環境科学会誌
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10 巻, 4 号
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  • 鷹野 誠, 加賀 昭和, 李 虎, 山口 克人, 鶴田 敏郎, 村津 美代子
    1997 年 10 巻 4 号 p. 287-299
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
     わが国では現在,酸性降下物の土壌への将来影響が懸念されており,その定量的な予測手段が必要とされている。本報では林地を対象として,大気から土壌に付加された酸性降下物が,土壌中での陽イオン交換反応と化学的風化のみによって中和されるという仮定に基づいて,土壌の化学的特性の経年変化を算出する数理モデルを構築した。そしてそのモデルを用いて,土壌の化学的特性の過去からの履歴を計算し,それが現在の土壌特性と一致するという条件から,現在の土壌特性の分析値に基づいて,土壌の化学的風化速度を推定する手法を提案した。 提案した手法を大阪大学内の竹林に適用してモデルパラメータに対する感度解析を行った結果,本報で提案した手法は,一部パラメータを除いてその推定誤差により将来予測結果が大きく変化することはなく,化学的風化速度の簡易推定法として有効であると考えられた。 また,適用例では,本報で対象としたフィールドにおいては陽イオン交換反応よりも,化学的風化による酸中和作用の方が大きいという推定結果が得られた。 このことから,わが国において今後土壌酸性化の将来予測を行う際に,化学的風化速度の推定が重要な要素となることが示唆された。
  • 川島 康子
    1997 年 10 巻 4 号 p. 301-312
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     気候変動に関する一連の国際交渉過程は,気候変動の対策について各国の交渉担当者がさまざまな提案を行いながら,内に描いている将来像に近づけていく過程であると考えることができる。そこで,交渉担当者の持つ将来像が明らかとなるような調査が国際的合意達成に有用となるが,今までにこのような調査を行った研究はない。本研究では,気候変動問題の今後の交渉の行方に関する各国の認識を調査し,回答者のさまざまな将来像を最大限に取り入れた統合シナリオを作成する。また,その結果得られた交渉シナリオにおいて,合意達成に障害となっている点を指摘し,交渉を進展させるために重要となる点を示す。 このような調査には,交渉担当者の認識を比較可能な形で引き出し,統合する手法が必要となる。そこで,本研究では,アンケート調査とインタビュー調査を段階的に実施し,多人数の将来像を集約,最終的には政治経済的交渉シナリオを決定する「3ステップ・シナリオ設計手法」という新たな手法を開発した。 この調査の結果,交渉参加者の交渉シナリオは,大きく2種類の全く異なったシナリオに分類されることが分かった。「先進国・途上国協調型シナリオ」は,共同実施等の手法を活用して既存の技術の普及によって主に途上国の排出量の伸びを抑制するシナリオである。ここでは,途上国の先進国に対する不信感や不公平感が,CO2対策に国際的な合意が達成されない原因となる。したがって,先進国間だけでまず共同実施などを含めた対策を実行することが重要である。 一方,「先進国の技術開発主導型シナリオ」は,CO2対策が長期的には技術開発の契機となる等経済的にプラスと認識され,先進国で自主的に対策が実施されるシナリオである。ここでは,新たな経済的便益となる技術開発が,先進国だけでさらに進められてしまうことが問題となるため,その技術を途上国側に移転する何らかの制度が,国際協調の達成に必要であるという結果になった。
  • 沢田 達郎, 中村 嘉利, 折笠 仁志, 大永 誠, 井上 英一
    1997 年 10 巻 4 号 p. 313-321
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,稲わら,廃材,樹皮,その他等のバイオマスを水蒸気爆砕のような物理化学的な前処理により構成成分に分離し,得られた成分を有用物質に変換することによって廃棄や燃焼処理とは違った汚染物を発生しない利用システムを開発することである。水蒸気爆砕,酵素糖化,アルコール発酵,メタン発酵と樹脂化から成る効果的なプロセスは稲わらの構成成分を無駄なく有用物質に変換した。稲わらが水蒸気圧力や蒸煮時間などの種々の爆砕条件下で処理され,爆砕稲わらは水可溶性物質,セルロースと低分子物質の混合物,メタノール可溶性リグニン,Klasonリグニンに分離された。爆砕稲わらの特性に及ぼす水蒸気爆砕の効果が粒径分布,有機酸生成,抽出成分量について実験的に研究された。水蒸気爆砕は稲わら中のリグニンを分離・低分子化し,酵素糖化とアルコール発酵に対するホロセルロースの親和性を増加させた。水蒸気圧力3.53MPa,蒸煮時間2minで処理された稲わら中のホロセルロースは糖化・発酵操作により高効率でエタノールやメタンなどのエネルギー資源に変換され,メタノール可溶性リグニンはエポキシ反応によって熱硬化性に優れた樹脂に変換された。
  • 佐藤 一男, 高橋 章
    1997 年 10 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 1997/11/29
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    A diaphragm-glass electrode method was applied to measure CO2 concentration in soils in a Japanese cedar forest at Isehara City. A continuous measurement throughout a year at a fixed depth of 80 cm showed that the seasonal variation of CO2 concentration was generally attributable to that of ambient air temperature inside the forest. In summer with water famine, however, CO2 concentration decreased dramatically from 4.75% in July to 1.84% in September. This was probably caused by the expansion of air pathways to the atmosphere as well as the decline of biological activity. Spatial variation of CO2 concentration was relatively large. Even at a constant depth (50 cm), CO2 concentration ranged from 0.71 to 2.53% at 5 points allocated at 2-4 m intervals. CO2 concentration was higher in deeper soil horizons throughout a year. The primary advantages of the method are (1) it enables an automatically continuous measurement of CO2 concentration in soil air, and (2) it consumes a quite small amount of CO2 and hence it enables a pinpoint CO2 measurement. The disadvantage of the method is related to a bias from actual CO2 concentration . This may be caused by (1) the turbulence of soil horizons in the observation hole due to a periodical calibration of the electrode, and (2) the difference between air temperature on the ground, where calibration is carried out, and that in the soil of interest. The percentage of the bias in the latter case was estimated to be lower than roughly 15% .
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