同意が得られた39大学の地域枠医学生を対象に, 奨学金返還の可能性とその関連要因を明らかにするため自記式質問紙を用いて調査した. 奨学金返還の可能性を「とてもある」または「少しある」と回答したのは112名 (37.8%) だった. 返還可能性との関連要因は, 女性 (オッズ比3.2, 95%信頼区間1.5-6.8), 地域枠選択理由が「医学部に入学しやすいから」 (同2.9, 1.2-6.8), 私立大学 (同10.3, 2.6-40.3), 就労義務によるストレスが多い (同2.4, 1.3-4.3) だった. 地域枠学生の選抜方法の工夫や, ストレスを感じる学生に配慮した制度調整が, 奨学金返還を抑制するうえで重要と考えられた.
背景 : プロフェッショナリズム教育の実践は試行錯誤が重ねられている.方法 : シナリオを材料にしたロールプレイとグループ討論でキーワードを選び, KJ法で関連図を作成するワークショップ (WS) を考案, 研修医に実施し, 質問紙で評価した.結果 : ほとんどが関心を持ち (10段階レーティングスケールで平均8.5±1.25,中央値9), 振り返りができた (8.05±1.43,8) と答えた. 自由意見から「楽しい学習」「多様な価値観」「振り返りの大切さ」「目標の把握」「理解と実践の難しさ」「WSへの提言」の6つのテーマが得られた. 関連図は患者中心の概念にまとめられた.考察 : WSが実践的手法の一つとなる可能性が示唆された.
医学部での教育は, 医師となる者に対して初めの6年間に行われる初期教育と位置づけられる. 卒前医学教育は, 2000年頃から始まった改革のなかにあり, モデル・コア・カリキュラムを策定して共用試験が実施され, そこで一定の知識・技能・態度を保証された者が臨床実習に進んでいる. その臨床実習は参加型となるように質・量ともに大きく変貌しつつある. 学部教育の質保証の観点から医学部分野別認証 (いわゆる国際認証) が進められている. アウトカム基盤型教育の考えにたち, 卒前と卒後が一貫したアウトカムに基づいて学習方略や評価を共有していくように変化が進んでいる.
背景 : 欧米では製薬企業と臨床医の関わりについての卒前教育への関心が高まっているが, 国内の卒前教育については報告がない.方法 : 国内医学部医学科における医薬品プロモーションに関する卒前教育のプログラム実施状況を明らかにすることを目的とし, 自記式調査票を用いた横断調査を行った.結果 : 44大学から協力が得られ16大学 (36.0%) からプログラムがあると回答した. しかし研究倫理や利益相反を扱う内容が多く, 臨床医が関わる医薬品プロモーションについてのプログラムは限られていた.考察 : 製薬企業と臨床医の関係について, 特に臨床医が関わる医薬品プロモーションを題材とした卒前教育についての議論検証が必要である.
日本医学教育評価機構 (Japan Accreditation Council for Medical Education : JACME) が2015年に発足し, 2017年に世界医学教育連盟の認証を受けて2017年4月1日から医学教育分野別評価が正式に始まった. 医学教育分野別評価は, 受審医学部の自己点検評価による内部質保証とJACME評価委員による外部質保証からなり, 公正に実施される. 受審に当たっては医学部にとって負担があるものの, 受審することで教育の改善と向上に有意義であるとの意見が多い.