廃棄物資源循環学会誌
Online ISSN : 2187-4808
Print ISSN : 1883-5864
ISSN-L : 1883-5864
33 巻, 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
年頭所感
特集:資源循環と脱炭素
  • 井上 雄祐
    2022 年 33 巻 1 号 p. 3-6
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    2050 年カーボンニュートラルに向けて国内外で多くの制度や計画が動いていること,ならびに脱炭素における資源循環の位置づけや期待を概説した。「気候変動に関する政府間パネル」 (IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change) の第 6 次評価報告書 (AR6) は,20 世紀半ば以降の温暖化の主な要因は,人間が原因であることに議論の余地がないこと,世界の気温を 1.5 ℃ に抑えることで,近年発生している 50 年に一度と表現されるような極端な高温現象の発生する確率を 30 % 程度減らしうる,と述べており,国際的な動きとしては,こうした見解に沿った取り組みが行われつつある。日本でも 2050 年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し,2030 年度においても 2050 年目標と整合性のある目標で諸政策がすすめられつつある。あらゆる産業が脱炭素社会に向けた大競争時代に突入した今,プラスチック資源循環はじめ,脱炭素にとって不可欠な資源循環の深化を念頭においた技術・システム構築を目指すことが重要である。
  • 山田 浩司
    2022 年 33 巻 1 号 p. 7-16
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    廃棄物・資源循環分野においても,2050 年温室効果ガス (GHG) 排出実質ゼロのための排出削減策の検討を早急に進めていくことが不可欠である。環境省では,対策強度に応じた複数のシナリオを設定し,2050 年の GHG 排出量を試算し,「廃棄物・資源循環分野における 2050 年温室効果ガス排出実質ゼロに向けたシナリオ (案)」 を策定した。本シナリオにより,2050 年に向けて,プラスチック資源循環の進展等に加え,廃棄物処理施設において CCUS を最大限導入できれば,廃棄物・資源循環分野で実質ゼロ,さらには実質マイナスを実現できる可能性があることが示唆された。同時に,これまでの計画等の延長線上の対策では,2050 年までに廃棄物・資源循環分野の脱炭素化を達成するには不十分なことが明らかとなり,関係者が一丸となり,明確な展望と覚悟の下,相当な野心をもって取り組む必要があることが明らかとなった。廃棄物処理や資源循環分野における,より具体的かつ実効的な取り組みの検討を深めていく。
  • 南齋 規介, 渡 卓磨
    2022 年 33 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    日本はパリ協定に基づく温室効果ガス (GHG) の排出削減目標を引きあげ,2030 年には総排出量を約 7.6 億 ton に抑制し,2050 年のカーボンニュートラル社会の達成を目指すと宣言した。日本の GHG 排出の約 20 % を占める素材産業は,生産プロセスを再生可能エネルギー由来の電力導入により脱炭素化を図るのが難しい。昨今,物質効率戦略や物質バジェット戦略と称する,素材生産量の削減を通じて GHG の排出削減を狙うアプローチが注視される。物質消費の徹底的な効率化は高い排出削減効果を潜在的に有するが,気候 2 ℃ 目標の達成に見合う物質消費は現状の半減が条件との推計もある。一方で,電気自動車等の脱炭素技術の普及によるクリティカルメタルと呼ばれる金属需要の高まりが予想され,物質利用の革新的な縮減と安定的増加の二面性に対処することがカーボンニュートラル社会の実現を近づける。
  • 小林 拓朗, 倉持 秀敏
    2022 年 33 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    バイオガスを天然ガス相当の品質まで精製してできるバイオメタンは,ガスおよび運輸部門の脱炭素化への寄与が期待されている。有機性廃棄物のメタン発酵によって発生するバイオガスから CO2 を分離する方法が,バイオメタン製造の主要な経路である。最近では,バイオガス中の CO2 からのメタン合成を含む CO2 リサイクル技術としてのバイオメタン製造にも関心が高まっている。バイオメタネーションは水素と CO2 を原料としてバイオメタンを合成するメタン発酵技術の一つで,資源循環分野におけるエネルギー回収とシナジーが期待できる CO2 リサイクル技術として認識されている。本稿では,バイオメタネーション技術に関する研究の最先端と課題について解説する。
  • 矢野 順也, 平井 康宏, 酒井 伸一
    2022 年 33 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    2050 年の温室効果ガス (GHG) 排出実質ゼロあるいはその削減過程である 2030 年までの中長期を見通した取り組みが世界中で進みつつある。本報では脱炭素社会を睨んだ世界の GHG 削減戦略を資源循環廃棄物分野を中心にレビューした。イギリスやアメリカ,ロンドンやトロント等,国や都市がさまざまな分野を包括した脱炭素計画を推進している。また,資源循環廃棄物分野の脱炭素計画としてもイギリスの Sixth Carbon Budget Report やボストン Zero Waste 計画等,国内外で定量的な削減シナリオが提示されはじめている。対策としては食品廃棄物を含む有機性廃棄物のリデュース,その他廃棄物の 3R,廃棄物エネルギー回収,非 CO2 の GHG 対策等があげられる。そして,GHG 削減対策としてのバイオガス化に加え CCUS の LCA 研究も増えつつある中,脱炭素社会を見据えた GHG 定量化手法の議論の必要性に触れた。今後さまざまな都市や地域において適確な脱炭素計画の立案と推進が行われ,その効果を定量的に把握し検証,改善していくことが肝要となる。
  • 小林 拓矢, 北村 誠基, 宇佐美 実
    2022 年 33 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    近年環境問題に対しての意識の高まりにより,さまざまな環境関連の取り組みが検討されている。一方で,そのような取り組みを持続可能なものにするためにはビジネスとしての成立が不可欠と考える。伊藤忠商事(株) はマーケットインの環境ビジネスを標榜しており,顧客とともにバイオプラスチック,リサイクル,リユースなどさまざまな取り組みを実ビジネスとして成立,社会実装を進めているが,こうした取り組み事例について紹介したい。また,これら取り組みにおいてビジネス上どのような点が障害となりうるのか,われわれが現場にて直面している問題についても共有できればと考えている。
  • 田中 朝都, 小野 義広, 横山 唯史, 塚本 輝彰
    2022 年 33 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    2050 年カーボンニュートラルに向けて,(一社) 日本環境衛生施設工業会の会員企業は廃棄物焼却施設における CCUS への取り組みを行なっている。最初に,燃焼排ガスへの二酸化炭素回収プロセス検討への取り組みとして,化学吸収法およびその商業機稼働事例を紹介し,廃棄物焼却施設への二酸化炭素回収プロセス適用例を紹介した。次に,佐賀市清掃工場において排ガスから二酸化炭素を回収,利用する設備が世界初の試みとして 2016 (平成 28) 年から稼働している事例,クリーンプラザふじみにおいて排ガスから二酸化炭素を回収するプロセスの実証実験への取り組みを紹介,および回収した二酸化炭素を水素と反応させ合成メタンを商用化規模での製造を実証する 「清掃工場から回収した二酸化炭素の資源化による炭素循環モデルの構築実証事業 (環境省委託事業)」 を紹介した。
  • 佐藤 祐樹, 池田 寿文, 植田 洋行, 川西 理史, 大山 晟弥
    2022 年 33 巻 1 号 p. 62-69
    発行日: 2022/01/31
    公開日: 2023/01/31
    ジャーナル フリー
    廃溶剤・廃潤滑油・廃食用油等からなる産業廃棄物の廃油は年間 300 万 ton ほど排出されており (2018 年度),うち約 42 % が燃料に再生され,残りは焼却処理されている。石油を起源とする廃油由来の CO2 排出量は約 980 万ton CO2 であり (2018 年度),廃棄物分野の温室効果ガス排出量の約 25 % を占める。このことから,2050 年カーボンニュートラル社会の実現に向け,廃油に対する CO2 排出削減対策の検討優先度は相当に高いといえる。燃料に再生された廃油は代替した重油・軽油相当分の CO2 排出削減に貢献しているものの,一方で大半の溶剤・潤滑油は石油を原料に製造されており,カーボンニュートラル化の観点から,再生燃料としての利用分を含む廃油全体からの CO2 排出量を削減する対策を抜本的に考えていく必要がある。
     本稿では廃溶剤・廃潤滑油それぞれのリサイクルの現状を整理するとともに,今後の廃油全体のカーボンニュートラル化に向けた対策の展望を整理する。
第32回廃棄物資源循環学会研究発表会報告
環境省・廃棄物資源循環学会共催シンポジウム報告
廃棄物資源循環学会研究部会報告
支部特集/支部だより
書評
feedback
Top