水俣条約により導入された対策が有効に機能し,水銀大気排出量の削減が期待される。本稿では,水俣条約附属書 D に掲げられている 5 発生源を対象に,大気排出量の推計に必要な排出係数や技術,対策の最新動向をまとめた。石炭燃焼分野では,高効率化,燃料転換,CO
2 分離回収技術の導入等の気候変動対策によるコベネフィットが大きく,電気集じん機のバグフィルターへの更新や活性炭吹き込みによって排出量の大幅な削減が期待できる。非鉄金属分野での水銀削減技術は,Boliden-Norzink 法や活性炭吸着がメインであり,湿式製錬への転換でも排出量の削減が見込める。セメント分野では,系内を循環している水銀をどのように系外に出すかが鍵で,今後選択を迫られることになる。廃棄物分野では,気候変動対策と調和させつつ,今後はバグフィルターと活性炭吸着の組み合わせが主流となっていく。今後の技術選択のためには,最終処分までを含めたコスト推計が極めて重要となる。
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