廃棄物資源循環学会誌
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23 巻, 5 号
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巻頭言
特集 循環型社会における埋立処分のあり方
  • 松藤 敏彦
    2012 年23 巻5 号 p. 341-347
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/09
    ジャーナル フリー
    埋立地は他の処理と比べて長期間の管理が必要となるため,早期の安定化が必要である。処理の最後に位置する埋立はそれ以前のすべての処理の影響を受けるため,日本で中間処理と呼ばれている処理は,埋立の前処理と考えるべきである。埋立地の安定化に影響するのは有機物量であり,安定化を早めるため処理方法の選択,さらには埋立廃棄物の選択が必要である。埋立構造は,有機物の安定化を進めるために水分と空気をどのように制御するかによって選択しなければならない。また,埋立終了後のアフターケア機関の管理,跡地利用方法を念頭に入れた計画が必要である。
  • 山田 正人, 遠藤 和人
    2012 年23 巻5 号 p. 348-355
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/09
    ジャーナル フリー
    世界的に循環型社会が意識しはじめられた 1990 年台後半から,持続可能型埋立という概念が議論されてきたが,最終処分場というエンドオブパイプ技術のみでは,持続可能型埋立の実現は困難である。著者らは,廃棄物フローの,より上流側に目を向け,廃棄物の品質を管理し,質と用途に対応した環境保全機能を有する三つの埋立類型を提案した。(1) 資源備蓄型埋立:現時点での資源価値は低いが,将来的に資源価値が高まる可能性のある廃棄物は他の廃棄物と分離し,資源価値が損なわれない機能を備えた施設に備蓄する。(2) 土地造成型埋立:埋立後の環境負荷のごくわずかな廃棄物は,環境負荷が極小となる用途を選定し,物や位置等の情報を管理した上で地盤材料等として利用する。(3) 安定化促進型埋立:以上の 2 類型に当てはまらず,埋立後に環境負荷を早期 (30 年程度) に低減することが可能な廃棄物は,隔離と安定化促進のための機能を備えた施設で処分する。
  • 香川 智紀
    2012 年23 巻5 号 p. 356-365
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/09
    ジャーナル フリー
    最終処分場の機能を十分に発揮させ,さまざまな産業廃棄物を安全に取扱うためには,最終処分場を構成する各施設の機能や産業廃棄物の特性を十分に理解した上で,適切な維持管理を行う必要がある。
     産業廃棄物処理業界では,最終処分場に搬入されている産業廃棄物の性状に関する情報,最終処分場での事故や行政指導の事例およびその後の対応策等について情報を収集した。それらと最終処分業者が個別に持っている情報や経験等を集約し, 「最終処分場維持管理マニュアル」 として共通化,体系化した。
     当業界では,これを中心として研修会や分科会を開催するなど,維持管技術の向上を目指したさまざまな取り組みを実施している。
  • 川嵜 幹生, 磯部 友護, 鈴木 和将, 渡辺 洋一
    2012 年23 巻5 号 p. 366-372
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/09
    ジャーナル フリー
    日本の一般廃棄物排出量,最終処分量とも減少しているが,新たな最終処分場を建設することが困難であるため,最終処分場の逼迫した状況は変化していない。埼玉県内の一般廃棄物処理状況を見てみると,最終処分地の県外依存度は高く,最終処分量の約半分を占めている。一方,民間による焼却灰の資源化が進んでいるため,県営最終処分場の埋立廃棄物種の割合や埋立地浸出水の有機汚濁成分濃度に変化が見られている。現在の埋立廃棄物状況および一般廃棄物処理施設状況から,今後,埋立廃棄物量をさらに削減するためには粗大ごみ処理施設の処理方法の見直し,リサイクル資材の利用促進も必要である。
  • 山口 直久, 遠藤 和人, 山田 正人
    2012 年23 巻5 号 p. 373-381
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/09
    ジャーナル フリー
    天然資源に乏しいわが国では,備蓄を含めて長期的な視点からの資源の循環システム構築が求められている。また,新たな埋立類型の一つとして,現状では資源価値の低い廃棄物を一時的にあるいは長期的に備蓄し,将来の市況や社会情勢,技術開発等に応じて,埋立物を取り出して資源として利用する 「備蓄型埋立」 が提案されている。
     本稿では,備蓄対象資源として,①電気電子機器の基板,②シュレッダーダスト,③焼却灰,④プラスチックを選定し,それぞれの賦存量と資源価値を算定した。電気電子機器の基板は現状においても十分に資源価値を有するが,金属価値が現状の 3 ~ 5 倍程度になれば焼却灰 (落じん灰) やシュレッダーダストも資源価値を有すると考えられた。また,資源価格の上昇により資源備蓄は事業として成立し,埋立空間を再利用することによる新たな処分場の事業モデルの構築可能性が示唆された。
  • 乾 徹, 勝見 武
    2012 年23 巻5 号 p. 382-391
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/09
    ジャーナル フリー
    土地造成型埋立類型は,不活性もしくは活性が非常に低く,有害性も低い廃棄物・副産物を用いて早期に土地造成を図り,利用価値の高い土地資源を提供することを目的として提案する埋立類型である。本報では,土地造成型埋立類型において埋立材料に要求される性能指標を利用用途ごとに整理するとともに,適用が有望である廃棄物・副産物材料を抽出した。次に,土地造成型埋立に量質両面で適用性が高いと考えられる建設発生土を対象として,港湾域において大規模土地造成を行う場合の実現性を,環境コストを考慮した経済的観点から検証を行った。さらには,廃棄物・副産物を用いた土地造成における環境影響評価の考え方として,近年の関連指針で示されている現場の状況や利用形態を考慮しうる環境影響評価の枠組みとその事例を紹介する。
  • 小田 勝也
    2012 年23 巻5 号 p. 392-400
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/09
    ジャーナル フリー
    海面廃棄物最終処分場は,廃棄物の適正な処分を行い,廃棄物処分が完了した後に跡地を港湾や都市用地として有効活用することを目的とする施設である。一方,安定化までに長時間を要する,最終処分場廃止後の土地利用段階においても内部の水位管理が必要である等長期的な維持管理上の課題がある。今後とも安定的かつ計画的に海面処分場を確保していくためには,跡地をより効率的に利用するための技術開発が不可欠である。
     このような観点から,海面処分場の特性を考慮した受入基準の検討,廃棄物地盤の地盤材料としての特性の評価を行うとともに,産業副産物である鉄鋼スラグを用いた改質効果の評価等を行った。
  • 島岡 隆行, Amirhomayoun Saffarzadeh
    2012 年23 巻5 号 p. 401-407
    発行日: 2012年
    公開日: 2019/03/09
    ジャーナル フリー
    埋立焼却灰の風化に伴う鉄含有物質の変質および二次生成物の形態を明らかにするため,埋立年が異なる 4 つの地点 ( 1 ~ 20 年経過) から埋立焼却灰を採取した。埋立焼却灰の風化現象を光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡 (SEM-EDX),X 線回折装置 (XRD),蛍光 X 線装置 (XRF) を用いて明らかにした。埋立焼却灰には,二次生成物が確認され,goethite (α-FeOOH),lepidocrocite (γ-FeOOH),hematite (Fe2O3),magnetite (Fe3O4),iron oxide (FeO),ゲル状の鉄含有 Ca-Si と Ca-Al-Si が同定された。これらの二次生成物は,埋立地中の多様な環境下において焼却灰中の鉄含有物質が変質したものである。二次生成物には,環境保全上,重要な Pb, Zn, Cu, Ni 等の重金属が共存しており,埋立地系外への重金属の流出抑制に寄与していると考えられた。
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