環境科学会誌
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36 巻, 5 号
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一般論文
  • 宮本 拓郎, 矢島 猶雅, 有村 俊秀
    2023 年 36 巻 5 号 p. 160-172
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/09/23
    ジャーナル フリー

    本稿は,市区町村が実施するグリーン調達(環境配慮製品の優先購入)におけるグリーン調達方針の有効性と限界について,環境省が実施する市区町村のグリーン調達に関する調査データを利用して分析したものである。グリーン調達方針とは,各市区町村がグリーン調達に取り組むことを明確にするものであるが,対外的に宣言するだけである場合と,具体的な対象品目や基準を明確にする場合がある。方針の有無及び様々なグリーン調達の阻害要因のクロス集計を実施した結果,グリーン調達方針は,人的資源やマニュアルの不足等によって生じる問題を緩和する可能性が示唆された。加えて,回帰分析の結果,グリーン調達実施の宣言とグリーン調達方針の策定は,自治体職員がグリーン調達の効果を実感する確率を高めることがわかった。しかし,グリーン調達の効果を定量的に測定する確率に対し,これらは,統計的に有意な影響が検出されなかった。また,グリーン調達の効果を実際に実感している自治体数は非常に少なく,効果の定量的な計測は難しい傾向にある。グリーン調達の効果の計測の難しさは,グリーン調達の効果の理解の難しさという課題を生じさせている可能性がある。我々の分析は,グリーン調達方針がこれらの問題を解消することは難しいことを示唆している。

  • 金森 有子, 池田 晃一, 有賀 敏典, 松橋 啓介, 森田 舞, 増井 利彦
    2023 年 36 巻 5 号 p. 173-184
    発行日: 2023/09/30
    公開日: 2023/09/23
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルスの蔓延により,急速に在宅勤務が浸透した。本研究では,特に在宅勤務が導入された都市部を対象に在宅勤務の実態に関するオンライン調査を実施した。そしてその結果を元に,現在の在宅勤務がエネルギー消費量やCO2排出量に及ぼす影響を定量的に評価した。その結果,現在の都市部における在宅勤務者は,(a)もともと公共交通を利用して通勤していたことにより,在宅勤務になっても,通勤に伴うエネルギー消費削減効果がほとんどないこと,(b)在宅勤務が浸透し,出勤人数は減っているにもかかわらず,オフィスの面積を削減する等の対策が実施されていないケースが多く,オフィスにおけるエネルギー削減効果があまり見込めない,(c)全体としては,むしろエネルギー消費量が増加している可能性すらあることが示唆された。都市部での在宅勤務によりエネルギー消費量の削減につなげるためには,在宅勤務のレベルに応じてオフィスの利用面積を適切に削減することや,在宅勤務中のエネルギー消費削減のために工夫することが必要である。さらに,余暇時間に行う活動の種類によってはエネルギー消費量の増加につながる点に,注意が必要であることがわかった。

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