大都市内の中小河川は,汚濁の進行とともに暗渠化が進められているものも多いが,一方,治水と親水とが調和した環境づくりも求められている。このためには水辺へのアクセスのよい親水性の高い護岸整備を行うことが必要となるが,都市部では一般に土地利用制約が強いため土地利用変更を伴う護岸整備は困難である。中小河川の場合は水害といっても床下浸水,床上浸水程度で人命に影響のある場合は少なく,少々の溢水は許せると住民が判断するのであれば,既存の河幅の中で親水性の高い護岸整備を行うことも可能であろう。また,河川の水質そのものも良くなければ親水性が高くはならない。このため行政による下水処理システムの整備と共に家庭での雑排水対策も必要となる。この意味でも,流域住民の積極的な協力が期待される。 そこで本研究では,大都市内の中小河川の一例として川崎市の二ヶ領用水,平瀬川流域の住民を対象に,住民による水害対策,水質保全策が行われ得るかを検討した。その結果,以下が明らかになった。(1)多くの流域住民が暗渠化するよりも水辺再生することを望んでいる。(2)水害の危険性があるとする住民は,水害対策をとる傾向がある。(3)親しめる川を望み,川が水質汚濁していると考える住民は水質保全策をとる傾向がある。(4)調査対象地区でみられた程度の水害であれば,治水と親水が調和した河川環境計画について住民の合意を形成していく上で,水害の危険が大きな障害になることはない。以上から,住民が水害危険度や,水質の状態を明確に認識した場合,水害対策や水質保全策などが住民によって積極的に行われることが期待される。
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