廃棄物資源循環学会誌
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29 巻, 6 号
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巻頭言
特集:残留性有機汚染物質 (POPs) 対策の方向性
  • 国末 達也, 高橋 真
    2018 年29 巻6 号 p. 423-432
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー
    2004 年 5 月に残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約 (POPs 条約) が発効し,POPs 廃絶に向けた国際社会の取り組みが開始されたが,依然として野生高等動物等における高濃度蓄積や生態リスクが指摘されている。筆者らの研究グループは,沿岸の底質柱状 (コア) 試料や愛媛大学の生物環境試料バンク (es-BANK) に冷凍保存されていた海棲哺乳類の脂皮試料を活用し,POPs 汚染の時系列変化を解析してきた。その結果,条約発効時に登録された PCBs や DDTs 等の POPs に関しては 1970 年代以降おおむねその汚染は低減傾向にあるが,近年 POPs 条約に追加登録された“新規 POPs”は,臭素系難燃剤の成分 (PBDEs・HBCDs) について汚染レベルの上昇が認められた。また,外洋性鯨種の POPs 蓄積濃度は 2000 年以降も定常もしくは増加を示しており,汚染の長期化が懸念された。途上国等も含む国際的な POPs 監視ネットワークを構築し,長期的かつグローカルな視点から規制効果の検証を進めることが今後の課題である。
  • 倉持 秀敏, Zhang Zhenyi
    2018 年29 巻6 号 p. 433-441
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー
    POPs (残留性有機汚染物質) が汚染源からどのような経路で環境へ排出されるのか,また,排出対策とその効果を提示するには,POPs,POPs 候補物質,POPs の代替物の物理化学特性を適切に把握し,環境分配特性を評価する必要がある。本稿では,対策の検討で必要な物理化学特性 (揮発性や溶解性等や環境媒体間の分配係数),これらのデータ入手方法,物理化学特性に基づく環境分配特性の評価方法と注意点を紹介する。さらに,新規登録された POPs と POPs 代替物に対する物理化学特性や環境分配性の予測を通して,今後の POPs 対策を意識した予測モデルの課題や発展性について議論する。
  • 平井 康宏, 酒井 伸一
    2018 年29 巻6 号 p. 442-451
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー
    ポリ臭素化ジフェニルエーテル (PBDE) のマテリアルフロー解析 (MFA) と,大気環境中における動態に関する近年の研究動向を紹介した。MFA の調査手法は,PBDE の国内需要量の推移をもとに用途別使用割合を乗じて用途別の PBDE ストック量を推定するトップダウン型と,個別の最終製品中の濃度と製品フロー量をもとに積みあげていくボトムアップ型とに大別される。製品の新規使用がなくなるため,今後はボトムアップ型が重要となる。PBDE の大気モニタリングにより,ペンタブロモジフェニルエーテル,オクタブロモジフェニルエーテルの減少傾向が多くの地域で確認されている。規制がやや遅れたデカブロモジフェニルエーテルの減少傾向は弱いか,まだ確認されていない地域が多く,一部の地域では増加が続いている。環境中濃度の減少に伴い,不検出データの増加が予想されるため,打ち切りデータを扱うモデルの適用等,適切な解析手法の適用が重要である。
  • 梶原 夏子
    2018 年29 巻6 号 p. 452-460
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー
    POPs 条約の対象物質は 2004 年の条約発効当初の 12 物質群から大幅に増加し,現在までに計 28 物質群が指定されている。製剤原体そのものが廃絶や処理の対象である PCB や農薬とは異なり,新規 POPs の多くは樹脂添加剤であることから,含有製品が多岐にわたるだけでなく,リサイクル等,循環利用に伴う希釈・拡散も相当量あると想定される。POPs 含有ストックパイル・廃棄物の適正管理および処理については,POPs 条約側から依頼を受ける形で,「有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約」の下で技術ガイドラインが策定されており,現在も,新たに追加された POPs に関するガイドラインの策定作業が進められている。本稿では,バーゼル条約技術ガイドラインの主な内容や論点を概説するとともに,これまで著者らが取り組んできた POPs 分解実証試験の事例を紹介する。
  • ―― 技術と展望 ――
    高岡 昌輝, 藤森 崇
    2018 年29 巻6 号 p. 461-469
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー
    残留性有機汚染物質 (POPs) の廃棄物は有害性が高く,適正な処理が必要である。POPs 廃棄物を適正処理するためには,排出実態の把握,排出された廃棄物の収集・保管・運搬,そして処理技術が必要となる。本稿では熱処理および化学処理に関して,これまで既存の POPs に対して実施されてきた技術を概説する。また,短鎖塩素化パラフィン類 (SCCPs) およびデカブロモジフェニルエーテル (DeBDE) といった,今後生じる新規 POPs 廃棄物への適用可能性や課題についてまとめた。熱処理に関しては,POPs 廃棄物を処理した際の非意図的生成物への配慮が求められ,化学処理についてはすでに確立されている技術の適用性の検討が残されている。いずれの技術にしても,適正処理における POPs 廃棄物の取り扱いと管理について一定水準以上が求められることから,制度として確立することが望まれる。
  • ―― 現状と今後の展開 ――
    鈴木 剛, 仲山 慶, 前川 文彦, Tue Nguyen Minh, 木村 栄輝, 道中 智恵子, 松神 秀徳, 橋本 俊次
    2018 年29 巻6 号 p. 470-481
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー
    臭素系ダイオキシン類は,POPs 条約の規制対象物質ではないが,対象であるダイオキシン類と同様の特性を示すため,リスク管理の必要性が国際的に共有されている。国内では,環境省による臭素化ダイオキシン類の排出実態調査が実施され,臭素系難燃剤の decaBDE を使用する施設や含有製品を取り扱う施設で,ダイオキシン類の排出基準や作業環境基準を超過する値で検出されることが明らかにされた。臭素化ダイオキシン類の排出は,2017 年に decaBDE が POPs 条約上の廃絶対象物質となったことに伴い,動脈側で減少することが予測されるが,静脈側で含有製品の再資源化や廃棄を通じた排出が当面継続する見込みであり,引き続きその実態把握が必要である。DecaBDE の代替物使用の臭素系ダイオキシン類の排出への影響についても,今後の排出実態調査や関連研究で明らかにされることが期待される。また,臭素化ダイオキシン類の適切なリスク管理には,WHO と UNEP の専門家会合が指摘しているとおり,魚類・哺乳類毒性試験に基づく TEF を補完していく必要がある。
調査報告
  • 佐伯 孝, 谷川 昇, 小野 雄策, 佐々木 基了, 土屋 正史
    2018 年29 巻6 号 p. 482-487
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー
    産業廃棄物の処理・処分料金は,対象となる産業廃棄物の処分の難易度,地域での排出量と処理施設の能力等のさまざまな要因によって決定されている。産業廃棄物の適正処理を維持するためにも,産業廃棄物の種類や性状に応じた適切な処分料金を把握し,適切な処分料金での処分委託が重要である。産業廃棄物の処分料金の公開状況を整理した結果,「さんぱいくん」や「優良さんぱいナビ」に,他社との比較が容易に可能な状態で産業廃棄物の処分料金の公開している事業者の割合は,10 % 程度と少ないことが明らかとなった。産業廃棄物の処分料金を整理した結果,処分料金の最大値と最小値の差が大きく,がれき類の処分料金の中央値,平均値は,産業廃棄物の中で最も安価であった。都道府県別の無筋コンクリートの処分料金の分布を示すことで,処分料金に地域性があることを明確にし,関東地域ではがれき類の排出量の多い自治体で処分料金が高くなることを明らかとした。
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