ディプロマポリシー (DP) 到達度の可視化を目的として, コンピテンシー (CPT) と関連深い授業科目のグレードポイント (Grade Point : GP) を解析した. 8項目のDPと対応するCPTを介してグループ化された授業科目のGP平均値 (Average of Great Points : AGP) をレーダーチャートで示した. 学生は全体高評価型, 限局高評価型, 平均評価型, 高・低評価混合型, 限局低評価型, 全体低評価型に分類された. 学生の自己評価をAGPと対比すると自己過小評価型 (女性多い), 自己過大評価型 (男性多い), 適正低評価型, 適正高評価型に分かれた. AGP解析はDP到達度の可視化に有用であった.
障害者差別解消法により, 医療者養成機関においても発達障害およびその特性がある学生への合理的配慮の提供が求められている. 合理的配慮とは, できる権利を保障するための配慮であり, 教育機関には提供の義務がある. 本稿では, 医療者養成機関における発達障害およびその特性がある学生の「入学」, 「在学中」, 「就職」の面から合理的配慮の考え方と, 具体的な支援について概説した. 発達障害およびその特性がある学生の支援においては, 明確な基準の提示, 教職員同士の連携・協働, さらに特性のある学生との関わり方の基本の理解が必要である.
健康科学においては, 健康や病気という複雑な事象を包括的に理解するために質的研究アプローチへの関心が高まっている. 本稿では, 健康科学分野質的研究に興味のある人達のために, その基本的立ち位置, 前提となる理念や特徴に関して整理し, アプローチをより身近なものとして考えてもらうことを目的としている. 質的研究アプローチの中でも医療人類学を軸に, 事例も使いながら, 「健康問題」がどのように社会文化的に構築され, それらが時間的, 地域的な特殊性を持つ文脈の中でどう読み解かれるべきかを考える. 解釈学, 現象学的立場に依拠する質的研究は, 健康科学の中で主流である実証主義に基づく量的研究と, 研究の目指すもの (目的), 焦点とプロセス, 現実把握様式の前提, 研究者のスタンスなどが異なる. 現在始まっている量的研究分野と質的研究分野の研究者の対話が今後一層促進されていくことが望ましい.
医学教育コア・カリキュラムでは, 「プロフェッショナリズム」の中に「医の倫理と生命倫理」が掲げられている. 医療倫理には研究倫理と臨床倫理があり, 臨床倫理は臨床現場で遭遇するジレンマを扱うケース・スタディである. 医療倫理の4原則 (自律の尊重, 善行, 正義, 無危害) を学生に教育する場合, 臨床倫理カンファレンスの体験から学ばせるのは効果的である. しかし, 卒前の学生に実際の臨床倫理カンファレンスを体験させることは困難であるため, アレンジされた事例等が教材として用いられている. ここではその実践例を紹介する. 実際の臨床倫理カンファレンスでは, 何がジレンマなのかが明確でないことが多々あり, カンファレンスで「何が問題なのかに気づく」ことが重要である. 気づくための倫理的感受性 (ethical sensitivity) を涵養することも教育の大きな目的のひとつである.