医学教育
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42 巻, 2 号
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原著―探索的研究
  • 小松 弘幸, 有村 保次, 今村 卓郎, 北村 和雄, 岡山 昭彦, 林 克裕
    2011 年 42 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 2011/04/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    心臓病患者シミュレータは全国の医学教育機関で最も普及している医療シミュレータの一つであるが,学習到達目標を明確にした上での有効な活用方法は十分検討されていない.本研究では,共用試験OSCE後の医学生に対する明確な到達目標の設定とシミュレータ演習を取り入れた学習方法を提案し,その教育効果についても検討した.
    1)対象は本学医学科5年生94名で,到達目標は順序立てた診察技能の習得と正常心音および代表的心疾患の判別とし,講義とシミュレータ演習の前後でチェックリストを用いた評価を行った.
    2)実習前後で,総スコア(14点満点)は2.2±0.9点から11.4±1.5点へ有意に上昇した(p<0.001).心疾患の病態の違いによる実習後スコアの差は見られなかった.
    3)実習前に対象者の50%以上が実施できた項目は,聴診器の正確な当て方と心雑音の最強点の指摘のみであったが,実習後は対象者の98%が診察所見を順序立てて述べられ,94%が設定された心疾患の病態を的確に推測できた.
    4)到達目標を絞ったシミュレータ演習は,限られた時間と人的資源で診察技能の向上に寄与しうる.今後は,実習後の定着度の再評価や反復学習プログラムの確立が課題である.
  • −指導医講習会における指導医のニーズ調査から−
    福士 元春, 名郷 直樹
    2011 年 42 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 2011/04/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    われわれは指導医講習会での経験を通じて,指導医が現場でどのような問題に直面しているかについて十分に把握できていなかったことに気づいた.そこで,指導医講習会のニーズ調査の一環として,質的研究を計画した.
    1)指導医が初期臨床研修プログラムについて困っていることを探索的に調査することで,これまで明確になっていなかった根底にある問題を分析・構造化することを目的とした.
    2)指導医講習会に参加した医師214名に対して質問紙調査を行い,自由記述で得られた回答を質的分析した.
    3)「受け入れることから始めたい」を端緒に,臨床研修制度が受け入れられずに批判し,自身の無知には無自覚となっている指導医の現状【批判にすりかえられた無知】が浮き彫りとなった.
    4)新医師臨床研修制度導入により,組織に帰属して研修するシステムとしての関係構築フレームが機能しなくなり,現場に大きな混乱をもたらしている.
  • −メンティーのインタビュー調査から−
    三品 浩基, 横山 葉子, Mitchell D Feldman, 角舘 直樹, 福原 俊一
    2011 年 42 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2011/04/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    欧米では,メンター制度が医学領域の研究成果の達成のみならずキャリア形成,研究資金獲得にとって有用な教育システムとして認められている.わが国の医学研究教育においてもメンター制度を活用するにあたり,その試行経験から,メンタリングの促進因子と阻害因子を検討することが重要と考える.
    1)メンター制度下で臨床研究の実施経験がある医師12人を対象として,メンタリングの促進因子および阻害因子を探索するインタビュー調査を行った.
    2)インタビューの逐語録を質的に分析し,メンタリングの促進因子と阻害因子を抽出した.
    3)促進因子として,メンティーのレベルの適切な評価,メンティーの考えているキャリアパスの把握,コミュニケーションの双方向性,身近な先輩研究者の存在が抽出された.
    4)阻害因子として,メンターの忙しさ,相談内容のレベルの低さについてのメンティーの不安,メンター・メンティー間の上下関係が抽出された.
    5)施設におけるメンタリングの評価制度,およびメンターの教育制度がメンタリングの促進に必要な対策として期待された.
総説
  • −アメリカにおける「ナイト・フロート」制度−
    アラン R. テオ, ジェイ・ スターキー
    2011 年 42 巻 2 号 p. 81-87
    発行日: 2011/04/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    1)米国では,かつて,ある医療事故事件をきっかけとして,研修医の長時間労働が社会的問題となった.その際,対策として,「ナイト・フロート(night float)」という制度の導入が検討された.
    2)同制度は,担当となった研修医が,日中は勤務をせず,夜間にのみ業務に従事するというものである.通常,一年あたりの担当回数は数回であり,一回の担当期間は一・二週間である.
    3)同制度が導入されている医療機関では,ナイト・フロートを担当する研修医以外の研修医は,夜間,患者を担当する必要はない.このことなどから,同制度は,研修医の満足度も高めているといわれている.特に近年,この制度は,全米に普及した.
    4)ナイト・フロート制度は,長時間労働の解消という点だけでなく,研修医の技術力の向上,医療安全の確保など,他の点においても利点がある.ただし,欠点があることも報告されている.
  • —和歌山県東牟婁郡串本町における地域医療教育—
    岩崎 拓也, 竹山 宜典, 伊木 雅之, 伊藤 浩行, 大柳 治正, 塩﨑 均, 松尾 理
    2011 年 42 巻 2 号 p. 101-112
    発行日: 2011/04/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
     地域医療の崩壊が深刻な社会問題になっており,各種対策も立案実行されている.さらに医学教育においても,モデル・コア・カリキュラムの改訂や,各大学での地域医療教育の充実が図られている.本学においても地域密着型の地域医療実習を平成17年度より開始しており,本実習による学生の地域医療への意識・親和性の変化を調査した.
    1)2006年4月から2010年7月までに地域医療実習を履修した494名を対象にアンケート(自己評価)を行った.実習開始前と実習終了時の計2回の回答が回収された.
    2)アンケート調査項目をカテゴリーに大別すると,A−地域住民との活動(問1〜14),B−在宅高齢者との活動(問15〜28),C−自身の将来像(問29〜31)となった.
    3)地域医療への自己評価は実習後に有意に上昇し,「C−自身の将来像」では,地方都市での病院勤務の選択が増え,農山漁村での勤務を希望する学生も見受けられた.
    4)地域医療への誘導は,最初に医療でなく地域住民とのかかわりを強めること,次に自身での問題解決能力を高めることが肝要であると考えられた.
    5)地域医療実習にて医学生が地域医療に理解と親和性を高め,将来的に地域での医療に従事するインパクトを与えられることが示唆された.
報告
  • 金田 太吾, 北田 覚
    2011 年 42 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2011/04/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    学生の習得状況を客観的に評価する方法として客観的臨床能力試験(OSCE)を本学園も導入しているが,毎年の課題は医療面接ステーションの評価表の信頼性である.評価表の信頼性を高める新たな視点として,評価者内の一致度を高める必要があるのではないかと考え,評価項目の再現性についての検討を行った.
    1)医療面接の講義を終了した学生を対象とし某鍼灸師養成の専門学校4校の協力を得て,本研究の説明を聞き同意を得た学生89名を被験者としてビデオ撮影による医療面接の試験を行った.
    2)医療面接試験の評価経験のある教員6名にて,2人1組のペアとなり同一のビデオ内容を個別評価にて依頼した.一定期間あけた後,再度同じビデオの評価を依頼した.
    3)評価者内の一致はすべての項目で高い一致を示したが,評価者間の一致では多くの項目で高い一致を示すことは出来なかった.
    4)評価者内の一致度は必ずしも評価者間の一致度と相関していない事がわかった.
    5)事前打ち合わせでは想定できなかった事例が起きた際,自身の持つ教育基準で評価してしまい,それが評価者間の一致度を低くしてしまうのではないかと考える.
  • 道端 伸明, 三品 浩基, 阪井 裕一, 高山 ジョン一郎
    2011 年 42 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2011/04/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    1)カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)にて一年間の臨床家のための臨床研究教育プログラムを受講した.
    2)メンタリングやフィードバックなどの教育システムが活用されていた.
    3)臨床家が臨床研究実施やその教育を受けるために,臨床業務に拘束されない時間が確保されていた.
委員会報告
  • 第 16 期日本医学教育学会倫理・プロフェッショナリズム委員会
    宮田 靖志, 野村 英樹, 尾藤 誠司, 河本 慶子, 朝比奈 真由美, 板井 孝壱郎, 浅井 篤, 天野 隆弘, 大生 定義, 後藤 英司
    2011 年 42 巻 2 号 p. 123-126
    発行日: 2011/04/25
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    1)卒前医学教育,卒後医師臨床研修,および,各学会や医師会などによる医師の生涯教育に,プロフェッショナリズムに関するカリキュラム/プログラムを明示的に導入すべきである.
    2)プロフェッショナリズム教育を通じて修得すべき目標,その効果的な学習方略や評価法,および,非公式カリキュラム・隠れたカリキュラムの影響などに関する研究を発展させる必要がある.
    3)プロフェッショナリズム教育導入により,医師ならびに医療に対する社会の信頼の醸成に結びつけるよう,医療界を挙げた活動を展開することを提案する.
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