環境科学会誌
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37 巻, 1 号
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一般論文
  • 牧 誠也, 大西 悟, 藤井 実, 河井 紘輔, 後藤 尚弘
    2024 年 37 巻 1 号 p. 1-14
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

    廃棄物分野においてエネルギー回収・利用やその高度化,リサイクル率の向上などが地球温暖化対策を含む複数の問題の解決策として有力視され,計画段階から問題に対応するために廃棄物分野における総合的な評価システムを構築することの必要性が強まっている。一方で,エネルギー回収やリサイクル率の向上を模索するには処理を行う廃棄物の組成別の排出実態の把握が必要であるが,発生地点と廃棄物組成を統計分析で多数の実績データをもとに把握しようと試みた研究はほとんどない。本研究では,家計消費推計値の1 kmメッシュデータと全国の焼却処理場で公開されている環整95号基準における6つの組成別廃棄物処理量のデータに着目し,廃棄物輸送モデルによってデータ結合を行うことで家計消費と組成別の廃棄物発生との関係を検討した。作成された廃棄物組成・家計消費統合データについて家計消費の代替性を考慮し,説明変数の係数をRidge回帰分析によって求めることで,家計消費1単位からの組成別廃棄物発生量の原単位を作成した。作成した原単位をもとに,組成別の廃棄物発生量の地理的な分布を推計した。その結果,全量である場合,人口の多い都市圏近隣で廃棄物発生量は多くなるが,一人当たりとした場合には北海道や石川県,山口県などの地方部でも廃棄物発生量が多くなる地域が確認された。また,組成別の廃棄物発生量では組成によって地域差が大きくなるものと地域差が小さいものがあった。本研究では実績データによる統計分析に基づく家計消費1単位における原単位を推定する方法を開発することができた。これにより,複数の年代について同様のデータを収集することによって年代別の原単位を推計することが可能となり,時系列的な原単位の変化を推計できるモデルが構築できた。

2022年シンポジウム
  • 杉本 卓也, 手嶋 進
    2024 年 37 巻 1 号 p. 15-27
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

    大学の社会的責任の一つとして,教育研究機関として学生がその活動を通じて持続可能な社会の構築に貢献できるようなマインドを養い,必要な知識やスキルを修得できる機会を作る責任がある。課題解決型教育やキャリア教育等におけるPBL(project-based learning)は,そのようなサステナビリティ人材を育成する方法の一つである。

    千葉商科大学では,自然エネルギー100%大学の取り組みの一つとして,学生団体SONEが2018年3月に設立され,学生や教職員向けに省エネのための意識啓発活動を推進している。2022年度は教室の断熱化プロジェクトが立ち上がり,断熱化の施工を施工会社に任せるのではなく,「自分事化する」ためのワークショップ形式として企画,実施された。この教室断熱化プロジェクトでは,施設管理としての学校法人への説得と協力の取り付けだけでなく,設計や施工といった外部協力者との連携や調整も学生が担当した。

    本研究では,省エネの意識啓発を担う学生団体SONEの学生を対象として,仕事の遂行に関わる能力とサステナビリティの考え方を身につけたかについて本人たちがどのように自己評価しているか,インタビュー調査を行った。

    調査の結果,仕事の遂行に関わる能力については,活動への関わりを通じてコミュニケーション能力やプロジェクト管理について,学生自身が成長を実感していることが把握された。他方で,活動することにより自分自身の能力が不十分だと認識する機会となり,自己評価を活動前よりも厳しくし査定する学生も見られた。サステナビリティの考え方については,本研究で扱ったサステナビリティ・マインドセットが抽象的であったものの,活動とサステナビリティの考え方や行動様式との間に部分的ではあるが共通点や共感を示す学生が把握された。

  • 竹内 彩乃
    2024 年 37 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/01/31
    ジャーナル フリー

    2020年初旬より始まった新型コロナウイルス感染症の拡大によって,部活動,サークル活動等の課外活動や教員との関わりを持つ準正課活動に類する学内の活動など,大学における活動が制限された。これによりキャリア形成に関わる教育が不足することが懸念されている。一方で,オンライン環境を活かすことで教育の可能性が広がっている。本稿では,学内や地域において環境活動に取り組む「東邦Ecolution」所属学生が,コロナ禍での環境活動として実践した,オンライン環境を活かしたコラムの共同編集活動を事例に,この活動がもたらした環境人材を育成する上での教育効果を考察することを目的とする。

    学生の取り組みを整理した結果,環境問題に対する知識の習得に加えて,調整力,発信力や文章力,校正力など,環境活動を進めていく上で求められる汎用的な教育効果が得られることが分かった。

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