環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
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22 巻, 1 号
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  • 天野 明弘
    2009 年 22 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2009/01/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     温室効果ガスの排出を抑制する政策手法として,排出取引制度は京都議定書の採択,発効を契機として国際的にその活用が広まりつつある。わが国の政府も数年前から小規模な自主参加型の制度を試験的に実施しているが,本格的制度についてはまだ検討中である。海外での進展に比べてわが国の取組みが遅れている原因の一つに,取引制度の諸概念に関する理解が不十分な点が考えられる。本稿では,排出取引制度の取引対象の性格キャップ・アンド・トレードの概念,ならびに新たに提案されている国内CDMの考え方についての問題点を指摘し,それらの国際的な一般概念との違いを明らかにする。
  • 熱田 洋一, 新保 達雄, Anugerah WIDIANTO, 大門 裕之, 藤江 幸一
    2009 年 22 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2009/01/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     枯渇性資源に頼らない社会の実現,あるいは,カーボンニュートラルの観点から,バイオマス由来のポリ乳酸が注目を集めており,今後の普及が期待されている。しかし,食料などとの競合や,化石資源由来のポリマーに比べて製造エネルギーが大きいことが課題となっている。そこで,バイオマスの有効利用および消費エネルギー量の削減などを目的として,ポリ乳酸のケミカルリサイクルに関する技術開発が進められてきた。その中の一つに,水熱反応を用いた方法がある。しかし,このような研究が盛んに行われているが,このような技術を用いたリサイクルシステムの有効性に関する検討はほとんど行われていない。 本研究では,使用済みポリ乳酸製品に対する処理方法が異なる三つのシナリオ(埋め立て処分,サーマルリサイクル,水熱反応によるケミカルリサイクル)を設定し,エネルギー使用量および温室効果ガス排出量の推計および比較を行った。その結果,水熱反応によるケミカルリサイクルを行ったシナリオにおけるエネルギー消費量は,ケミカルリサイクルを行わなかったシナリオに比べ,30%以上少ないことなどが示された。これらの結果より,本技術によるケミカルリサイクルシステムの有効性は高いと言える。
  • 山崎 史織, 山岸 晶子
    2009 年 22 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2009/01/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     近年,里山・雑木林は管理されずに放置されているところが多いため,その林床の多くは藪の状態を呈している。市川市北国分にある小塚山公園の雑木林は1977年に植生調査されて以来,またはそれ以前から伐採や下刈りなどの管理がなされていない。この雑木林は1977年にA~Jの10地点で調査されているが,本調査ではB ,E,G,1の4地点の林分に出現する高木およびその林床に生ずる高木の稚樹や潅木等をマッピングし,樹高や胸高直径などの測定を行った。また,林床の地表30cmでの相対照度(%)を測定し,高木稚樹の分布との関係を考察した。その結果林床の相対照度は大半の場所で1%以下であったが,そのような光環境下で1977年当時にはほとんど出現していなかった常緑の低木・潅木や高木の照葉樹の稚樹が多く出現した。特に種子の供給源となる母樹の存在もあってシラカシ(Quercus myrsinaefolia)の稚樹が最も多く,次にシロダモ(Neolitsea sericea),タブノキ(Machillus thunbeygii)が多く見られた。シラカシとタブノキの稚樹では明るさに対する出現ピークに有意な差が認められ,タブノキはシラカシよりもやや明るいところに多く出現した。この雑木林はこのまま放置されれば,落葉広葉樹の雑木林からシラカシを優占種とする照葉樹林に遷移することが予想された。。
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