環境科学会誌
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16 巻, 6 号
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  • 肥田野 登, 加藤 尊秋, 風早 隆弘
    2003 年 16 巻 6 号 p. 435-452
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本研究はContingent valuation methodにおける調査票作成技法の改善を目指し,プロトコル分析法を導入するための予備的考察を行った。そして,地球温暖化防止のための二酸化炭素排出量削減策を例に2つの新しい調査票設計概念の評価を行った。第一にハイパーテキストのリンクを用いた環境財や環境改善策についての情報提供である。第二にリンクを用いたシンボリックバイアスの軽減策である。まず予備実験においていくつかの発話採集方法を比較することにより,多くの発話が得られる方法を選定した。つついて大学生・大学院生の被験者21名による本実験を行い,ハイパーテキストによる情報提供の効果を調べた。この結果,内容を絞って情報を提示するリンクの方が,被験者に自由に情報を探させるリンク集型のリンクよりも使われやすいことが示唆された。また,リンクを設置すると,第三者の意見を参照する度合いが高まり,さらに調査参加への満足の度合いも高まることが示唆された。ただし,Willingness to payの回答時の発話に絞ると,第三者の状況への言及度合い,また,fair share的回答の発生状況には,リンクの有無による差がみられなかった。次に,シンボリックバイアスの軽減に関して,環境改善策を複数提示する方策と賛否両方の情報を提示する方策を試した結果,いずれもともに行った場合に効果がみられた。ただし,一部の被験者については,改善策の複数提示の方が効果があることが示唆された。
  • 中島 誠, 武 暁峰, 前川 統一郎
    2003 年 16 巻 6 号 p. 453-464
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     わが国において土壌・地下水汚染対策の必要性の認識が急速に高まりつつある中,経済的な理由から浄化対策をあきらめる事例が増えることを懸念し,RBCA(リスクに基づく修復措置)を用いた環境リスク評価とその評価結果に基づく土壌汚染対策の考え方について,わが国における土壌汚染対策の考え方への適用性を検討した。 想定したサイトは,トリクロロエチレン(TCE)による土壌汚染サイトであり,汚染源での土壌溶出量,汚染源直下での地下水汚染濃度,現存するリスク受容体の飲用井戸における地下水汚染濃度,および潜在的なリスク受容体が飲用井戸を設置した場合の地下水汚染濃度について,発癌性物質の目標リスクを達成するため,あるいは地下水基準を達成するために必要な土壌汚染対策の規模および残存する環境リスクを比較検討した。 RBCAによる環境リスク評価で求められる現存するリスクまたは潜在的なリスクの低減を土壌汚染対策の目標とする考え方は合理的な土壌汚染対策を可能にするが,環境リスクを発生させないレベルの汚染土壌は残存したまま管理されていれば良いということについての社会的合意がなされていくことが必要であると考えられる。
  • 田野崎 隆雄, 田中 勝, ピエール モスコビッツ, 築谷 淳志, 中村 和史
    2003 年 16 巻 6 号 p. 465-473
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     現在欧州統合の一環として行われているEU各国の環境法規のハーモニゼーションは,CEN-ISOといったNGOの定める規格類をその試験方法として採択し,標準化を図ってきた。欧州においては廃棄物のキャラクタリゼーションが中心になり,特に暴露シナリオによる環境影響評価のハーモニゼーションを進めている。ここでは,汚染土壌及び廃棄物の評価方法の状況を紹介し,その背後にある環境影響評価の考え方を指摘した。
  • 庄司 良, 中山 秀謹, Eguyen Phuong Anh Thi, 毛利 紫乃, 山田 正人, 工藤 宏紀, 酒井 康行, 迫田 章義
    2003 年 16 巻 6 号 p. 475-484
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     現在,多くの廃棄物が最終的に埋立て処分されている。そのため,廃棄物最終処分場における多種多様な化学物質の適切なリスク管理が求められている。環境庁告示法による溶出試験や化学分析は重金属類の溶出・分析を主たる対象としており,有機物の評価が不十分である。また,一般に浸出水や溶出試料中の有機物を個々に定量することは測定対象とする化学物質が定まっていない場合困難であることから,有機物溶出に着目した溶出試験に加え,バイオアッセイを用いた包括的な有害性評価手法の確立が求められる。本研究では廃棄物試料からの有機物溶出挙動を明らかにし,有害性試験によって有機物による有害性を評価することを目的とし,まず有機物の溶出に着目し,環境庁告示法46号法並びに種々の条件をふった溶出試験を行い有機物の溶出挙動を明らかにした。その結果,有機物の溶出挙動は重金属の溶出挙動とは大きく異なることが示された。また,得られた溶出試料について有害性評価をバイオアッセイによって行い,廃棄物溶出試験試料のバイオアッセイにおける問題点の検討を併せて行った。また,有害性試験においては,バイオアッセイによる有害性試験に際して浸透圧の影響の考慮が必要不可欠であることが示された。
  • 関口 幹周, 小野 芳朗
    2003 年 16 巻 6 号 p. 485-495
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     水田土壌には,様々な化学物質が存在している。本研究は,多環芳香族炭化水素類と農薬に焦点をあてて行ったものである。まず,水田土壌中に存在する化学物質の含有量の評価を行った。その結果,PAHsが年間を通じて残留していると確認された。一方,農薬については,対象とした14物質のうち2物質の検出に留まり,残留は確認されなかった。また,含有量試験で存在が確認されたPAHsは,汚染された土壌を摂食した場合のヒトの生体内条件下での溶出挙動を評価するために,in vitro溶出試験を行った。その結果,小腸条件下においてPAHsの土壌からの溶出が確認された。さらに,土壌抽出試料をヒト由来培養細胞を用いて曝露試験を行い土壌中含有物質の薬物酵素代謝反応を用いたEROD活性を評価した。この試験より土壌中からEROD活性誘導因子の存在が確認された。
  • 貴田 晶子, 大迫 政浩, 酒井 伸一
    2003 年 16 巻 6 号 p. 497-516
    発行日: 2003/11/28
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     増加しつつある溶融処理から排出される溶融スラグは建設資材の用途に利用されうる。路盤材や埋め戻し材として利用することを想定し,雨水の浸透・接触を通じて溶出する量をカラム試験により求め,地下水影響量を推定した。また溶融スラグの化学特性として,土壌汚染含有基準に対応する塩酸抽出法による“有効”含有量試験を適用した。溶融スラグ及び電炉スラグのカラム試験では,Na等初期に溶出する元素,Ca等拡散溶出も含む元素,Si等アルカリ性のpHで溶出量が増加する元素,Baのように濃度上昇が起こる元素があり,多くの因子が影響したパターンを示したが,全体として表面に付着した成分及び易溶性成分の割合が多かった。pH4の酸性雨を模擬したカラム試験の溶出量から推定した地下水への影響については,Pb及びAs等の有害物質では地下水環境基準を超えることはないと判断され,易溶性のNaやCaでは最大で水道水基準値の65%の影響と推定された。電炉スラグではCaの溶出量が多く,厳しい状況下では地下水への影響が水道水・基準を上回る推定結果となった。一般にバッチ試験の溶出量はカラム試験による溶出量と同等以上であり,より安全側の評価を与える結果であった。溶融スラグの酸抽出による“有効”含有量の全含有量に対する比率は骨格元素であるSiが10%~79%であり,Ca,Mg,Na,Cu以外の元素はSiと類似した比率であった。Si溶解の起こりにくいスラグの物理的・化学的品質を求める方向が直接摂食を考慮しなければならない利用場においては必要かつ有効と考えられる。
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