廃棄物資源循環学会誌
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34 巻, 2 号
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巻頭言
特集:固体回収物燃料 (Solid Recovered Fuel) の国際標準化の動向とその意義
  • 棚瀬 省二朗, 吉田 諭史, 渡辺 泰介, 吉川 克彦
    2023 年 34 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    廃棄物由来の固体回収物燃料 (Solid Recovered Fuel: SRF) は,廃棄物最終処分の削減のみならず,安価かつ安定的に大きな発熱量が得られ,石炭等の化石燃料を代替できるため,循環経済や脱炭素に資する有用な燃料資源として,国境を越えて使用されている。

     一方,SRF は,さまざまな性状を有するものがあり,燃料としての品質や製品安全性を規定する国際ルールの作成が急務となり,2015年に ISO において,SRF の国際標準化の専門委員会 (TC300) が設置された。原料廃棄物の受け入れから顧客拠点への製品搬入まで,SRF の製造・保管をカバーすべく,規格の開発が進められ,現在まで15の規格が交付されている。

     わが国は,古紙と廃プラスチックの組成制御で発熱量を制御できる,高品位な RPF (Refuse Paper and Plastic densified Fuel) の JIS 規格を保有しており,RPF を対象に含めた規格の成立と JIS 規格の考え方の各国への共有等,TC300 において重要な役割を果たしてきた。

     本論文では,これら SRF の国際標準化の活動概要について報告する。

  • ―― エネルギー回収から再資源化価値評価への拡張 ――
    石垣 智基
    2023 年 34 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    本稿では固形回収物材料 (SRM) に関する国際標準化の経緯と動向について解説した。SRM 規格は ISO の技術委員会 (TC) 300 において開発がすすめられてきたが,当初のエネルギー回収用途に限定した規格から,原料価値および資源回収効果を含めた規格へと対象範囲が拡張された。SRM はより幅広い用途で利用されることが想定されており,国際規格の発行による市場の拡大が,廃棄物管理,気候変動,ならびにエネルギー利用の持続可能性を高めることが期待される。

  • 河井 紘輔
    2023 年 34 巻 2 号 p. 97-106
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    本稿では,欧州における SRF/RDF の製造および利用状況と,EU の循環経済パッケージが欧州諸国の廃棄物管理政策に与える影響について整理した。欧州では埋立指令に従い,残渣ごみの前処理として Mechanical biological treatment の導入が進み,SRF/RDF が製造されてきた。規格に準拠した SRF もある一方で,規格に準拠していない RDF が多く流通し,SRF/RDF は焼却施設で処理されるだけでなく,セメント産業等で代替燃料として利用されている。近年,イギリスからオランダ等北欧諸国へ多くの SRF/RDF が輸出されてきたのは,イギリスにおける埋立税と,北欧諸国における廃棄物焼却施設の余力が主な要因である。循環経済パッケージに基づき,EU 加盟国では,有機ごみの分別収集を強化して残渣ごみからの徹底的な資源回収が求められている。

  • 吉武 和広, 田墨 啓治
    2023 年 34 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    RPF が開発され1991年に事業が立ちあがってから30年が経過した。廃棄物処理や地球温暖化の課題は既に RPF 開発当初においても存在していたが,近年の気候変動による災害の激甚化,プラスチックの負の側面の顕在化により,気候変動対策や循環型社会移行への動きが近年加速している。RPF もこれら変化とさまざまな政策,さらには国際紛争起因の社会情勢の変化で,その価値や扱われ方が変化してきた。今回,改めて RPF の燃料性状や品質,特徴を紹介し,RPF とその利用スキームであるエネルギーリカバリー,および温暖化ガス排出の実力値を事業者の視点から説明を行い現在の RPF の価値について言及する。また循環型社会に向けてケミカルリサイクルへの期待が高まっているが,ケミカルリサイクル原料面で RPF に寄せられている期待についても最後に触れる。

  • 和泉 一志, 杉澤 建, 石田 泰之
    2023 年 34 巻 2 号 p. 116-124
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    セメント製造プロセスではさまざまな産業廃棄物を原燃料として利用しており,熱エネルギーはクリンカの焼成エネルギーの一部に,灰分は原料の一部として活用している。セメント産業では SRF のうち主に廃プラスチックの破砕フラフ,RPF,廃タイヤチップ,下水汚泥炭化物,木くずチップなどを大量に利用しているが,SRF のもつ熱エネルギーポテンシャルは高く,セメント産業における SRF の利用による石炭利用の削減は,CO2 の排出量低減に寄与する。一方,SRF に含まれる塩素や少量成分の影響は無視できないため,適切な管理の下,持ちこまれる塩素分や少量成分が製造プロセスやセメントの品質に影響を与えないような工程としている。また,セメント製造における SRF (SRF に相当する廃プラスチックの破砕フラフ) を利用することによる CO2 の排出量について,LCA 手法に基づく算定モデルにより CO2 排出削減効果を評価した結果,SRF の循環利用によってセメント製造プロセス全体の CO2 排出量原単位の約1割にあたる削減効果が確認された。

  • 渡辺 泰介
    2023 年 34 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    SRF (固体回収物燃料ともいう) は,発熱,発火の可能性があり,原料保管,製造,製品の貯蔵と保管の工程で,安全管理が重要となる。日本での事故例,性状管理,発熱発火の危険性を示しつつ,日本での安全管理対策を示す。加えて,SRF の安全な取り扱いと保管に関する ISO 規格である,ISO 21912 SRF ― Safe handling and storage of solid recovered fuel の概要と日本の貢献を示す。

  • 鎌倉 秀行
    2023 年 34 巻 2 号 p. 129-134
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2024/02/02
    ジャーナル フリー

    香川県三豊市にあるバイオマス資源化センターみとよでは,日本初となるトンネルコンポスト方式によるごみ処理を行なっており,一般家庭等から排出される燃やせるごみを微生物を用いて発酵乾燥し,選別することで固体回収物燃料原料にリサイクルしている。この原料を固形回収物燃料製造工場で製品化し石炭代替燃料として最終的に販売している。

     本報ではトンネルコンポスト方式の経緯や処理フローやその特徴を紹介し,一般廃棄物を固体回収物燃料化することによる脱炭素効果や今後の展望についてまとめる。

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