ピナコンの接觸還元の反應機構を考察するに必要な資料を得んがために,接觸還元用觸媒及び擔體がピナコンの熱反應に對して如何なる影響を及ぼすかを調べて,次の諸事實を確め得た.
(1) 接觸還元に用ひられる反應温度(250~350°C)附近に於て,ピナコンの熱反應は主として,脱水素-分解によるアセトンの生成と脱水によるピナコリン或は更に2, 3-ヂメチルブタヂエン-(1, 3)の生成との2反應から成つてゐる.
(2) 接觸還元用の各種觸媒は何れも多少ともピナコンの脱水素-分解を促進してアセトンを生成せしめる.
(3) ピナコリン轉位に對する促進作用は,供試物質中では珪藻土が最も著しく,ニッケル,硫化モリブデン,酸化銅-酸化クロム(酸化バリウムなし)等は僅かに同様な促進作用を示すが,之等に對し酸化銅-酸化クロム(+酸化バリウム)のみは該轉位を全く促進しない.
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