大防波堤建設や高台移転等のハード面) と住民によるコミュニティ形成等 (ソフト面) の,両面からの課題を考える,の 2 点であった。さらに,現地の実情に身をさらし肌で感じることにより,この震災の歴史的意味を考え,今後の環境教育を考えるよすがとすることも目的とした。本報ではさらに,今後の震災対策として重要な,災害廃棄物の処理・処分に関して,現地での見聞を基に考慮すべき諸点について論じた。
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