医学教育
Online ISSN : 2185-0453
Print ISSN : 0386-9644
ISSN-L : 0386-9644
54 巻, 3 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
総 説
  • 松本 浩司
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 54 巻 3 号 p. 235-243
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

     近年, わが国の医療者教育で芸術の活用が注目されつつある. 芸術統合型学習やその関連概念を整理したうえで, 医療人文学の概略を論じつつ, その新しい教授方法としての意義を論じた. その意義として, (1)医療・疾病とのかかわりを含む人間のありようを, 事例を通じて感情・共感を伴って理解すること, (2)視点取得や多面的な見方を涵養すること, (3)臨床への転移 (応用) のために多様な文脈での学習を促すこと, (4)医療に関する価値観を育てること, (5)創造的に統合的な理解を深めること, (6)リサーチマインドを育てること, (7)医療における芸術の有用性を実体験することを挙げた.

  • 瀬戸山 陽子, 川上 ちひろ, 青木 昭子, 堀田 亮
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 54 巻 3 号 p. 245-254
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

     医療系も他分野の大学と同様に障害のある学生 (障害学生) の数は増加している. しかし支援体制の整備は進んでおらず, 教職員は現場で困難を感じてきた. 米国では医学生の約1割が自分に障害があると表明しており, 授業, 演習, 実習別に合理的配慮が提供される. 国などが障害のある医療系学生への支援方針を示し, 大規模な当事者調査も実施されて, 課題も明らかにされてきた. 本稿では, 海外の機関向けガイドや合理的配慮事例を紹介し, 支援体制構築に向けた論点の整理を行った. 医療者集団が多様になることは, 誰もが安心して受けられる医療につながることであり, 日本でも医療系の障害学生の全体像を把握し, 支援体制の構築が急がれる.

  • 木村 武司, 錦織 宏
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 54 巻 3 号 p. 255-265
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

     フィードバックは医学教育の様々な場面で行われる教育活動であり, これまで盛んに議論されてきた. 2008年にRidderらが「学修者パフォーマンスの改善を意図した, 学修者に見られたパフォーマンスと到達点 (コンピテンシー) との比較についての情報」と定義し, 以後は効果的なフィードバックについて, 指導者を中心とした行動主義的なアプローチから受容者である学修者を中心に据えた関係性や, 学修者に潜在するフィードバックを活かす能力 (自己調整学修, フィードバックリテラシー) などへと, より多面的に捉えるように議論が展開されてきている. 本稿ではその変遷をナラティブ・レビューの形で概説し, 今後の教育実践や医学教育研究に貢献する.

短 報
  • 菅谷 涼, 中村 晃久, 松山 泰, 小谷 和彦
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 54 巻 3 号 p. 267-271
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

    背景 : 本邦医学部医学科の早期体験実習の実施状況を検討する. 方法 : 公開されているシラバスを基に医学科における同実習の有無, 実施場所, 体験対象 (医療者/非医療者) を調べた. 結果 : 78大学のうち, 74大学 (95%) で計173科目の実習がみられた. 51大学 (69%) で学内と学外の実習を組み合わせていた. 実施場所と体験対象については, 学内実習では81%が医療者体験, 学外では47%が非医療者体験, 学内外では61%が医療者と非医療者の両体験を主体にしていた. 結論 : 医療者に留まらない, 学内外での実施が多いことが判った. この全国的な動向は, 今後のECEの在り方を議論し, 企画する上での参考資料になり得る.

実践報告―新たな試み―
  • 川上 ちひろ, 道信 良子, 早川 佳穂, 今福 輪太郎, 藤崎 和彦, 牛越 博昭, 西城 卓也
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 54 巻 3 号 p. 273-280
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

     卒前の医学教育では, サイエンスとアートの両輪の学びが求められる. そのための一手法として社会学等で発展しているアートベース・リサーチを応用した学習モデルを開発したので概説する. これは医学生自身が地域の医療保健福祉問題の解決にせまるべく, 芸術作品制作を行いつつ研究を進め, 学びを深め学生間で共有する方法である. 構成として, 【 I 】下地づくり, 【 II 】素材収集, 【 III 】フィールドワークによる作品制作, 【 IV 】対話型作品鑑賞の4つのSTEPから構成される. 実習では学生が自己主導的に個性と主張溢れる作品を制作し, それをもって実習をふりかえる. 見失われがちな医のアートを体感的に学ぶ新しい医学教育モデルとなりうると言える.

  • ― "多職種連携モヤっと研究会" の取り組み―
    佐野 樹, 森下 真理子, 錦織 宏
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 54 巻 3 号 p. 281-287
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

     専門職間で起こる思いのすれ違いを「モヤっと」と名づけ, それを医療/教育現場での連携に活かすため, 2014年から研究会を立ち上げた. 多施設の多職種で月1回1時間のオンライン研究会を行い, モヤっとした経験について内省を行った. 本稿では研究会について振り返る中で, 会の発足と歩み, 会の中で起きている学習プロセスや根拠となっている理論について述べる. さらに研究会での実践とその変化について共有しつつ, 多職種連携 (教育) での内省には, 専門領域内でする一次内省と, 領域の外から自らの専門を見つめる二次内省の両輪が必要であることを示す.

招待論文
  • ―「マインドフル・プラクティス」の授業実践とその教育効果―
    土屋 静馬
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 54 巻 3 号 p. 289-295
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

     医療者教育の目的が, "優れた医療" を提供する医療者を育成することであるならば, 現在の医療者教育は非常に多くの課題を残している. なぜなら, "優れた医療" の実践の前提となる患者との深い相互理解, 医療者の自己理解, および人間理解について, 十分に言語化されておらず, 教育の方法も整理されていないからである. 一方で, 1999年にJAMAに投稿された「マインドフル・プラクティス」は, マインドフルネスを利用した教育が人間性教育の発展と医療者の医療の質を変える可能性を示唆し, その後, その教育が北米や欧州にて大きな広がりを見せている. 本稿では, 米国ロチェスター大学を中心に実施されている「マインドフル・プラクティス」による教育アプローチを紹介し, 医療者教育の素材としてどのように活用されうるかを議論する.

書評
部会報告 : 第21期プロフェッショナリズム部会 プロフェッショナリズム教育方略 連載第18回
  • 松山 泰, 宮田 靖志
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 54 巻 3 号 p. 297-304
    発行日: 2023/06/25
    公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

     Keganの「構造発達理論」と結び付けて, 医師のProfessional Identity Formation (PIF) の発達段階を示したのがKaletらである. また, KaletらはPIFの発達段階を評価するツールとしてProfessional Identity Essay (PIE) を開発した. 本稿では自治医科大学の地域医療臨床実習でPIEを使用し, 医学生に内在するプロフェッショナリズムと紐付けて現在と未来との自己像を描出することで, 臨床実習における担当教員との学びの効果を高める教育方略を紹介する. その目標は, 医学生がPIEの記述に基づいてプロフェッショナリズムを意識して自己省察し, 自分の将来像と共通点を持つ担当教員のプロフェッショナルらしい学習行動にしっかりと着目するよう, 自ら動機付けることである. この省察, 学習行動, 動機付けはZimmermanが提唱した自己調整学習 (self-regulated learning : SRL) の基本要素である. 本教育方略は筆者が提唱しているPIF-SRL理論を, 実践形態へと落とし込んだものといえる.

訃 報
掲示板 (書評・文献紹介)
掲示板 (文献紹介)
掲示板 (意見)
掲示板 (アナウンスメント)
機関会員のページ
feedback
Top