環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
4 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 村山 武彦
    1991 年 4 巻 2 号 p. 79-101
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2011/10/21
    ジャーナル フリー
     本研究はリスクアセスメントの枠組を提示したうえで居住環境におけるアスベスト汚染により発生しうるリスクを見積り,その評価を行った。まず,本研究の分析枠組を示したうえでアスベスト汚染のリスクに関する知見を整理し,居住環境においても危険性が存在することが示された。また日米の社会的対応の比較分析を行い,米国の対応が我が国より早く進められた要因を示し,我が国においてもリスクの見積りおよび評価を行う必要性を明らかにした。次にアスベスト汚染の発生経路を同定し,さらに立地特性別の曝露レベル,曝露人口を推定するとともに,将来濃度の予測を行った。その結果,現状の汚染レベルがこのまま推移した場合,汚染源が特定されない一般環境においては2.5×10-4程度の生涯死亡率が予測されることが示された。 このリスク規模を他のリスクと比較したところ,リスク分布の50%点で鉄道,自転車事故等と同レベルであり,対策の必要性が認められる。また,吹付けアスベスト汚染を対象にリスクと削減コストとの比較分析を行った結果,リスク分布の95%点では補正割引率で2%程度までコスト対リスク比が1以下となることが示された。さらに,吹付けアスベスト汚染と歩行者の自動車交通事故を比較した場合,年間死亡率はアスベスト汚染対策の方が1000分の1程度低いのに対し,コスト当りのリスク削減効果では同じオーダーとなることが明らかにされた。
  • 須賀 伸介, 大井 紘, 原沢 英夫
    1991 年 4 巻 2 号 p. 103-114
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     近年,水辺の利用や整備等水辺空間への関心が高まりつつあるが,一方で水辺の環境保全も重要視されるべき問題である。これらは,水辺周辺住民の水辺意識をきちんと把握したうえで議論されるべき問題である。 本論文では,水辺として霞ヶ浦を取り上げ,自由連想法による意識調査を通して霞ヶ浦周辺住民の水辺意識を解析する。自由連想調査では,回策者に対して「水辺」ということに対して思うことを自由に記述することを求める。さらに,「霞ヶ浦」について同様の回答を求める。調査は霞ヶ浦近辺の4つの地域で行われた。調査結果のデータ解析を行うために,自由記述回答に現れる単語に着目し,まず単語の記述頻度に関する考察を行い,次に記述頻度の高い単語の集合のクラスター分析を行う。クラスター分析では共通した回答者によって数多く記述された単語同士が関連性が高くなるような類似度を定義する。そして各クラスターの解釈を通して住民意識を考察する。 単語の頻度を分析した結果,「水辺」の回答では水辺に対する良いイメージの語の頻度が高かったのに対して,「霞ヶ浦」の回答では水質汚染に関連する悪いイメージの語,霞ヶ浦の漁業に関連する語の頻度が高かった。「水辺」の回答に対するクラスター分析の結果,水辺に対する直接的,直観的な連想に基づく意識,水辺での遊びに関連する意識,情緒的な連想に基づく意識等を読み取ることが出来た。また,住民が持っていると考えられる理想的な水辺のイメージが得られた。「霞ヶ浦」の回答に対する結果では,水質汚染,魚や漁業等の霞ヶ浦固有のことがらに関連する連想語がいくつかのクラスターを形成した。一般的な水辺の連想に際しては身近な水辺に影響を受ける面がみられ,一方,具体的な霞ヶ浦に対する大部分の連想はその固有性に影響を受けていると考えられる。
  • 佐藤 一男, 大岸 弘
    1991 年 4 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     土壌の酸中和能(ANC)の簡易測定法を用いて,褐色森林土,残積性未熟土,黒ボク土が分布する3地点において地表から深さ1mまでのANCの断面垂直分布を測定した。褐色森林土ではANCは最表層0~3cmで19.6meq/100gと最も高く,地表から深さ約10cmまでの間に約5meq/100gまで急激に減少し,それ以深では2~5meq/100gのほぼ一定値を示した。残積性未熟土のANCも類似の垂直分布を示したが,その値は最表層でも4.2meq/100gと低く,褐色森林土に比べて中和能が小さかった。しかし10cm以深では両者にほとんど差は見られなかった。これら2土壌のANCの垂直分布パターンは土壌の抽出腐植量の分布パターンによく一致したことから,表層でのANCの大部分は腐植に保持された交換性塩基による寄与と判断された。一方,黒ボク土のANCは地表から深さ約10cmにかけて一度減少し,それ以深において徐々に増大する垂直分布を示した。この分布パターンは深さ約10cmまでは抽出腐植量の分布パターンに一致し,それ以深では非晶質鉱物に由来するSi量の分布パターンに一致したことから,表層では腐植中の交換性塩基,下層ではアロフェンなどの非晶質鉱物によるSO42-吸着がANCの主体と推察された。
  • 中森 義輝, 森田 恒幸, 甲斐沼 美紀子, 内藤 正明
    1991 年 4 巻 2 号 p. 123-137
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
     東京湾岸の開発による環境影響予測モデルと,統計解析とファジィ理論を応用したモデリング手法を提案する。各行政区に少しずつ異なったルールベース型モデルを持たせ,メンバーシップ関数を介して,全体としては滑らかな非線形モデルを構成する。操作変数は東京湾岸地域における人口とオフィス増加率,および各行政区における土地利用の割合である。対話型モデリング支援システムの導入により,信頼性のそれほど高くないデータと不確かな知識によるモデリング作業を,視覚的な直感に訴えながら進行する。コンピュータとの対話を通して,地域的特性を考慮したルール群と,過去に存在しなかった状態や実行されたことのない政策の結果を予測するための外挿用ルールを構築する。本稿の主題は統計解析とファジィ理論を用いた時空間的ダイナミクスの表現法とその対話的利用法である。
  • ―数理モデルによる検討―
    川島 博之, 川西 琢也, 鈴木 基之
    1991 年 4 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    The regional variation of the nutrient removal efficiency of a small oxidation pond in Japan is investigated by using a numerical model. The numerical model can calcu late seasonal variation of the nutrient removal efficiency. The increase of the amount of sediment is simulated and the effect of phosphorus released from sediment on algal growth is investigated. The simulated results suggest that the hydraulic residence time of about 10 days seems to be enough for the dissolved nutrient removal in Okinawa However, that of about 20 days is necessary in Tokyo and more than 40 days is necessary in Hokkaido area.
feedback
Top