廃棄物資源循環学会誌
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32 巻, 1 号
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年頭所感
特集:最終処分場からの POPs およびその候補物質の浸出実態の把握手法および長期的な溶出予測手法の開発
  • 寺西 制
    2021 年 32 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
    2004 年に発効されたストックホルム条約では,残留性有機汚染物質 (POPs) を指定しており,その製造および使用の廃絶・制限,排出の削減,含有する廃棄物等の適正処理等が規定されている。POPs を含む廃棄物については,その国内における適正処理を推進するため,PCB については特別措置法が制定されており,農薬類や PFOS についてはそれぞれの分解処理に係る要件等を記載した技術的留意事項を策定してきたところである。さらに,POPs 廃棄物処理の制度的なあり方の検討を開始しており,具体的な制度を検討していくにあたって,その適切な位置づけや現状の取り扱い状況等の精査等をさらに進めることにより,検討を深めていきたいと考えている。また,臭素系難燃剤の POPs を添加した廃プラスチックについては,その適正処理方法を定めること,および判別・分別に関する対応方策を検討していくことが必要と考えている。フッ素系界面活性剤の POPs については,今後の PFOA の国内規制を見据えて,適正処理方策や分析方法の整備等の必要な対応を検討していきたいと考えている。今後とも,実効的な政策形成のために,研究開発分野と連携させていただければと思う。
  • 梶原 夏子, 松神 秀徳
    2021 年 32 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
    残留性有機汚染物質 (POPs) に関するストックホルム条約の対象物質は,2004 年の条約発効以降も次々と追加されてきた。条約上では,(1) 廃絶対象物質 (条約附属書 A ),(2) 製造・使用制限対象物質 (附属書 B ),(3) 意図的でない生成による放出削減対象物質 (附属書 C ) の 3 つに分類され,締約国はその分類に応じた対応が求められる。本稿では,条約新規対象/候補物質のうち,ポリ塩素化ナフタレン (PCNs: polychlorinated naphthalenes),ヘキサクロロブタジエン (HCBD: hexachlorobutadiene),ヘキサブロモシクロドデカン (HBCDD: hexabromocyclododecane),有機フッ素化合物 (PFAS: per- and polyfluoroalkyl substances) に対象を絞り,含有廃棄物の種類や処理実態,循環・廃棄過程における管理方法の基本的な考え方について概説する。
  • 矢吹 芳教, 遠藤 和人
    2021 年 32 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
    われわれの生活から排出されるごみは中間処理を受けた後,廃棄物処分場に埋め立てられる。廃棄物の最終処分場は,都市鉱山と称され注目されているように,さまざまな物質の蓄積場所となり,POPs 等の化学物質についても例外ではない。過去に,あるいは現在の中間処理を経て埋め立てられたこれらの化学物質は,長期にわたり最終処分場浸出水中から検出される可能性を有している。国内や海外の先行研究をレビューした結果,PFOA や PFOS を含む PFASs については,最終処分場浸出水中から数千 ng/L のオーダーで検出される可能性があること,HBCD および HCBD については,数十 ng/L の低濃度の報告にとどまっていること,PCNs については,濃度実態の把握がほとんど進んでいないことが明らかとなった。また,POPs の中でも水処理が困難な PFASs の除去として,活性炭吸着,光触媒および RO 膜処理が有効であることも報告されている。しかしながら,POPs の浸出水中の濃度実態の把握および処理過程での消長に関する研究結果が十分に蓄積されていないことは大きな課題であり,長期間にわたり廃棄物処分場の POPs に関する安全性を確保するためには,排出される浸出水,浸透水およびその処理水についての実態把握・モデル構築が必要である。
  • 伊藤 耕二, 小野 純子
    2021 年 32 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ナフタレン (PCNs) およびヘキサクロロブタジエン (HCBD) は,溶媒やゴム製品等の添加剤として用いられてきた。これらの物質は,COP7 以降,新たに POPs に指定されたが,いまだに意図的・非意図的を問わずさまざまな工業製品中に残留して最終処分場に廃棄されている可能性は高い。さらに PCNs は PCB と構造が類似であり,燃焼副生成物として焼却残渣中にも含まれている。最終処分場の長期的な適正管理に資するため,これら POPs の処分場浸出水中における濃度実態と排水処理過程での消失過程を明らかにした。全国各地で実態を効率的に把握するため,分析手法の構築にあたっては既に基準値等があり測定頻度の高い分析項目 (ダイオキシン類,VOC および 1,4-ジオキサン) と統一の方法で同時に分析可能な手法開発を目指した。浸出水の PCNs 濃度は数 pg/L ~数百 pg/L,HCBD は MDL (0.015 μg/L) 未満であった。PCNs は排水処理で除去され放流水では数 pg/L に減少した。
  • 松村 千里, 羽賀 雄紀
    2021 年 32 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
    有機フッ素化合物に関しては,Stewerdship Program による自主規制やストックホルム条約への登録以降,環境中あるいはヒト血清中における濃度は減少傾向にある。PFOA の減少に伴い PFHxA の増加が報告されている。前駆物質では,Orbitrap-MS を用いて海水から N-MeFOSA と N-EtFOSA の検出事例もあるが,多くは,5:2 Ketone,5:3 FTCA,6:2 FTOH,6:2 diPAP,6:2 FTS が検出されている。最近では,GenX の汚染実態や検出事例も報告された。
     一方,最終処分場におけるヘキサブロモシクロドデカン (HBCD) の調査事例は,ほとんどないのが現状であるものの,<0.0025~9ng・L−1 の濃度範囲であった。また,下水処理場では,流入水 <0.4~400ng・L−1,放流水は 0.14~18ng・L−1 の濃度範囲であり,処理に伴い濃度レベルが減少していた。
     今後は,処分場浸出水等さまざまな水試料を分析することで,問題点を整理し,分析法および調査法マニュアルを作成する予定である。
  • 水谷 聡, 伊藤 耕二, 矢吹 芳教
    2021 年 32 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
    廃棄物の焼却残渣および工業的加熱プロセスから発生する残渣 (セメントキルンでの飛灰やクリンカー,鉄鋼や非鉄金属の二次精錬から発生する残渣) に含まれるポリ塩化ナフタレン (PCNs: polychlorinated naphthalene) に関する研究動向をまとめた。また著者らが行なった PCNs の研究結果も併せて述べた。残渣中に含まれる濃度は,一部の試料を除いて,同じようなレベルであった。同族体・異性体分布に基づいて統計的解析を含めて多くの検討が行われていたが,製品系と燃焼系の PCNs を完全に区別することや,塩素化反応経路を特定することは難しいようであった。ダイオキシン対策として行われている加熱脱塩素化処理は PCNs の分解,脱塩素化,毒性の低減に有効であることが示唆された。ごみ焼却における PCNs の排出係数の報告値は 1 ~ 48,600 μg ton−1 と幅が広く,さらなる検討が必要である。
  • 遠藤 和人, 尾形 有香
    2021 年 32 巻 1 号 p. 50-62
    発行日: 2021/02/10
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
    残留性有機汚染物質 (POPs) に追加された PFOA や PFOS 等のペルおよびポリフルオロアルキル物質類 (PFASs) および,ポリ塩化ナフタレン類 (PCNs) の最終処分場からの長期的な排出予測を行うため,排出実態調査の状況や,移動性に大きく影響する吸着能について,炭素鎖,塩素数を意識した文献調査を実施した。PFASs については,フッ素テロマーアルコール類 (FTOHs) からの生物学的な分解経路についても調べ,最終処分場内で生成される可能性について知見を集めた。その結果,塩素数が大きい PCNs や長鎖 PFASs は最終処分場内に蓄積する可能性が示唆され,塩素数が小さい PCNs や短鎖 PFASs は比較的早期に浸出水として排出される可能性があると考えられている。また,最終処分場内のような嫌気性環境下では,炭素数 8 以下のペルフルオロアルキル酸類 (PFAAs) が生成される可能性があることから,PFOA や PFOS だけでなく,前駆物質も含んだ網羅的な調査研究が必要である。
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