廃棄物資源循環学会誌
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24 巻, 4 号
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巻頭言
特集:放射性物質を含む廃棄物の測定分析
  • 山本 昌宏
    2013 年 24 巻 4 号 p. 227-238
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    東京電力 (株) 福島第一原子力発電所事故による放射能汚染という想定外の事態への対応として,放射性物質汚染対処特措法が 2011 (平成 23) 年 8 月に公布された。年末までにガイドライン等の策定と合わせて主要な政省令が公布され,2012 (平成 24) 年 1 月に全面施行された。これにより,原子力発電所等の敷地外における放射性物質に汚染された廃棄物の処理および除染について,新しい制度の枠組みが整理され,政府の責任下で着実に実行されることとなった。
    本稿では,特措法全面施行前後における東日本大震災および東京電力 (株) 福島第一原子力発電所事故からの復旧・復興に向けた,事故由来放射性物質に汚染された廃棄物の処理における国の取り組みについての概要を紹介する。
  • 滝上 英孝, 大迫 政浩
    2013 年 24 巻 4 号 p. 239-247
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    放射性物質に汚染された廃棄物等を今後,適切に管理するためには,廃棄物等の性状やその処理処分施設における状況等を踏まえた放射能の調査・測定法の標準化が必須である。廃棄物資源循環学会では,2011 (平成 23) 年度と 2012 (平成 24) 年度に 「廃棄物関連試料の放射能分析方法に関する調査委託業務」 を環境省から受託し,廃棄物・循環資源のさまざまな媒体のうち,焼却排ガス,焼却灰,汚泥,排水,その他固形廃棄物について,線量測定から放射能濃度測定,分析値の精度管理に至るまで多角的な検討を行ってきた。得られた知見をもとに,環境省の 「放射能濃度等測定方法ガイドライン第 2 版」 (2013 (平成 25) 年 3 月) の改定に関与した。また,2011 (平成 23) 年 11 月に作成した 「廃棄物等の放射能調査・測定法暫定マニュアル」 に上記ガイドラインの解説や,より先駆的な内容,調査・研究事例を参考資料として追加できるよう,検討を行っている。
  • 前原 裕治
    2013 年 24 巻 4 号 p. 248-252
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    放射能濃度等測定ガイドラインは,2011 (平成 23) 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関し,空間線量率および放射能濃度の測定方法を定めたものである。空間線量率の測定は,ガンマ線を測定できるシンチレーション式サーベイメータにより行い,放射能濃度の測定はゲルマニウム半導体検出器,NaI (Tl) シンチレーションスペクトロメータ,またはLaBr3 (Ce) シンチレーションスペクトロメータにより行う。これらの測定方法を理解し,精度の良い測定を行うために作成されている。今後も新たな知見が明らかとなった場合や見直しが必要と考えられた場合には,適宜改訂されることとなる。
  • 山本 貴士
    2013 年 24 巻 4 号 p. 253-257
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    2011 (平成 23) 年 3 月の福島第一原子力発電所事故により放出された放射性物質により,東日本各地で下水汚泥や焼却灰から高濃度の放射性物質が検出される事例が多数報告される事態となった。廃棄物処理施設の作業従事者等の被ばくを最小限に抑えつつ,円滑に処理処分を進める必要があるが,そのためには廃棄物や処理施設の放射能濃度や空間線量率を測定し,そのレベルに応じた処理処分や被ばく対策の方法を選択する必要がある。そのための測定法として,2011 (平成 23) 年末に 「廃棄物等の放射能調査・測定法暫定マニュアル」 (以下,暫定マニュアル) が発行された。本稿では,暫定マニュアルについて,作成の経緯や概要, 「廃棄物関係ガイドライン」 との相違点,今後の改訂の方針等について述べる。
  • 高岡 昌輝
    2013 年 24 巻 4 号 p. 258-266
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    本稿では,放射性物質が混入した一般廃棄物や下水汚泥の焼却施設における排ガス中放射性物質の測定方法について考察した。測定方法は 2 つのアプローチがあり,一般廃棄物焼却施設の排ガス中金属やダイオキシン類測定に基づいた方法 (JIS K 0083, JIS K 0311),および発電用軽水型原子炉施設における放出放射性物質の測定に関する指針に基づいた方法 (JIS Z 4601, JIS K Z 4336) である。これら 2 つの試験方法と,排ガス中放射性物質のダスト粒径別挙動の調査方法 (JIS K 0302) の 3 つの比較並行試験を行った事例を紹介した。いずれの方法でも最終煙突における排ガス中放射性セシウム濃度は検出下限濃度以下であった。比較的低濃度の混入廃棄物の焼却において, 「放射能濃度等測定方法ガイドライン」 に示されている方法は合理性があるといえるが,除染廃棄物等の高濃度廃棄物の焼却においては,本方法以外にも長期的なモニタリングが必要であろう。
  • ――土壌・植物・水を対象として――
    保高 徹生, 辻 英樹
    2013 年 24 巻 4 号 p. 267-273
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    東京電力 (株) 福島第一原子力発電所の事故により生じた放射性物質汚染に対して,本格的な除染活動がスタートした。除染活動の推進とともに,除染後に発生する膨大な汚染土壌や廃棄物の仮置場,中間貯蔵施設等の保管場所の確保や性能設計は喫緊の課題である。特に土壌や植物体中の放射性セシウムの存在形態や溶出特性は,保管・管理施設の要求性能に大きく影響を与える。また,環境水中の放射性セシウムの濃度レベルや存在形態の把握は,長期的な環境動態評価,さらに保管・管理における水環境への長期的な環境影響を把握する上で極めて重要である。本稿では,土壌,植物の 2 つの環境媒体中の放射性セシウムの存在形態や溶出特性に関する知見の整理,最新の試験結果を報告する。また,環境水中の放射性セシウムの濃度レベルや存在形態に関する調査結果,低濃度の水中の放射性セシウムのモニタリング方法についても概説する。
  • 肴倉 宏史, 石森 洋行
    2013 年 24 巻 4 号 p. 274-280
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    放射性セシウムを含む廃棄物等が人へ健康影響を及ぼす経路のうち,土壌や地下水への拡散の可能性は極めて重要である。そのため,放射性セシウムを含む廃棄物等に溶出試験が適用され,知見が蓄積されてきた。本稿は,これまでに筆者らが適用したさまざまな溶出試験の結果をもとに,廃棄物等からの放射性セシウムの溶出特性をとりまとめたものである。
  • 吉田 幸弘
    2013 年 24 巻 4 号 p. 281-290
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    廃棄物処理における放射性セシウムの放射能測定の精度管理を中心に記述した。精度管理においては,適用する方法が妥当であるか,妥当な方法による測定について実際に試験所がそのとおり実施できるか,実施できた試験の品質が継続的に確保できているかが大切である。そのためには手順の標準化と手順書の整備,施設の維持管理,装置の適正なメンテナンスと校正,要員の適格性の確保や,不備が発生した場合の対処を行うことを規定する必要がある。適正な結果報告がなされているかは濃度既知試料の分析,認証標準物質の分析,試験所間のクロスチェック等によって評価する。さらに方法における不確かさの要因について調査すると,より合理的な精度管理を行うことができる。表面汚染の測定,空間線量率の測定についての留意点についても簡単に触れた。
総説
  • ――バーゼル条約における課題と展望――
    竹本 和彦, 本多 俊一
    2013 年 24 巻 4 号 p. 291-305
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約の制定背景は,1970 年や 80 年代に発生した先進国から開発途上国への有害廃棄物の処分を目的とした移動に起因し,有害廃棄物の越境移動を規制するべき主張が国際的に大きく取り上げられたことである。条約制定当初は,1995 年に採択された有害廃棄物の輸出禁止に関する条約改正 (BAN 改正) が象徴するように,先進国から開発途上国への有害廃棄物の越境移動を全面禁止することで,開発途上国へ越境移動された有害廃棄物が原因となる環境影響・人的被害を防ぐことが国際交渉上の主要な力学であった。しかし,2000 年代以降,資源回収を目的とした有害廃棄物の越境移動が活発になるにつれ,有害廃棄物の資源価値が国際的に注目されるようになってきている。本稿では,バーゼル条約の国際的な交渉を踏まえ,廃棄物の資源化戦略のための越境移動と環境上適正な管理の在り方について議論を行う。
解説
  • ――水銀に関する水俣条約を中心に――
    水谷 好洋, 金子 元郎, 田中 勝, 岡 かおる, 阿南 隆史
    2013 年 24 巻 4 号 p. 306-315
    発行日: 2013/07/31
    公開日: 2021/03/20
    ジャーナル フリー
    水銀による地球規模の環境汚染と健康被害を防止するための条約の制定に向けた国際交渉が 2010 年より開始され,5 回にわたる政府間交渉委員会の結果,2013 年 1 月に 「水銀に関する水俣条約」 として条文案が合意された。この条約は,水銀の供給・使用から排出・廃棄までのすべてのライフサイクルにわたって国際的に規制を進めようとするものであり,2013 年 10 月に熊本市・水俣市で開催される外交会議で採択される予定である。日本は,水俣病の経験国として積極的に条約交渉に参加してきたところであり,条約の早期批准に向けた国内対応の検討を進めるとともに,条約の早期発効に向け,途上国の批准を支援するための活動などを進めていく。また,条約を補完する役割が期待される世界水銀パートナーシップ分野の活動についても廃棄物管理分野を中心に引き続き貢献していく。
入門講座/廃棄物資源循環のための理化学基礎講座 2
平成25年度企画広報部会活動報告
平成25年度廃棄物資源循環学会研究討論会報告
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