医学教育
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41 巻, 1 号
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原著-総合的研究
  • 野呂 幾久子, 阿部 恵子, 伴 信太郎
    2010 年 41 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    医学生のジェンダーと医学生および模擬患者(SP)のコミュニケーション・スタイルの関係について調べた.
    1) 名古屋大学医学部で実施された客観的臨床能力試験(OSCE)のうち,4年次医学生82名(男子53名,女子29名)とSP(女性8名)の医療面接を対象に,医療コミュニケーション分析法RIASを用いて分析を行った.
    2) 医学生のコミュニケーションには2点の違いが見られた.女子医学生の方が男子医学生より,感情表出の発話,特に共感の発話,および開かれた質問が有意に多かった.
    3) SPのコミュニケーションには3点の違いが見られた.女子医学生との面接の方が男子医学生との面接より,SPの社交的会話,医学的情報提供,総発話数が有意に多かった.
    4) 医学生のジェンダー差は,医学生およびSPのコミュニケーション・スタイルにいくつかの影響を与えていることが確認された.
原著-探索的研究
  • 片岡 義裕, 高屋敷 明由美, 前野 哲博
    2010 年 41 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    参加型臨床実習の導入が進み,医学生が自主性を持って臨床実習に取り組むことが重要になってきている.自主性を高める要因の一つとして,診療科に対する興味が考えられる.そこで,診療科に対する興味と学生の自主性の関連および自主性を高める可能性のある要素を明らかにすることを目的として,質問紙調査を行った.
    1) 筑波大学6年次学生92名を対象に,臨床実習の自主性に関する4つの項目を,興味のある科と興味のあまりない科での実習それぞれについて,6段階Likert Scaleを用いて調査した.
    2) 臨床実習において学習のモチベーションを高めたエピソードについて,自由記載で回答を求めた.その後,回答内容のカテゴリー化を行った.
    3) 回答率は94%であった.興味のある科での実習については,自主性に関するすべての項目で興味のあまりない科よりも有意に自主性が高かった(P<0.01).
    4) 自由記載では38名からのべ56の回答を得た.患者からの質問や励まし(29名)や医師の熱心な指導(9名)を挙げたものが多かった.
    5) 診療科に対して興味をもつように学習を工夫することや,患者や指導医との密なコミュニケーションにより,臨床実習における医学生の自主性が引き出される可能性があると考えられた.
主張
  • -日本とドイツの医療倫理教育調査を踏まえて-
    吉中 丈志, 西山 勝夫
    2009 年 41 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1) 戦争と医学は医療倫理教育の重要なテーマである.日本とドイツの医学部・医科大学に対して質問紙による調査を行い医療倫理教育の課題を考察した.
    2) ヘルシンキ宣言と医師の戦争犯罪についてドイツではほとんどの医学部・医科大学の医療倫理教育で取り上げられていたが,日本では少数であった.
    3) ヘルシンキ宣言と医師の戦争犯罪は医療倫理の歴史と現状の理解に欠くことができない位置にある.原因を明らかにして改善を検討することは医療倫理教育の重要な課題である.
  • 高橋 優三, 奥 祐三郎, 青木 孝, 赤尾 信明, 嶋田 淳子, 鈴木 守, 松岡 裕之, 有薗 直樹, 坪井 敬文, 金澤 保, 由井 ...
    2010 年 41 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1)日本寄生虫学会教育委員会は,全国の医学部医学科へのアンケートで,医学教育改革の中での寄生虫学・医動物学の現況を調査し,医学教育への新たな貢献を考察する上で貴重な基礎データを得た.
    2)寄生虫学・医動物学の部署,教員数,授業時間の概数,方法,教育方針などの把握ができた.部署,教員,時間などは,いずれも減少していた.教える内容は現代的ニーズに合わせ,統合化が進んでいた.
    3)寄生虫学・医動物学は伝統的に,基礎医学,臨床医学,社会医学などを幅広く統合する科目であり,コア・カリキュラムで強調されている統合的な思考を養う科目として最適である.それを担当する部署の減少は望ましい事ではない.
報告
  • 土橋 智弥, 岡崎 祐也, 羽野 卓三, 栗山 俊之, 川邊 哲也, 竹下 達也
    2010 年 41 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1) 和歌山県立医科大学は,2006年に観光医学講座を開設し,様々な疾患をもつ患者を対象に,健康と観光を統合した事業「ヘルス・ツーリズム」を実施している.
    2) 今回,ケアマインド(患者の不安などの気持ちを理解し気遣う心)育成教育の一環として,学生がパーキンソン病患者の1泊旅行に参加し,様々な介助を行いながら終日患者に同行した.
    3) この体験により,学生は病院では知りえないパーキンソン病患者の日常の状況を把握でき,患者の家族とも良い関係を持てたことから,ケアマインドを養う体験実習として有意義であると考えられる.
  • ―ニーズの異なる地域の福祉施設で実践した実習プログラム―
    沼田 公子
    2010 年 41 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    現在,視能訓練学生に対する早期体験実習の先行研究はない.早期体験実習の場には,主として医療現場と福祉介護施設の2つがあるが,一般に医療現場での実習は学生教育に理解のある附属病院で行われている.しかし,視能訓練士養成校の7割は専門学校で,附属病院の併設がなく,医療現場を実習の場とすることが困難なところも多い.本研究ではニーズの異なる複数の福祉施設において早期体験実習プログラムを実践し,その評価を目的に学生に対してアンケート調査を行った.その結果と問題点について報告する.
    1) 学生の実習意欲の程度は,実習開始後向上し,視能訓練士の専門領野である視覚障害関連施設とその他の施設間との差,および男女間の差はほとんどみられなかった.
    2) 実習開始前から男女とも実習の意義・医療人への意欲への意識は高く,実習に対する高い期待がうかがえたが,実習開始後も緊張・コミュニケーション力の低さが持続し,実習が辛いと意識していることがわかった.
    3) 本実習プログラムは医療専門職への動機づけには成功したと考えられるが,学生が自信を持って実習するには,施設や人に慣れるためのある程度の時間が必要とも思われ,同一施設での実習との比較検討が必要である.
  • 宮田 靖志, 寺田 豊
    2010 年 41 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1)2008年度に,札幌医大において新しくNBMコースを開発した.
    2) NBMの概念・臨床実践の講義,患者家族の病いの語りの講演,ナラティブ・コンペテンス演習(Significant event analysis, パラレル・チャート,ライフストーリー)がカリキュラムに含まれた.
    3) 一部の学生はカリキュラムに対して批判的であったが,多くの学生はカリキュラムを前向きに評価していた.学生のナラティブ・コンペテンスを涵養するために,今後,さらにカリキュラムの改善を継続していく必要がある.
  • ―医学生はなぜPOMRが書けないのか―
    原田 唯成, 福本 陽平, 小早川 節, 小野 咲弥子, 實近 百恵, 村上 不二夫, 川崎 勝
    2010 年 41 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1) 医学生が臨床実習で患者のPOMRを円滑に記載できない要因として,収集した患者情報を問題リストとして整理する過程に原因があると思われた.
    2) 症例のシナリオを作成しこのシナリオから問題リストをあげさせ,初期診療計画を立案する演習を行うことが,診療録作成過程を指導する上で効果的であった.
  • 池田 和真, 杉山 暖子, 池田 亮, 浅野 尚美, 小郷 博昭, 三好 智子, 片岡 仁美, 水島 孝明, 中村 好男, 草野 展周, 岡 ...
    2010 年 41 巻 1 号 p. 51-53
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1) 医学科学生614名と医師252名に輸血検査実習を行った.血液型の誤判定は学生1名のみであったが,交差適合試験を正しく判定できたのは学生の33.2%,医師の63.9%であった.
    2) 交差適合試験誤判定の多くは不規則抗体の検出ができなかったことによるが,学生の5.2%,医師の2.9%がABO血液型不適合を検出できなかった.
    3) 実習が知識の定着と原理の理解に有用であることと同時に,交差適合試験を「自ら実施し,結果を解釈できる」とする臨床研修の到達目標達成の困難性が示唆された.
  • 三品 浩基, 高山 ジョン一郎, 福原 俊一
    2010 年 41 巻 1 号 p. 55-57
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1)米国University of California, San Franciscoで臨床研究を実践する中でその教育システムを体験した.
    2)医師の臨床研究教育では,知識提供型のコースワークだけでなく,個別メンタリングによる研究支援が機能していた.
    3)メンターの教育スキルの向上のために,教員を対象とした教育及び,教育業績の評価などが試みられていた.
field study
委員会報告
  • 大西 弘高, 渡邉 淳, 石川 ひろの, 小田 康友, 杉本 なおみ, 守屋 利佳, 吉田 素文, 森本 剛, 吉村 明修, 阿曽 亮子, ...
    2010 年 41 巻 1 号 p. 65-71
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1)医学教育領域におけるランダム化比較試験を実施し,その過程を振り返ることにより,実施上の課題を探った.
    2) 2007年2月,日本医科大学の4年次生39名に対し,診断の決めてとなる内容の尋ね方について講義を実施し,直後に共感的な医療コミュニケーションスキルがどう影響されるかを標準模擬患者との面接にて測定した.医学生はランダムに介入群・比較群に割り付けられ,介入群への講義は面接での診断に合致した内容,比較群への講義は無関係な内容であった.
    3) RCTデザインを用いた医学教育研究の実施に特有な課題として,研究倫理審査,割り付け情報に関する評価者のマスク化,両群に提供する教育介入や評価の同等性担保が見出された.
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