背景 : 医師国家試験 (国試) 出題基準の妥当性は卒後初期臨床研修 (初期研修) の観点からの検討が不十分である.
方法 : 初期研修の指導医を対象に, 出題基準に収載された各疾患の重要性に関する質問紙調査を行った. 回答 (5段階) を「重要性スコア」 (5点満点) に変換し, その平均値をもとに疾患を3群に分け, 各群の出題状況も検討した.
結果 : 重要性スコアが低い (2.5点未満) 疾患が出題基準の10.0%を占めた. それらの一部は国試に出題され, 重要性が中等度 (同2.5点以上4.5未満) の疾患も一部は詳細な知識が問われていた.
考察 : 初期研修における重要性と国試出題基準および出題の間に乖離がある可能性を示唆している.
国際化は医学教育の世界にも影響を及ぼし, 千葉大学においても医学留学制度の拡充を図ってきた. 本稿では, 一医学生がどのような形で留学準備, 英語力の向上を実現させたかを実体験を踏まえて述べ, また6年間の留学の軌跡を提示する. 更に医学留学の意義として, 世界の医学界の第一人者に出会うこと, 同世代の世界の医学生との交友を持つ中で, 日本人としての医学生の能力を世界標準と照らし合わせること, 長い医療者人生の中で学生の段階においてのみ, フレキシブルに世界を目にすることの3点を挙げ, 今後のキャリアへの活かし方, 及び, 医学生に対する医学留学への提言を行う.
シネメデュケーションの題材として, 落語を取り入れることの可能性について検討した. 医学部学生を対象としたプライマリ・ケアに関する授業の中で落語「死神」を鑑賞し, 人の寿命をどう考えるかを中心に考察してもらった. 授業後の印象では, 学生にある程度のインパクトを与え, 将来の診療に役立つような考察ができていると推察され, 導入した目的はおおむね達せられていると考えられた. 今回の経験から, 落語は演目を選べばシネメデュケーションの題材としてその効果を十分期待できるものであり, 今後試みてもよい手法と思われた.
医師不足の原因の一つに女性医師の増加と支援体制の未整備が挙げられる. 医師の結婚・家庭観やその診療科選択への影響は明らかにされているが, 男女医学生のそれは明らかでない. 岐阜大学医学部医学科2・5年生を対象とした無記名質問紙調査を行った. 多くの男女学生が, 結婚し, 子供を授かり, 結婚後も仕事を継続することを希望した一方, 相手の職種や就労, そして結婚・家庭観の診療科選択に対する影響については男女で異なる認識だった. これらは性役割分担意識が学生にも浸透していることを示していた. より良い相互理解のため, 早期からの新たな卒前教育の必要性が示唆された.