瀬戸内海淡路近海産(1931年10月末)のオホダヒ(體重2310g雄)について榮養化學的研究を試みた結果を要約せば次の通りである。
1) 食膳にのばし得る肉量は全體重の約50%である。
2) 料理の慣習によつて鯛肉を頭肉、脊肉、腹肉、尾肉の4部に分ちその各々に就きて普通成分、汁液のpaH價並びに汁液中の窒素の形態等を定量した。その結果一般に食味優越と見られて居る腹肉、頭肉等は脂肪含量に於て他を凌駕して居ることを示し食味と成分の量及び質並びに肉組織等の間の相關關係について推論した。
3) 鯛肉蛋白の窒素の含量並びにその分布を主としてVan Slyke氏法によつて定量しその結果Tryptophan, Lysine, Arginine等の含量豊富なることを指摘して榮養化學上優秀な蛋白であることを明らかにした。
4) 鯛肉蛋白中の窒素の形態は各部位別には截然たる差異を認め難い。從つて此の差異によつて鯛肉の部位別食味の異動を説明出來ないことを明示した。
5) 呈味良好なる鯛ダシ汁中には約0.5%の蛋白約0.25%の脂肪約15mg/100ccのAmino-Nが存在する。
終りに本研究を行ふに當り終始御懇篤なる御指導を賜りし恩師近藤金助教授に對し謹みて感謝の意を表し併せて實驗中多大の助力を辱うせし同研究室の諸氏に對し深謝す。
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