枯渇性資源に頼らない社会の実現,あるいは,カーボンニュートラルの観点から,バイオマス由来のポリ乳酸が注目を集めており,今後の普及が期待されている。しかし,食料などとの競合や,化石資源由来のポリマーに比べて製造エネルギーが大きいことが課題となっている。そこで,バイオマスの有効利用および消費エネルギー量の削減などを目的として,ポリ乳酸のケミカルリサイクルに関する技術開発が進められてきた。その中の一つに,水熱反応を用いた方法がある。しかし,このような研究が盛んに行われているが,このような技術を用いたリサイクルシステムの有効性に関する検討はほとんど行われていない。 本研究では,使用済みポリ乳酸製品に対する処理方法が異なる三つのシナリオ(埋め立て処分,サーマルリサイクル,水熱反応によるケミカルリサイクル)を設定し,エネルギー使用量および温室効果ガス排出量の推計および比較を行った。その結果,水熱反応によるケミカルリサイクルを行ったシナリオにおけるエネルギー消費量は,ケミカルリサイクルを行わなかったシナリオに比べ,30%以上少ないことなどが示された。これらの結果より,本技術によるケミカルリサイクルシステムの有効性は高いと言える。
抄録全体を表示