環境科学会誌
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28 巻, 5 号
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一般論文
  • Khanh Le Van VU, Uyen Phuoc Nhat TRAN, Quan Dinh NGUYEN, Phung Thi Kim ...
    2015 年28 巻5 号 p. 335-342
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,稲わらからのバイオエタノール生産プロセスにおける蒸留残渣を同時糖化発酵の窒素源として自己再利用する可能性を検討した。バイオエタノール製造のパイロットプラントで得られた蒸留残渣より,糖やタンパクなどの水溶性成分を含む上清の液体層(DR-L)と未分解炭水化物やリグリンなどを含むスラリー層(DR-S)に分画し,さらにDR-Sを乾燥して粉末にしたDR-Pを得た。繊維,窒素,アミノ酸含量などを考慮した上で,粉末コーンスティープリカー(CSL)と比較しながら,各蒸留残渣サンプルの栄養源としての効果を同時糖化発酵で評価した。
    DR-Pの窒素含量はCSLの半分以下であったが,酵母の増殖に利用可能なアミノ酸含量はDR-Pが2.24%でCSLの3.64%と大きな差はなかった。また,DR-LとDR-Sを仕込水とCSLの代りに用いた同時糖化発酵では3.52%の最終エタノールが得られ,これはCSLを用いた場合の3.28%と比較して遜色のない値であった。これらの結果から蒸留残渣を自己再利用することで,同時糖化発酵における栄養源を代替することが可能であるとともに,水の循環利用にも貢献できることが示された。
  • -テキストマイニングによる解析-
    小島 英子, 阿部 直也, 大迫 政浩
    2015 年28 巻5 号 p. 343-358
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    住民のごみ問題への関心は個人のライフステージの変遷とともに変化するという認識のもと,その関心が何から影響を受け,どのように変化しているのかを明らかにするために,川崎市民を対象にアンケート調査を実施した(回答者数:1,308)。未成年期から現在に至るごみへの関心の変化とその理由を10年刻みの自由記述で尋ね,テキストマイニングと多重コレスポンデンス分析によって解析した。
    ごみへの関心は年齢が高いほど高く,一人暮らし,結婚,出産,子育て,退職などのライフステージに特徴的なライフイベントの影響を受けて,高まっていた。また,ライフステージの変遷とともに,家庭内でのごみ管理の役割や,時間的な余裕の有無,地域との繋がり,家庭から出るごみ量などが変化し,ごみへの関心に変化を与えていた。他方,ごみ問題の顕在化により世間の意識が喚起されたり,分別制度が始まったりといった,個人のライフステージとは直接関係のない,社会状況や廃棄物管理制度の違いが,個人の関心の高まりに影響している様子も窺えた。また,現在50歳代あたりを境として性差による役割分担の違いが,ごみへの関心に影響している可能性も示された。以上から,ライフイベントなどのライフステージ要因と非ライフステージ要因である社会・制度的背景が,相互に関連して住民のごみへの関心に対して影響を及ぼしていることが示唆された。
    自治体は,一人暮らしや結婚等の住民がごみとの関わりを変えるライフイベントを捉えて情報提供を行うなど,ライフステージに応じた施策を実施することで,効果的に意識を喚起し,分別の遵守や3R行動を促すことができると考えられる。
  • 浦野 真弥, 浦野 紘平
    2015 年28 巻5 号 p. 359-368
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    PCB廃棄物の全体像を俯瞰し,適切な処理計画の策定や処理に伴う安全性評価等を行うための基礎データを得ることを目的として,関連情報の収集と関係企業や専門家へのヒヤリング調査を行い,PCB濃度が5,000mg/kg以下の低濃度PCB廃棄物の2013年3月末時点での台数または重量,および平均PCB濃度とPCB量を推算した。低濃度PCB廃棄物は,全微量PCB汚染電気機器,そのうちの7t超の機器や50mg/kg以下の機器とその抜油後機器,OFケーブル,廃活性炭・廃プラスチック等・廃液に3分類した中間貯蔵・環境安全事業(株)(JESCO)からの二次廃棄物,ウエス・感圧複写紙・汚泥・その他汚染物に4分類した保管届出廃棄物,および大きな道路橋からの塗膜関連廃棄物に分けて推算した。低濃度PCB廃棄物に含まれるPCB量は総量で約41.4t,JESCOでの処理対象電気機器のPCB量の約0.20%相当と推算された。また,処理が進みつつある微量PCB汚染電気機器とJESCO二次廃棄物中のPCBは41.4tのうちの約17.7%と約8.9%,合計約26.6%であり,保管届出廃棄物に約34.6%,塗膜関連廃棄物に約38.7%含まれていると推算され,これらの処理を進める必要があることを明らかにした。
  • 浦野 紘平, 浦野 真弥
    2015 年28 巻5 号 p. 369-382
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    PCB含有絶縁油と平衡(飽和)に達した空気中PCB濃度および機械換気室内と通風換気室や野外での希釈の計算式を示した。また,各種の低濃度PCB廃棄物の移し替え時等の飽和濃度ガス放出由来,仮に開放保管した場合の揮発由来,および中・大型微量PCB汚染電気機器切断時の揮発由来の作業環境空気中PCB濃度と皮膚接触時のPCB摂取量を推算した。作業環境空気中PCB濃度は,機械換気室内で切断するか,高濃度のJESCO二次廃棄物や保管届出ウエスを開放保管するごく希な場合以外は,作業環境管理濃度より1~6桁低くなること,皮膚からの摂取も少ないことを示した。また,施設近隣住民の年平均吸入曝露濃度と加熱・焼却排ガスの最大着地点住民の年平均吸入曝露濃度は,暫定大気環境目標濃度の1/110万~1/430と1/10億~1/14万になること,絶縁油漏洩事故時の労働者の吸入曝露濃度は作業環境管理濃度を超えず,水への溶解濃度は水質環境基準の約1/10,住民の汚染土壌からのPCB摂取量はADIの約1/450となること等を示した。また,PCBの安全性が確保できれば,ダイオキシン類換算でも基準値等を満たせることを示した。
研究資料
  • 浦野 真弥, 浦野 紘平
    2015 年28 巻5 号 p. 383-391
    発行日: 2015/09/30
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    PCB含有安定器の処理が進んでいない原因等を検討するため,まず,届出数の経年変化情報を収集し,都道府県別の人口と届出数との関係を指数関数で近似し,7道県が周辺の他県に比べて届出数が推算値より特に少なく,九州・沖縄地区は全体に届出数が推算値より少ないこと等を明らかにした。その上で,中間貯蔵・環境安全事業(株)が示している安定器処理計画と処理費用を解析し,1個あたりの処理費が8.4万円程度となること,都道府県ごとの処理経費を推算し,全数処理には5,000億円以上の経費を要すること,さらに,東京都内の安定器保管数情報から,数億円から数十億円の処理経費を要する保管者が多いことなどを示した。また,(独)環境再生保全機構の公開情報等から,中小企業補助制度の継続が困難になる可能性が高いことを明らかにした。これらから,社会負担が極めて大きいために期限内の処理が難しくなり,長期保管による漏洩・紛失や不適正処理の増加が懸念されることを明らかにした。さらに,国が安全性を確保できる安定器の解体方法を示して型式によらない解体の認定制度を導入するか,低濃度PCB廃棄物の焼却無害化処理施設において,認定(許可)されたPCB処理量の範囲内での安定器の処理を認めることで,処理経費を1/20~1/3程度まで低減可能であることを示した。
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