背景 : 看護基礎教育における協同学習のあり方への示唆を得るために, 看護学生の協同学習に対する認識の実態と影響要因を明らかにした.
方法 : 中部地方のA大学の看護学生131名を対象に, 無記名自記式質問紙法で行った.
結果 : 二項ロジスティック分析の結果, 協同作業認識尺度の影響要因として, 高校での協同学習経験, 学習満足度, ソーシャルサポート, 対人葛藤方略スタイル及び仮想的有能感の他者軽視が確認された.
考察 : 協同作業に対する認識には, 学生の職業アイデンティティやコミュニケーション力, 過去のネガティブ体験などが影響している可能性があり, それらに考慮した協同学習のあり方を検討していく必要性が示唆された.
目的 : 研修医の抑うつに関して, 臨床研修制度導入時と, 制度が広く周知された段階とで比較検討を行う.
方法 : 全国の臨床研修病院250施設で, 2011年採用の研修医1,753名に対し, 研修開始時と開始3カ月後に, 抑うつ反応, 勤務時間, ストレス要因, ストレス緩和要因などに関するアンケート調査を行い, 2004年の同様の調査と比較した.
結果 : 研修開始3カ月後, 抑うつ状態の研修医は30.5% (新規うつ状態率19.6%) で, 2004年より有意に減少していた. 一因として勤務時間の減少, ストレス要因, 緩和要因の改善が考えられた.
考察 : 依然多くの研修医が抑うつ状態となっており, 研修環境の更なる改善が望まれる.
背景 : 医学生の能力を総合的に分析する方法は未確立である. 卒前での総括的評価を総合的に分析し能力特性を明らかにすることを試みた.
方法 : 平成26年度卒業生を対象に, 共用試験 (CBT, OSCE), 実習後OSCE, 選択臨床実習評価, 試験総合計, 国試不合格および留年の有無を用いて多変量解析した.
結果 : 主成分分析で各総括的評価の第1主成分は総合的学力, 第2主成分は実習への参加度と推測された. クラスター分析では第1・第2主成分の数値により分類され, 国試不合格者と留年者は特定のクラスター群で有意に多いことが判明した.
考察 : 各種総括的評価を統合して分析することで学生個々の能力特性を捉えられることが示唆された.
1) 日本医療機能評価機構の公開データから検索した研修医の指導に関連したインシデント・アクシデント事例73例を検討した.
2) 事例発生の内容は, 指導医が直接指導中に発生, 指導医が近くにいたが離れていて研修医1人で実施して発生, 指導医が不在中に研修医1人で実施して発生の3つのカテゴリーに分類可能であった.
3) 再発防止対策は, 指導医, 研修医個々の取り組みはもとより, 卒後臨床研修センターや施設内の各部門・部署, および医療安全管理部門のさらなる協働によるシステム整備が必要なことが示唆された.
本論文は, 本誌47巻6号 (2017年1月発行) に掲載された「招待論文 : 臨床家のための質的研究」の後編である. 前編では研究対象への向き合い方を中心に論を展開した. 後編では質的研究の問いの重要性とその立て方に着目する. まず質的研究で重要なのは方法よりも問いであることを覚えておきたい. 大量のデータを一気に扱うための解析手法が種々存在する統計調査と比べると, 質的調査の方法は原始的である. どのような名前の付いた方法であっても, それらはデータを意味別に分類する方法, あるいはデータを時系列に並べ替える方法を提示しているだけであり, データをいかに読み取るかという質的研究の本質を解説してはいない. データの読み取り方は方法ではなく, 問いに関わる部分であるからだ.
したがって本稿では, よき問いを立てるための5つのポイントを紹介する. その5つとは, (1)支援ありきの研究を脱すること, (2)予備調査を実施すること, (3)データと先行研究を相互参照すること, (4)先行研究に横たわる思想を把握すること, (5)「経験・想い・態度」研究をできる限り避けること, である. また最後に, 臨床家が卒業論文のために行った調査が最終的に原著論文として結実した研究を, 初学者の臨床家でも立てられるよき問いの実例として紹介する.
地域包括ケアの時代を迎えて, 遠隔医療の普及が望まれている. 日本遠隔医療協会は, 厚生労働省事業の「遠隔医療従事者研修」の採択を受け, 研修を実施した. 本稿は, 研修後の受講者に対するアンケート結果について報告する. 参加者は70名で, アンケート回収数は47名 (67.1%) であった. 回答者は医療職 (36.2%), 企業関係者 (25.5%), 病院関係者 (17.0%), 行政関係者 (10.6%) と多職種からなり, 遠隔医療に関する知識も異なることから, 満足度にばらつきが見られた.