日本化學會誌
Online ISSN : 2185-0909
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61 巻, 7 号
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  • 三浦 彦次郎
    1940 年 61 巻 7 号 p. 647-656
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    (1) 澁黒湧泉中に含有せられる多量のCl′はH.と共存する事からその大部分は鹽化水素として岩漿より水蒸氣と共に發散し來れるものが上昇途中地下水と遭遇し鹽酸水溶液として湧出せるものなる事を考察した.而して鹽化水素は岩漿中に含有せられる鹽化物が加水分解を受け,更にCl2, O2, H2O等との平衡の結果として主としてHClとして噴出すべき事を考察し更に大沸湧泉に含有せられるHClが水蒸氣と共に噴出し來る場合水蒸氣に對し體積にて約1.3%に當ると推算せられる事を述べた.
    (2) 澁黒温泉地帶噴出のCO2の成因として岩漿に含有せられる炭酸鹽が分解を受けCO2を生じそれがCO, C, H2O, HCl等との平衡の結果として主としてCO2として發生すべき事とHCl瓦斯が上昇の途中比較的低温なる處にて炭酸鹽に作用しCO2を生ぜしむるものもあるべき事とを考察した.
    (3) 澁黒温泉地帶噴出のH2Sの成因として岩漿に含有せられる硫化物が分解を受けH2Sを生じそれがSO2, S2, H2O, H2, CO2, CO等との平衡の結果澁黒温泉地帶噴出瓦斯の如く主としてH2O, H2S, CO2として發生しSO2, CO, H2を含有せぬ爲には岩漿が高壓なれ共温度は比較的に高温ならざる事を考察した.尚HCl瓦斯が噴出の途中硫化物に作用して生成するH2Sき混入すべき事を考察した.
    (4) 澁黒温泉地帶噴出瓦斯中のN2の成因として岩漿中に分解する事なくH2O, HCl, H2S, CO2と窒化物が共存し得るとは考へられない事であるから主として地下水に溶存し來るN2が加熱によつてN2瓦斯として發生するもので尚噴氣上昇の途中地下に混入せる外氣が噴氣孔壁より吸引せられ混入するものもあり得る事を考察した.
    (5) 澁黒温泉地帶噴出瓦斯中のO2の成因として岩漿よりH2Sその他の還元性瓦斯とO2と共存發生するとは考へられない事であるから噴出或は湧出の途中比較的低温部にて地下水溶存のものか噴氣孔壁よりの吸引によつて外氣を混入せるに因ると考察した.而してかくして混入せるO2も湧泉中に鐵鹽を含有する時はH2Sと作用して次第に消耗せられ減少する.從つて空氣が混入してもN2/O2の値はO2の消耗せられるに從つて大となる.然るに空氣のN2/O2値よりも小にして地下水溶存と思はれるN2/O2値より大なるもののある事は地下水溶存のN2, O2の混入するもののあるべき事を考察した.
  • 水蒸氣の放電(第八報)
    大原 英一
    1940 年 61 巻 7 号 p. 657-666
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    既に報告した如く水蒸氣流に放電を施して之を液態酸素に浸けたトラツプに通じる時には水素原子と酸素分子との反應に酷似した幾多の現象を見た.本報に於てはGeib, Hart_??_k1)の行つた水素原子と酸素分子との實驗を繰返し,更に彼等の實驗以外の異りたる二三の實驗を試みて次の如き結果を得た.
    1) 用ひる水素と酸素との容量比を約2:1とすれば,トラツプに得られる生成物を室温にまで温めるときには後に約68%の濃厚なる過酸化水素が殘り,此の際分解して發生する酸素の量は後に殘る過酸化水素の量に對して48cc/g H2O2であり(即ち發生酸素と過酸化水素とのモル比は0.0728),水蒸氣放電の場合よりも著しく小である.
    2) トラツプに於ける生成物が温まる際に分解し始める温度は約-117°Cにして,この温度は水蒸氣放電により得たる生成物が分解し始める温度-110°~〓115°C(第七報)と大體一致する.
    3) 放出される酸素の分量は温め方の遲速には全く無關係に同一である.此の點も水蒸氣放電の場合と全く一致する.トラツプの温度上昇速度が同一である場合には(放出酸素-時間)-曲線は水蒸氣放電の場合と全く同一の型である.
    4) 反應管の温度を-130°Cにする時には平均濃度11%の過酸化水素を得, Geib等の實驗と一致してゐる.
    5) トラツプ内の過酸化水素生成の場所に水蒸氣を吹き付け共に凝固させると過酸化水素の生成量及び放出酸素の量を増加する.水蒸氣放電による場合にも同様の結果を生じる.
    此等の實驗結果はGeib, Har_??_kの水素原子と酸素分子との低温反應と放電水蒸氣の低温反應との酷似を益々明瞭にする.故に大體に於て後者の反應も亦放電によつて水から水素原子と酸素分子とが生じ,之等が低温に於てGeib, Harte_??_kの反應を起すものであると推定する.
  • 1940 年 61 巻 7 号 p. 666
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 固體及び熔融セレンの蒸氣壓と其等蒸氣の分子量の測定
    丹羽 貴知藏, 柴田 善一
    1940 年 61 巻 7 号 p. 667-676
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 鳴子間歇泉の研究(第一報)
    野口 喜三雄, 福島 隆太
    1940 年 61 巻 7 号 p. 677-682
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1) 鳴子湯泉樓間歇泉小噴孔の週期
    昭和11年4月6日昭和12年7月8日
    噴出繼續時間5時間1分3時間1分
    噴出休止繼續時間2時間35分4時間19分
    合計7時間36分7時間20分
    2) 大噴孔は常に小噴孔より1分先に噴出し2分間噴出を繼續すれば止む
    3) 湯泉樓間歇泉小噴孔に就て深さ1m30cm,大噴孔に就ては1m70cmの深さに於て温度の時間的變化を測定したるに噴出直前は稍温度高く,噴出休止直後は3~4度の温度降下が認められた.
    4) 湯泉樓間歇泉大小兩噴孔に就て深さに依る温度變化を測定したるに大小兩噴孔は同一の深さに於てはほゞ同一の温度を示し,深さ1m30cmにて既に100°を示し,深さ6m30cmに於ては111.8°を呈した.
    5) 湯泉樓間歇泉小噴孔に就て噴出開始より噴出休止に至るまでの時間に於て,吹上げる熱湯を時間の經過に從ひ14本の〓に分別採水し,其化學組成の變化を檢したるに
    i) pHは噴出初期には7.7であるが,噴出を繼續するに從ひ増大し,噴出末期には8.0となる.
    ii) 蒸發殘滓は噴出初期には2004mg/lであるが,噴出を繼續するに從ひ著しく減少する.
    iii) Cl-は噴出の初期には601.9mg/lであるが,噴出を繼續するに從ひ著しく減少する.
    iiii) SO4-はCl-とは逆になり,噴出初期には436.6mg/lであるが噴出を繼續するに從ひ増大する.
    v) 重水濃度は噴出初期には+1.5γで僅に東京市水道水より重い程度であるが,これが噴出を繼續するに從ひ重くなり,遂に+4.0γに逹し後再び減少して輕くなり,最後に再び重くなり遂に+4.0γに逹する.
    6) 湯泉樓間歇泉に於て檢出されたる天然瓦斯はN2が96.5%を占め,之にCO2, O2の少量混じたものであつた.
  • 左右田 徳郎, 江上 不二夫
    1940 年 61 巻 7 号 p. 683-685
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    グルコーゼを常法でスルフャン化する場合當初の反應では不安定なグルコーゼヂ硫酸が生成することをトリパフラビン沈澱法で確めた.從て從來の合成法によるグルコーゼモノ硫酸は其後の單離操作により生成するものでその中には少量のグルコーゼヂ硫酸が混在する.このグルコーゼ-6-モノ硫酸をヒドラヂンで分解すると反應は僅かしか進行しないのはヒドラヂンは6-位置硫酸基には作用せずグルコーゼ環にあるもののみを分解するためと思はれる.
  • 5-メチルチオバルビツル酸の第一銅錯鹽並に第二銅錯鹽の構造に就て
    西川 武一
    1940 年 61 巻 7 号 p. 686-696
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    氷點降下及び電氣傳導度測定の結果から5-メチルチオバルビツル酸第一銅ナトリウムの分子式は[C5H4O2N2SCuNa]2であるとしそれが[C5H4O2N2SCu]--2と2Na+とに電離するとした.同樣にして第二銅誘導體も二量體であつて[C5H4NaO2N2SCu-]2並に[C5H4O2N2SCu(OH)Na]2等で表されるとした.
    この種の銅錯鹽のナトリウム誘導體は水溶液に於て不安定であるのにこの場合のナトリウム誘導體は分解しない.又pHの値があまり大でない.それ故ナトリウム誘導體の構造を共鳴によつて説明した.
    ふメチルチオバルビツル酸の銅鹽の鹽化水素錯鹽,水化物等の構造式を提出した.
  • 5-メチルチオバルビツル酸の第一銅鹽と第二銅鹽の間の關係
    西川 武一
    1940 年 61 巻 7 号 p. 697-700
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1. 5-メチルチオバルビツル酸のアムモニア溶液に於てアムモニアの濃度が0.8N位ならば酸化第一銅を加へるときは勿論のこと水酸化第二銅を加へるときでも5-メチルチオバルビツル酸の第一銅誘導體を生ずる.
    2. 反對にアムモニアの濃度が3.6N位のときは酸化第一銅,水酸化第二銅何れを加へても5-メチルチオバルビツル酸の第二銅誘導體を生ずる.
    3. 5-メチルチオバルビツル酸第二銅鹽化水素は水で處理して水化物を作ることを數囘繰返すと大部分第一銅誘導體になる.
    4. 5-メチルチオバルビツル酸第一銅鹽化水素は水化物になして熱すると完全に第二銅誘導體に變る.
  • 5-メチルチオバルビツル酸及び4-イミノ-5-メチルチオバルビツル酸に於ける4位置のオキソ基及びイミノ基の比較
    西川 武一
    1940 年 61 巻 7 号 p. 701-702
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    オキソ基(或はオキシ基)とイミノ基(或はアミノ基)とは性質が類似してゐるから5-メチルチオバルビツル酸と4-イミノ-5-メチルチオバルビツル酸とは類似してゐる.既ち何れも酸で,水に溶け難くアルカリによく溶け,結晶水を有するナトリウム鹽を生ずる.ナトリウム鹽に有機沃素化合物を作用させると2-メルカプト化合物が出來る. 2-メルカプト化合物も酸性を示しアルカリに溶ける.最もよく類似せる點はナトリウム鹽が水1分子結合せる形で存在することである.一方鹽基性はイミノ基がオキソ基より強く-M effect又は-I effectはオキソ基の方が強いため相違點が現はれる. 4-オキソ化合物は4-イミノ化合物より酸性強く4-オキソ化合物はヂスルフィドを作る.又銅錯鹽に於て種々の相違點あり殊に著しいのは4-オキソ化合物の銅錯鹽は異常原子價の銅の化合物を作ることが出來る點である.
  • 田所 哲太郎, 高杉 直幹
    1940 年 61 巻 7 号 p. 703-704
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    著者等は既にNucleotidの構造を有するものゝ強力なるAscorbin酸オキシダーゼ作用を有することを報告せるが更に鮭肝臟蛋白質に就き同一の事實を確認せり.
    (1) 鮭肝臟より調製せる蛋白質溶液の吸收スペクトルは明かに260mμにあり〓Nucleotidなることを示せり.
    (2) 該蛋白質の化學的處理を異にせるものも依然としてNucleotidの吸收スペクトルを示すものは常にAscorbin酸オキシダーゼ作用の強力なる事を確認せり.
  • 1940 年 61 巻 7 号 p. 704
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 2, 4-Dimethy-3, 6-anhydro-α-methyl-d-galactosideに對する鹽化水素メタノールの作用
    荒木 長次
    1940 年 61 巻 7 号 p. 705-711
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    2, 4-Dimethyl-3, 6-anhydro-α-methyl-d-galactosideに2%鹽化水素メタノールを室温にて作用せしめ,その反應生成物を更に沃化メチル及び酸化銀にてメチル化して2, 4-Dimethyl-3, 6-anhydro-β-methyl-d-galactosideの外に2, 4, 5-Trimethyl-3, 6-anhydro-d-galactose dimethyl-acetalと決定し得べき物質を單離し得たり.仍て第六報1)に於て2, 4-Dimethyl-3, 6-anhydro-β-methyl-l-galac-tosideを上と同様に處理して得たる沸點84~86°/0.075mm, n25D1.4435, [α]D-24.0°(水)なる物質はその左右像たる2, 4, 5-Trimethyl-3, 6-anhydro-l-galactose dimethyl-acetalなること明かとなれり.
  • 1940 年 61 巻 7 号 p. 711a
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 1940 年 61 巻 7 号 p. 711b
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 1940 年 61 巻 7 号 p. 711c
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
  • 重合體還元物の概略的分析結果に就て
    松井 清忠
    1940 年 61 巻 7 号 p. 712-716
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1. アセトアルデヒドにピペリヂンを加へ室温で成るべく高度に重合させた.この重合體に接觸的水素添加をして1價及び多價アルコールを得た.
    2. これらのアルコールの中に水酸基に屬しない酸素と結合してゐるものがあることを認め,その酸素をエーテル結合酸素であるとした.
    3. この重合體の中に炭素環状化體の存在することを推定した.
  • 新高速不飽和ステリンC27H40Oの存在に就て
    土星 知太郎
    1940 年 61 巻 7 号 p. 717-718
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    鳳仙花種子油不鹸化物中には主要成分として融點160~161°(アセチル化物の融點170~171°), [α]20.2D=+7.66°(2%エーテル溶液)なる二重結合4個を有し,從來檢出されたるステリン中最も不飽和度高き特有の高度不飽和ステリン存在す.之にバルサミナステロール(又はバルサミナステリン) (Balsaminasterol; Balsaminasterin)なる名稱を與へたり.
  • 所謂“繊維亞鉛鑛”
    岩崎 岩次, 渡邊 得之助, 安藤 良一
    1940 年 61 巻 7 号 p. 719-725
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    栃木縣足尾,青森縣湯の澤,宮城縣細倉,同縣大土森の諸鑛山産の繊維亞鉛鑛と言はれてゐる鑛物をX線によつてその結晶構造の上からしらべた結果はいづれも閃亞鉛鑛の結晶構造を有するものであつて,その格子常數は大體に於て大差なく, αo=5.39~5.41〓.である事がわかつた.細倉,大土森産の繊維状のものは繊維軸を[111]とする閃亞鉛鑛である事を知り得た.その結果から,所謂本邦産の繊維亞鉛鑛の多くはたゞその外觀を異にしてゐる閃亞鉛鑛なることを確め得た.
  • 海水及び苦汁に於ける銅含有量に就て
    石橋 雅義, 倉田 耕造, 廣部 次夫
    1940 年 61 巻 7 号 p. 726-728
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    1. 海水及び苦汁に於ける銅の分離-定量法を提唱す.銅は最初特に添加せるにニッケル又はカドミウムと共に硫化物として同時沈澱せしめ,最後にベンゾインオキシム鹽となして秤量したり.
    2. 銅の含有量は各1lに就きて,海水に於ては約0.03mg,苦汁に於ては約0.43mgなる事を知り得たり.
    3. 製鹽工業に於て海水中に含有せらるゝ銅は一分苦汁中に移行するを確かめ一部分食鹽析出部に吸着移行するを推察し得たり.
  • バッファーの種類によるアスコルビン酸空氣酸化の相違
    篠原 龜之輔
    1940 年 61 巻 7 号 p. 733-740
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    アスコルビン酸空氣酸化の状態はバッファー基質の種類によつて異なる.枸櫞酸バッファーは該酸化に對して強力な阻止作用を有する.フタール酸,醋酸及び燐酸バッファー中に於ける該酸化は極微量(10-7M或は其以下)の銅鹽によつて促進せられる.此の事實はGhosh等の結論と相反する.枸櫞酸バッファー中に於ける該酸化は100%酸化に迄進行するに反し,他の3種のバッファー中に於ける酸化は中途に於て停止し,猶多量のアスコルビン酸は殘存する.該空氣酸化は夾雜せられた銅鹽の觸媒作用に因ると考へられる.何となれば精製した試藥を用ひて施行した醋酸バッファー中の實驗に於ては極微に酸化が起こるに過ぎない.該酸化が中途に於て停止する原因は次の事實に存する. Cu++がアスコルビン酸によつて先づCu+に還元せられ,次に此Cu+がバッファー基質と解離度の極小さい錯鹽を形成するか或は此鹽からCu2O又は金屬銅が沈澱となつて析出し,觸媒作用を有するCuイオンが反應液から消失する.從來の研究者が上記の現象に注意しなかつた理由は彼等の觀察時間が僅か2時間を出でなかつた事,或は比較的大量の銅鹽を添加して實驗を施行した事にある.
    該酸化過程中生成する過酸化水素はモリブデン酸-沃度カリ法により定量的に測定せられた.
  • 珪酸亞鉛螢光體の螢光スペクトル及び螢光の理論
    上原 康夫
    1940 年 61 巻 7 号 p. 741-751
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    (1) ZnOとSiO2の各種の割合より成る珪酸亞鉛マンガン螢光體の2537Åの紫外線及び陰極線の刺戟に依つて生ずる螢光スペクトルを25°C及び-185°Cの温度に於測定し,分光寫眞測光に依つて其の螢光スペクトルのエネルギー分布を求めた.
    (2) 各種の組成を有する珪酸亞鉛螢光體の螢光の明るさを測定し,メタ珪酸亞鉛螢光體は正珪酸亞鉛と無水珪酸との單なる混合物としてのみ考へることの出來ないことを示した.
    (3) 珪酸亞鉛螢光體のエネルギー準位を測定し,吸收スペクトル,刺戟スペクトル,螢光スペクトル及び光電傳導現象等に對する理論的解釋を與へた.
    (4) -185°Cに於ける螢光スペクトルを測定し, 5083Å及び5155Åの位置に線スペクトルを生じ, 5255Å附近及び5500Å附近より6500Å附近に亙る幅の廣い夫々α及びβ螢光帶(著者の命名)の存在することを確め,之等の螢光スペクトルは活性中心に於けるMnの中性原子の次の様な電子遷移に基くことを示した.
    3d64s6D→6S5/2=6100Å(β)
    3d54s4p〓sP5/26S5/2=5255Å(α) sPsp7/26S5/2=5155Å (線スペクトル) sP7/26S5/2=5083Å (線スペクトル)〓-185°C
    3d64s〓4D7/26S7/2=5100Å (線スペクトル) 4D5/26S5/2=5180Å (線スペクトル)〓-250°C
    (5) 紫外線及び陰極線刺戟に依る場合の活性中心に於ける刺戟エネルギーの吸收の機構に就て論じた.
  • 立田 晴雄
    1940 年 61 巻 7 号 p. 752-756
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    5, 7-ヂオキシフラバノンの合成は既に知られて居る如くニトロベンゾールを溶媒としフロログルチンと桂皮酸クロリドを無水鹽化アルミニウムの存在で縮合するがその收量は從來の報告では理論量の20%程度である.本報文は先づこの收量増加に就て反應條件を考慮の上實驗の結果通常のフリーデル-クラフト反應の如く固體鹽化アルミニウムを加へる代りにそのニトロベンゾール溶液を徐々に滴下し從來より長時間反應せしめ,收量最良の時56%通常40~48%に上げることを得た.既ち從來の倍量である.レゾルチンを用ひ同様に7-オキシフラバノン合成を試みたが之はフラバノン,カルコンの混合物を生ずるため前者の如き良い結果を得なかつた.尚粗オキシフラバノンの精製に就て實驗し眞空昇華法及無水硫酸マグネシウムを用ひるクロマトグラフ分離は單なる再結晶より遙に良いことを見出した.
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