日本化學會誌
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61 巻, 9 号
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  • 酸性溶液中の自家酸化の否定(Ghosh説に對する反駁)
    篠原 龜之輔
    1940 年 61 巻 9 号 p. 871-880
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    遊離エネルギー變化と自家酸化の關係を論じ,アスコルビン酸は酸性溶液に於ては自家酸化を起さない事を次の事實から結論した.之は(GhoSh1)等の説を反駁するものである.
    1) アスコルビン酸燐酸バッフアー溶液(pH 5.5及び7.0)の空氣酸化を起すものも約3時間窒素中に貯へた後には之を起さない.現に銅鹽を添加した反應液も同様である.
    2) 沃度カリはアスコルビン酸燐酸バッファー溶液の空氣酸化を阻止する.然し其の作用は瞬間的に行はれず,時間の經過を俟て完了する. Ghosh等が沃度カリは阻止力なしと結論したのは時間的觀察を閑却した爲である.
    3) グラヂオラス葉から抽出した天然アスコルビン酸も合成品と同様な酸化經路を迪る.故に天然品が特に酸化阻止物質を夾雜するとは考へられぬ.
    4) アスコルビン酸ナトリウムの再溜水溶液(pH 6.2)は殆ど空氣酸化を起さない.之に據つても燐酸バッファー中に起る該酸化は夾雜物(銅鹽)に起因する事が判斷せられる.
    5) 猶上述結論を抽出するに必要な事實,即ち微量分析を以てしても檢出し得ない微量の銅鹽(10-8~10-7程度)も尚能く酸化促進作用を有する事實は第I及びII報に報2)ぜられた.
  • 醋酸バッファー中の空氣酸化1銅鹽の影響
    篠原 龜之輔, 稲葉 安養子
    1940 年 61 巻 9 号 p. 881-888
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    特に注意して精製した試料を用ひて作成した醋酸バッワァー中に於けるアスルビン酸空氣酸化に關して次の諸事實を究明した:
    1) 酸性バッファー中に於ては殆ど全く空氣酸化が起らない.
    此の事實は第III報1)の結論,即ち“アスコルビン酸は酸性溶液に於て自家酸化を起さず”との事實を單的に證明するものである.
    2) 通常の蒸溜水を用ひて作成したバッファー中に於ては著明な空氣酸化が起る.然し僅かに〓囘の再溜によつて該酸化を防止し得る.
    3) 醋酸バッファー中のアスコルビン酸銅接觸空氣酸化麟酸バッファ中の其と同様に醋酸銅の沈澱が生起するpH領域(約6以上)に於て反覆性に乏しい.
    4) 銅鹽を含む醋酸バッファー(pH 6.1)を作成後實驗開始に到る迄放置する時間が大となる程該酸化の初速度は小となり且酸化停止は早くなる.
    3) 及び4)の現象は醋酸銅の沈澱生成に起因する.
    5) 醋酸バッファー中に於ても亦燐酸バッファー中に於けると同様に該酸化は中途惇止を來す.而して銅鹽濃度大なる程停止に到る時間は長引く.此事實は第II報2)中に報じた第4a式の機構を以て説明し得る.
    6) 銅鹽の接觸作用は約10-sM以上に於て觀測し得る(觀測時間7時間).酸化初速度:銅鹽濃度は廣範園に互つては曲線をなすが, 10-7M以下の銅鹽濃度に於ては直線を以て表し得る.此事實はヂェチールヂチォヵルバミン酸微量定量法によつて定量し得ざる極微量の銅鹽を該酸化法により定量し得る事を示す.
    7) 該酸化初速度はp H6以下に於てはpHの増大に伴ひ指數凾數的に増大する.而して約6.1に酸化最適pHが存する.其以上のpHに於ては(pH 7まで)酸化初速度は再び低下する.
    此最適pHは海老原3)が彼の製作したアスコルビン酸オキシダーゼの其として報じた数値と一致してゐる.
  • 煙草煙中の一酸化炭素(第一報) (測定方法)
    福島 好郎
    1940 年 61 巻 9 号 p. 889-903
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    煙草煙中の一酸化炭素の既往の測定値は測定者により甚だしい懸隔がある.從來の研究は主として医學關係者により行はれ,その測定方法,操作の檢討せるもの少く,斯くして得た少數の實験結果につき医學上より論議せる揚合が多い.依つて著者は先づ測定方法,操作を檢討し,次いで種々條件を異にする煙草試料,煙試料につき極めて多數の試驗を行ひ,測定者により差異の生ずる理由を明かにした.
    先づ蟻酸,硫酸より得たる既知量の一酸化炭素を試料として無水沃度酸法により測定し,その炭酸値,沃度値を比較し,沃度値はよく既知量に一致するも大體やゝ多目の値を與〓,炭酸値は装置中の炭酸量丈け過剩なるを確む.該法は下記の二方法よりもその精密度,操作簡易の鮎に勝れるも殊に煙草煙を試料とせる場合その反應温度,洗滌方法等の誤リより數倍の過剰値を與ふる場合あるを知り,鹽化パラヂウム重量法,鹽化銅法を補助方法として對照した.鹽化パラヂウム重量法は沃度値或は既知量よりも常にやゝ少目の値を與ふる理由を明かにし,鹽化銅法は一定の値得難く僅かの條件の差異に基く試料の分析方法としては不適當である.
  • 銅及び銀の定量並に濾過坩堝の使用に就て
    吉井 典, 榊原 道明, 萩野 堅, 佐藤 清一
    1940 年 61 巻 9 号 p. 904-906
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    液壯アマルガムを硝子製又は,磁製濾過坩堝に入れて陽極とし,銅又は銀の試料溶液中に置きたる白金網電極を陰極とし,濾過坩堝を白金網電極の上に載せ,濾過層を以て陽極液(稀薄酸溶液)と陰極液(試料液)とを接せしめ,白金電極の棒とアマルガムとを連結して囘路を作らしむ.斯の如き簡單なる装置にて銅及び銀の内部電解分析を行ひ得たり.
  • ZnO-SiO2系螢光體の螢光スペクトルに就て
    上原 康夫, 梅田 梅
    1940 年 61 巻 9 号 p. 907-918
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    先報1)に於て活性體としてMnを含む珪酸亞鉛螢光體の螢光スペクトル,吸収スペクトル,刺戟スペクトル及び光電傳導現象共他に關する理論に就て報告した.本論文に於てはMnの外W, Mo, Pb, U, Sb, Ta, Al, Sn. Bi, Ti, Gr, Zr, Th, Co, Ge. V等を活性體として含むZnO・SiO2螢光體其他純粹なZnO・Sio2螢光體及びSiO2/Mn螢光體等の螢光スペクトルの測定結果に就て報告する.從來珪酸亜鉛螢光體と呼ばれてゐる螢光體はMnを活性體とする螢光體であつて, Mn以外の金屬元素を活性體として含む珪酸亜鉛螢光體の螢光スペクトルに就では全く報告が無い様に思ふ.今囘著者等はW, Mo, Pb, U, Sb, Ta, Al, Sn, Bi, Tiの10種の元素を活性體として含む珪酸亞鉛螢光體の螢光スペクトルのエネルギー分布を精確に測定し,珪酸亞鉛螢光體の螢光スペクトルは活性體元素の種類如何に依つて殆ど變化しないと云ふ興味ある且つ重要な結果を得た.次に之等の實驗結果に對して理論的の考察を行つてみたいと思ふ.
  • 珪酸カドミウム螢光體の螢光スペクトル及び螢光の理論
    上原 康夫
    1940 年 61 巻 9 号 p. 919-928
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    (a) 各種の組成を有する珪酸カドミウム(Mn)螢光體の25°C及び-185°Cに於ける30KV陰極線, 2537Å及び3650Åの紫外線刺戟に依る螢光スぺクトルのエネルギー分布を寫眞分光測光法に依つて精密に測定した.
    (b) 珪酸カドミウム(Mn)螢光體の吸収及び刺戟スペクトルは珪酸亜鉛(Mn)螢光體の場合と同様に解釋せられ得ることを示し,夫に對する具體的な理論的解釋を與へた.
    (c) 珪酸カドミウム(Mn)螢光體の螢光スペクトルは珪酸亞鉛(Mn)螢光體の場合と同様に活性中心に於けるMn原子の次の様な遷移に基くことを確めた.
    4P5/21/26S5/2=5600Å(β0)
    6P7/23/26S5/2=5870Å(β1)
    8P5/26S5/2=6100Å(α)
    6D1/26S5/2=6350Å(β2)
    6D3/26S5/2=6600Å(β3)
    6D5/26S5/2=6800Å(β4) (?)
    (d) 珪酸亜鉛(Mn)及び珪酸カドミウム(Mn)螢光體の各部分螢光帯の位置は螢光體の組成或は刺戟の種類に依つて變化しないけれども,各部螢光帯の強度が變化するため螢光スペクトルの見掛上の位置或はエネルギー分布の變化し得ることを確めた.
  • 基礎的崩壞特性
    小野 宗三郎
    1940 年 61 巻 9 号 p. 929-936
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    馬鈴薯及小麥(主として前者)の生澱粉糊の,超音波に依る崩壞の態様を,主として粘度よりKunitzの式に依つて算出される粒子の比容積φの變化として觀察した.同時に顯微鏡構造の變化も明かにした.崩壞特性の一部は以下の諸點である.
    (i) 崩壞効果(φ減少率)は超音波の周波數の大なる800khzの方が,小なる470khzよりも稍大である.
    (ii) φ減少は,約150°の加熱處理に比適する.
    (iii)15~60°の範圍では,糊の温度に無關係である.
    (iv)元々φの大なる馬鈴薯の方が,元々小なる小麥の場合よりも崩壞効果は大である.
  • 低温に於ける一酸化窒素と酸素との反應(第三報)水銀薄膜上に於ける反應
    平木 洋三郎
    1940 年 61 巻 9 号 p. 937-947
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
    第一報1),第二報2)に於て一酸化窒素と酸素との液態酸素の温度(-183°)に於ける低壓反應は表面反應であり,液態酸素の温度にて硝子壁に凝縮する水銀がこの反應に強い觸媒能を有する事を報告した.著者はこの水銀薄膜の觸媒能に就き更に研究の結果次の事を知つた.
    (1) 豫め一定量の水銀を凝縮せしめた薄膜が強い觸媒能を有するに反し,反應進行中及び反應生成物N2O4の上に凝縮する水銀は殆ど觸媒能がない.
    (2) 凝縮水銀の量と共に觸媒能は増加するが,水銀が硝子面に均一に分散凝縮するとして約100原子層に相當する水銀量が凝縮すると,活性度は一定の値に達し,其れ以上水銀量が増しても活性は増大しない.
    (3) 凝縮しつつある水銀に對して一酸化窒素の吸着は相當起るが,酸素は殆どしない.從つて一酸化窒素が先づ水銀膜に吸着し,氣相から之に衝る駿素との間に反應が起るものと考へられる.
    (4) 水銀膜に先に酸素を接觸せしめ,一酸化窒素を後から加へても,その反慮は此の順序が逆の場合と同樣速に起る.故に1氣壓でStoddart3)が認めた樣に先に入れた酸素が反應を著しく妨害する現象は低壓では認められない.
    (5) 反應速度式として-d[O2]/dt=k[NO][O2]/[N2O4]が測定結果によく適用される.
  • 野津 龍三郎
    1940 年 61 巻 9 号 p. 948-951
    発行日: 1940年
    公開日: 2009/12/22
    ジャーナル フリー
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