廃棄物資源循環学会誌
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24 巻, 2 号
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巻頭言
特集:廃棄物処理施設の環境排出量 (PRTR) に関連する話題
  • 水谷 好洋
    2013 年24 巻2 号 p. 117-122
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー
    PRTR 制度は,人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質が,どこから,どれだけ排出されているかを知るとともに,化学物質の排出量や化学物質による環境リスクを削減するための制度である。2011 年度は,全国 36,638 事業所より化学物質の排出量・移動量の届出があり,排出量約 174 千 ton,移動量約 225 千 ton,総排出量・移動量が約 399 千 ton であった。事業所数は前年度と比べて減少しているものの,総届出排出量・移動量および継続物質の総排出量・移動量ともに前年度に比べて若干増加した。しかしながら,制度設立以降,継続物質の排出量・移動量はほぼ減少傾向にあり,化学物質による環境リスクの低減に一定の効果があったと考えられる。
    今後は,廃棄物処理施設等からの届出外排出量推計方法の確立,化学物質の代替のあり方,消費者,廃棄物処理業者への情報伝達などの課題に取り組むことが必要と考えられる。
  • 鈴木 穣, 神山 敏
    2013 年24 巻2 号 p. 123-128
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー
    下水処理施設からの化学物質排出量は,一部の化学物質について PRTR (Pollutant Release and Transfer Register 化学物質排出移動量届出制度) に基づき下水道事業者から届出され集計されているが,その他の化学物質については把握されていないことから,これらの排出量について,環境省により設置された作業部会が推計を行った。まず,下水処理施設への流入量を,PRTR に基づき事業者から届出される 「下水道への移動量」 に加えて,家庭排水や路面排水等による流入量の推計値を算入することにより,推計した。次に,実測データ等に基づいて下水処理施設における媒体別移行率を設定し,これを流入量に乗じることにより,下水処理施設から大気および公共用水域への排出量を推計した。なお,路面排水中の濃度や下水処理施設での生分解度など,限られたデータに基づいて推計したものが少なからずあるため,さらにデータを蓄積して推計精度についての検討を深めることが望まれる。
  • 神山 敏, 笹原 圭, 清木 真明
    2013 年24 巻2 号 p. 129-134
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー
    「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」 (いわゆる 「化管法」 ) に基づくわが国の PRTR 制度では,廃棄物処理施設からの環境中への排出量は一部を除いて届出されないため,国は届出外排出量としての推計を試みた。数年間の検討を経て,まず一般廃棄物処理施設 (ごみ焼却施設) に限って大気等への排出量を推計し,公表することとした。大気を中心として排出量を推計した結果,鉛・ニッケル・アセトアルデヒドなど 17 物質の合計として,2011 年度の全国での排出量は約 160 ton と推計された。しかし,今回の推計結果には信頼性としての課題が残っているため,さらにデータを収集し,継続的な見直しを行うことが不可欠と考えられる。また,産業廃棄物処理施設 (焼却施設) なども信頼できる測定データなどを収集し,推計・公表の対象として追加することが必要と考えられる。
  • 小口 正弘
    2013 年24 巻2 号 p. 135-143
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー
    水銀,鉛,カドミウムなど有害金属の適正管理に向けた基礎情報としてマテリアルフローと環境排出量データの継続的な整備が求められている。そのためには,化学物質排出移動量届出制度 (PRTR 制度) 等の既存の施策によって継続的に取りまとめられる情報の活用を図ることも一つの方法である。本稿では,業種ごとの届出排出量の推移や算出方法の面から PRTR 届出排出量データの特徴を理解し,環境排出量データの継続的な整備への活用可能性を議論した。PRTR 届出排出量は届出事業所数の変化や主要事業所の届出状況によって大きく変化し得ること,取扱量や排出量の算出方法によって値の持つ意味が異なる可能性があることなどが指摘された。特に届出排出量の算出方法についてその実態を把握することは有害金属のマテリアルフローと環境排出量の把握において PRTR データの位置づけを理解する上で重要な課題であると考えられた。
  • 塩見 拓正, 廣木 雅史
    2013 年24 巻2 号 p. 144-152
    発行日: 2013/03/31
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー
    2012 年 5 月に利根川水系において発生したホルムアルデヒドによる水道の取水障害は,産業廃棄物に含まれていた原因物質のヘキサメチレンテトラミンが,産業廃棄物処理業者での処理により十分処理されないまま公共用水域に排出され,浄水場での塩素処理によりホルムアルデヒドを生成したものと推定されている。
    環境省では,2012 年 6 月から 8 月にかけて 「利根川水系における取水障害に関する今後の措置に係る検討会」 を設置して検討を行い,8 月に 「中間取りまとめ」 を行った。この 「中間取りまとめ」 を受けてヘキサメチレンテトラミンを 「水質汚濁防止法」 の指定物質に追加するとともに,ヘキサメチレンテトラミンを含む産業廃棄物の処理委託等に係る留意事項について都道府県等に通知した。
    今後も,ヘキサメチレンテトラミン以外の物質も含めて,公共用水域に排出される排出水の管理,産業廃棄物の適正な処理等について検討を進めていく予定としている。
入門講座/廃棄物資源循環のための理化学基礎講座 1
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